お仕立て グローブ 終章
「やっとできた…」
深夜を回った頃、お針子部屋で私はグローブ二つを前にぐでって机に突っ伏した。
なんだか色々イメージが纏まらなくて、苦労した…上に、なんだか合ってるのかわからない!
「イズミさんはイメージしやすかったんだけどなあ」
イズミさん用のグローブはロンググローブ。
金髪に、肌をほとんど隠していたイズミさん。顔は結局見られてないんだけど…
黒い生地の上に黒青のレースを重ねてある。レースはイメージ通りのものがなくて、作り直しも考えたけど、お姉ちゃんから黒レースに縁を青レースであしらったら?とアドバイスを受けて、やってみたらピースがカチリとはまった。
手のひらが隠れるくらい広めにとった黒レースの中に、小さい青い花が咲いたように見えて、かわいらしいし、遠目に見るとイズミさんの黒い服とも相まって星のようにも見える。
刺繍は黒い生地の方に施した。色は変えてみたりもしたけど、しっくり来なくて…断念。
「ちっちゃく刺繍入れちゃったら、レースで隠れちゃうもんねえ…」
逆に妹さん向けのショートグローブを見た。
金髪に、白い肌。ぱっちりした大きめな目…なので、イズミさん繋がり持たせて色は白青で、とは思ったものの、かわいい感じがどうもしっくり来なかったのだ。
妹さん、かわいい感じなんだけど、かわいいものが似合わない。
イメージ合わせてみても、しっくり来ない。
ショートグローブに手を合わせ、撫でてみる。
「コカットリス…か。」
自分が言っておきながら、妹さんコカットリスのイメージだった。
毒を持ち、敵を石に変えるコカットリス。
それをイメージして薄く灰色を帯びた白の生地にした。この生地にシンプルに刺繍だけをあしらった。刺繍は妹さんが話していたイメージを、小さい刺繍で施してある。
仕上がったグローブを箱に入れて、包装をしていると扉が叩かれた。
返事をするとお姉ちゃんが顔を出す。
「リゼ、明後日くらいに騎士団の本隊が着くそうだから、カイがそこでお休みに入るの。
それぐらいで私も王都にいこうと思っているんだけど、リゼはどうする?リトはこちらに暫く残ってから挙式近くなってから王都に行くそうだけど」
「?私もリトと同じつもりだったけど?」
はて?そんなに早く王都に言ってもカイさんの親戚とのお付き合いとか面倒そうなので、ギリギリまで私回避するつもりでしたが?
「そう…よね。あのね、リゼ。騎士団の本隊があなたのスキルを見たいって話しているらしくて、私もカイもいないけど大丈夫かしら?」
荒くれ者の中で私一人でなんかやるってこと?ちょっといやだけど、リトの方が私は心配。
「リトもいるし、やっぱり私もこっちに残るわ。お姉ちゃん、カイさんにお手柔らかにして、って騎士団の方々に伝えておいてもらって?」
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