二話 フウカ


「ティム……ふうん。そうなんだ」


 ティムの返答に対しても、少女は取り立てて反応を見せず、時折ごしごしと目元をこすり、あくびを噛み殺している風である。


「えっと……ぼくからも聞いていいかな。きみは……誰?」

「わたし……」


 と、そこで少女は、それまでぼうっとしていた瞳の焦点をようやくティムに合わせて。


「わたし、フウカ」

「フウカ……?」

「うん、フウカ」

「そうなんだ……よ、よろしくね」

「よろしくね……」


 にこり、と少女――フウカが笑う。


「おい、ティム……何やら話し声がするが、一体どう……む?」


 すると、どうやら物体を一周してきたのか、ワガハイがひょこりと顔を出し。

 フウカを目にして数秒ストップした。さっきのティムそのままのリアクションである。


「……誰だ、そいつは?」

「フウカだって」

「そうか……い、いや、そういう問題ではない!」


 びしっと指を差し、ダカダカと駆け寄って来たワガハイは、きょとんとしているフウカの風体を、つま先から頭のてっぺんまで穴の空くほど見やり。


「し、信じられん……機械のボディではない……これは、有機体ではないか……!」

「――あ、フウカ。こっちはワガハイ。ぼくの友達だよ」


 すっかり研究者モードに入ってしまったワガハイに代わって、ティムが紹介する。


「変な眼鏡してる……変わった人だねー」

「な、何を言う! これはよくよく研究対象を観察するための大事な仕事道具であり……というかティム! 我が輩はワガハイという名前をはなはだ不本意に思っているんだぞ。もっとこう、教授とか、学者とか、知的な候補があったはずではないか?」

「そんな事言っても、ワガハイは長老さんより後に起きたんだから、決めたのは長老さんだし……」

「わたしも……その名前、わかりやすくていいと思うな」


 フウカはまだ眠そうながらも、柔らかい微笑みを投げかけて来る。


「むむ……おい。お前はどこから来た? どうしてその船に乗っていた? 何が目的だ?」

「うーん……いっぺんに言われても分かんないよ……それに……」


 フウカは数分前と比べて幾分しっかりとした風情で、きょろきょろとあたりを見回す。


「ここ、どこ……? お父さんとお母さんは……?」

「おとうさん? ……おかあさん?」


 おうむ返しにしたティムは、一拍置いて聞き返す。


「……なに、それ?」


「――ティム、ちょっと来い」


 ワガハイがティムの唐突に肩を掴み、ぽかんとしているフウカを置いて引きずるように岩陰へ連れて行った。


「わわ、どうしたのワガハイ? まだフウカと話の途中だよ?」

「その前に言っておく。……あの娘は怪しい。何を企んでいるか分かったものではない」


 ぐいっと顔を近づけてくるワガハイに、ティムはびっくりしたみたいに聞き返す。


「ど、どういう事なの? あ、怪しいって……!」

「ええい、大声を出すな! 気づかれるじゃないかっ!」


 怒られた。


「……あの娘が何者なのか、いくら考えてもまるで不明瞭、不可解。ただ明らかな事実は、我々に断りもなく突如やって来て、他に船の乗組員もいないらしい、という点だ」


 指を教鞭の如く上げるワガハイに、ティムは首を傾げた。


「どうして一人だって分かるの?」

「聞いていなかったのか? 奴の様子からして、どうやら親とははぐれているようだ。つまりここに墜落して来たという我が輩の見立ては、まったく正しかったという事になる。すなわち、現状は誰にとっても予想外であり、どう転ぶかまったく予測がつかん」

「ええと、その前に……親って何?」

「親とは……むう、なんだろうな」


 ワガハイも口ごもり、目を光らせて自身のデータベースを参照しているようだった。


「ファイルによれば、『古い人』は家族というグループに別れて暮らし、力の弱い子供は親に守られていたという。つまり……なんだ、フウカにとって親とは、大切な存在、というカテゴリにあてはまるな」

「大切な存在……ぼくにとってのワガハイみたいな?」

「い、いきなり何を言う! まったくこいつは……!」


 ワガハイが顔を離し、ティムを小突くように突き飛ばした。


「とにかくだ! あの娘は得体が知れん。心を許さず、緊張を持ってあたるべきだ」

「で、でも……」


 ティムが振り返れば、ぽつんと一人取り残されたフウカは、戸惑ったように見回し続けていて、目尻が下がり、どことなく不安そうだ。


「……ワガハイの言う事も分かるけど、良いか悪いか判断するには、もう少し話をしてみなければ分からないよ」

「ええいティム、お前は警戒心がなさすぎるぞ」


 ワガハイの制止を振り切り、再びフウカの元へ戻るティム。


「ごめんね、待たせちゃって。――それで、ええと、ここがどこかだっけ?」

「うん……」

「ここはニホン村だよ! ぼくの家もこの近くにあるんだ」

「にほんむら……?」


 フウカの反応は鈍い。また眠くなって来たのか、と思われたが、どうも今度は目元が少し赤く、小さく鼻をすすり上げる。


「お父さんとお母さん、ここにいるの……?」

「そ、それは分からないよ。ぼくには、お父さんもお母さんも、いないし」

「いないの……? ティム、一人なの?」

「う、ううん。一人だけど、一人じゃないよ」


 頭に疑問符を浮かべるフウカに、ティムは身振りでワガハイを示しながら、なるべく明るく答えた。


「ぼくにも、ワガハイにも、長老さんにもダララロにも、誰にもお父さんやお母さんはいないけど、ぼくには、ワガハイも長老さんも、ダララロも、村のみんなも、みんなみんないるから、一人じゃないんだ!」

