お仕立て グローブ その1

「グローブ?」


確かに仕事するぞー!とは思っていたら、その気持ちを汲んでくれたのか翌朝早速サラが依頼を持ってきた。


うん、親友仕事早い。


なんでもサラの店に何度か来ている取引先さんらしい。


かなり質のいい宝石を流して、買ってくれるお得意様でグローブ探しているそうだ。


「そう、刺繍が見事って聞いて頼みたいんだってさ。なんでも自分と双子の妹さんの分だって。」


昨日の結婚式話も挨拶もそこそこに、話を始めたサラはお針子部屋の椅子に座って寛いでる。


とりあえず、スカートなんだから足閉じてほしい。


「サラの頼みだし。もちろんやるよ!持つべき物は親友ね」


思わず小躍りしたくなる。


「顔立ててくれてありがとうー!なんか身分明かせないみたいだし、外国人なんだけど、舶来物たくさん持ってて、お金もありそうだから、お金糸目つけないタイプのお客様だよ。


うちに来るお客様の中でもかなりの上客よ。」


なんてカモネギ…じゃなかった上客!


お針子部屋に日の光が差し込んできたので、気温が上がってきた。


私は質素なワンピースだけど、営業予定があるサラは下にパニエも着こんだお出かけ着。


…あのー。暑いからって今度はスカート捲り上げるの、やーめーてー。で、そこに風扇いで入れない!おじさんっぽいよ!サラは今日は黒髪サラサラストレート、清楚系なのに…中身親父だから仕方ないか。


頭をブンブン振って、お仕事モードに私は戻した。次に繋がりそうだし、お金掛けてくれるんだったら頑張ります、私!


「じゃあじゃあ、早速採寸したいから、顔合わせさせてね!」


「直接こっちに来てもらうようにするから。


あ、顧客はたぶん隣国から来てる人よ。イズミさんって言うの」


「了解!なんか特徴ある?」


お姉ちゃんに施した刺繍のモチーフ参照した本を取り出して、パラパラ眺める。


どんなのにしよっかなー。


「あ、容姿が目立つよ。髪色金髪だから、帽子で隠してるんだけど、なんかへんてこなメガネしてるから。」


サラの言葉を聞いて、本をめくる手が止まる。奇っ怪な感じの方ねえ。


話を終えたらしく、サラが立ち上がってスカートを直す。仕立て屋なんで、気になって服を直すのを後ろに回って直すと、サラの髪が気になった。


「ねえ、昨日片手間にヘアアクセ作ったんだけど、髪結わえても良い?」


「どんなの?」


「これ。かんざしって言うんだって。」


昨晩片手間で作ったかんざしを見せる。サラは刺繍のところを触ってから、ニヤっと笑い


「じゃあお願い。私の髪多いから扱いにくいよー。」


再び椅子に座った。…あ、これも売り込む気だわ…

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