小話 リムとカイ

トントン


ドアがノックされた。リムはハッと顔をあげると、息を飲み込み努めて落ち着いた声でどうぞ、と答える。


がちゃっとドアノブが回り、姿が見えたのは制服姿。


思わずベットに丸まっていた姿からベットの縁に座りかけようかと体を動かそうとした。が、それも叶わず。


「リム」


リムが声に気付けは、制服服姿のカイはメガネをつけておらず、すでにベットまで来ていた。


片手をリムに伸ばした。


「だめ、カイ」


「これ以上しないから」


静止の声はカイには通じず、リムは手で弱くカイの胸を押す。


それにも構わず、カイは伸ばした手でリムを抱き締めると、ベットに横になった。


つられてリムの体もベットの上に沈む。


カイの手に力が入り、リムはカイの顔を見やる。


「結婚式……ごめん。やはり奴等の仕業みたいだ」


「魔女?」


「うん。倒れた木付近に術式の跡があった。……もう少し確認しておけば……」


今この国では小競り合いが頻発している。その相手が魔女であり、魔女は神出鬼没、とは周知の事実。


国に属する騎士団にも妨害行為は起きている。


起きないのは王都ぐらいだ。


「やっぱりもう少し人手借りるんだったな……」


「でもカイが守ってくれたんでしょ? ありがとう」


カイは首を横に振る。


「いや、俺はあんなに魔法を早く大きく展開は出来ないんだ。だから、あれは俺だけの力じゃ……」


カイはぼやくように言うと、近くにあるリムの顔を見つめた。徐々に顔が赤くなる。


「リム……やっぱりちょっとだけ……だめ?」


カイはリムと同い年にあたる。仕事をしているときには副団長の肩書きから人を寄せ付けない雰囲気もあるのだが、実際は王都の商家の三姉弟の末っ子。


妹弟を見てきたリムからすると、弟みたいに見えてしまうことがあり、甘えられると弱い。


「妹と弟がいるから、キスだけ」


「はい」


律儀に返事をするとカイはリムの唇を重ねた。一度長く、貪るように重ねると、リムの声が漏れそうになる前に離し、今度はリムの頬、額へとキスをする。


「結婚式……また考え直さないとね」


「そうだな……仕切り直さないとな」


カイは体をリムの上に重ねた。

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