お仕立て ウエディングドレス 終章
「それじゃあしばらくお仕事なんですね」
あのあとお姉ちゃんとカイさんはすぐ来た。若いもの同士、ゆっくりしててもいいのにー、って私これじゃ八百屋のおばちゃん状態だわ。
ナイフで薄く生ハムを切りながら、カイさんの話しに口を挟む。
「うん、今日の教会の襲撃がどうも敵からの攻撃みたいでね。救援を呼んだんだけど、ここに来るまで少し時間がかかるから、調査と哨戒に当たることになったんだ。
まったく…結婚式の日に来るなんて、傍迷惑な奴等だよ。」
そう言いながら、カイさんは私が苦労して薄く切った生ハムを取る。
「カイ、哨戒中なのにここに来て大丈夫なの?」
お姉ちゃんが尋ねると、カイさんは満面の笑みを浮かべた。
「お嫁さんの方が大事だからね。
それに仕事なんかどうにかなるんだ。あと今までの経験から魔女は大がかりな仕掛けを複数設置は難しいみたいだ。…単独、あるいは少人数での奇襲を得意とするからね」
脇ではムシャムシャとリトが生ハムをのせたパンを食べている。育ち盛りだのう。
あ、目を白黒させて詰まらせたみたいだ。私はスープをそっと差し出すと、リトの背中をさすった。
「リト、ご飯逃げないからゆっくり食べなさいな」
「ぐふぉぐふぉ、…リゼ姉ありがとう。お水ちょーだい。」
スープを少し飲んで落ち着いたみたい。よかったよかった。
水差しからコップに水を入れると氷がカランと、音をたてた。
「そういえば、カイさんの魔法ってすごいんだな!あんなにおっきいの出して、みんな守れるんだから」
リトの言葉に私も頷く。教会を覆うレース状の氷は美しかったし、あれのお陰で私たちはみんな無傷なのだ。
そうじゃなければ木が半壊させた教会の下でぺちゃんこだ。
でも、カイさんの顔からは笑みが消えた。
「いや…魔法使おうとはしたし使ったんだけど、俺の魔法は魔方陣なしじゃあんなに大きいものは作れないよ。
あれについても調査中なんだ。まあ、これはたぶん聖遺物とかがあって、魔法増力されて護れたんだとは思うんだけどね。
追加の部隊が魔力を測るマジックカウンター持ってきてくれるから、これはすぐわかると思うよ。」
「…へぇ…」
微妙に専門用語もあって難しい…!分からなくて私とリトは曖昧に顔を見合わせた。
「あ、しばらくカイさんいるってことはお姉ちゃんの結婚式のリベンジ、するの?」
「うーん、まだ親戚の伯母さんたちとも話してないからなんとも言えないけど、教会も壊れてしまったし、村での式はやり直さないで、あとは王都で挙げる結婚式に備えようかと思ってるの。
リゼが作ってくれたウエディングドレスも汚れは見当たらなかったけど、きれいにしたいし。」
おお!私グッジョブ!汚れが目立ち難いほど刺繍が細かく入ってて、分かりにくいってことね。
「王都での式にはリゼもリトも一緒に行って、結婚式また参列してもらえる?」
「お姉ちゃん、もちろんだよ」
「今までの俺たちを育ててくれたんだから、精一杯お祝いしたいし、行くよ!」
よーし、行くまでの旅銀貯めるためにも、こっちにいる間にできるお仕事しておこう!
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