「そう……なんだ」


 フウカは下を向いた。


「お父さんとお母さんに、会いたいよ……」


 ぐすっと鼻をぐずつかせ、か細い声で呟く。


「……わたし、一人だもん」


「――一人じゃないよ!」


 え、と目を見開いて見上げるフウカに、ティムはとにかく元気を出してもらおうと、思いつく限りに言葉をかけた。


「フウカには、ぼくとワガハイがいるもの! ここにいるから、フウカは一人じゃないよ!」


 フウカはあっけにとられたみたいに固まり、じっとティムを見つめてから。

 無言で目元をこすり、ぱんぱんと頬を叩くと、にこっとした笑顔を浮かべた。


「……ありがとね、ティム!」

「うん……!」


 そのやりとりを眺めていたワガハイは、一つため息をついて。


「やれやれ。毒気の抜かれる光景だ、気を張っているのがバカらしくなってくるな。……まぁ、立ち話もなんだ。お前達、一旦どこかで身体を休めないか?」

「この中はどう?」


 ティムが物体を指差すと、ワガハイは太い首を横に振った。


「内部の調査はまだ済んでないし、これが何らかの事故である以上、迂闊に踏み込むのは危険だ。……ティム、お前の家にするぞ。幸い近所だからな」

「ぼくはいいけど……フウカはどう? 一緒に来てくれる?」


 フウカは一度だけ、後ろの物体を振り返り、それからティムにこくんと頷いた。


「いいよ」

「じゃあ、行こうか。ちょっと歩くけど大丈夫だよね?」


 こうして三人は墜落地点を後にし、ティムの家へ行くため来た道を歩き始めたのだった。


「うわあ……空が真っ赤っかだよぉ。どうしてだろー?」


 鉄板でできた道をてくてく進みながら、好奇心に瞳を輝かせてあちこちを見渡すフウカ。


「わかんない。ぼく達が目覚めた時には、もうこうなってたらしいよ。もっと昔には、空は青かったし、人がいっぱいいたし、あちこちに色々な建物があったみたいなんだけど……何があったのかは誰にも分からないんだって」

「まあ分からんからこそ、知る楽しみがあるわけだが」

「それじゃ、他の人もいるんだよね? みんなティムとワガハイみたいなの?」

「みたいなの、の意味が、ロボットと同義であると仮定するなら、そうだな。この先の集落で、家々を作り生活を営んでいる」

「あのさ……それじゃ、フウカはやっぱり、古い人なんだね」


 古い人? とフウカが首を傾ける。


「古い人っていうのは、ぼく達よりもうんと昔に、この星で生きていた人達の事を言うんだって。フウカみたいにお肉の身体を持ってて、時間が経つと身体が伸びたり縮んだりするって」

「……でもわたし、人間だよ? わたしこそ不思議だなー、ティム達ってロボットなのに」

「なんで不思議なの?」


 今度はティムの方が首を傾げる番だった。


「って、すっごぉ! あっちこっちに色々山があるよ!! あれなになに!?」


 かと思えばフウカの興味は別に移っており、遠くを指差してははしゃいでいる。


「あれはガラクタ山だよ。ほとんどは壊れた機械や道具ばかりだけど、たまに使えるものがあるから、掘り出しに通ってるんだ」

「といっても、ティムは自分の好きな金属や廃材集めばかりだがな。我が輩はこの星がこうなった原因や、古い人のいた時代についての資料を収集したいのに、おかげで中々はかどらん」

「そんな事言わないでよー。ぼくだってワガハイに協力したいけど、ついつい気になる方に目がいっちゃってさ……」


 申し訳なさげに目をチカチカさせると、フウカがおかしそうに笑い声を漏らす。


「仲良しなんだね、ティムとワガハイって」

「そ、そんなわけあるものか。たまたま我が輩が資料集めに精を出している時に、偶然こいつと出くわして、労働力として有用だから付き合ってやっているだけでな……」

「なんだかひどい事言われてる気がするー」


 ティムが両腕を振って抗議すると、フウカはこらえきれないみたいに吹き出すのだった。

 ティムの家は、これまた大量のガラクタに抱かれるようにして佇む、金属で出来た建造物だ。

 一階建てで横に広く、若干勾配のある鉄板の坂を昇った先にドアが一つ。後は窓がいくつかはめ込まれ、中の様子が少し覗ける。


「おーっ、あれがティムの家なんだ! なんだかひっくり返した切り株みたい」

「切り株ってなに、フウカ?」

「話は後だ。ひとまず各機関を冷却したい。中で休むぞ」


 玄関から入ると、天井のやや低い、丸くくり抜かれた広いリビングと直に繋がっている。

 中央にはテーブルといくつかの椅子、壁の棚には時計、天井からは電球がぶら下がり、さらに向かって左、その真向かいに部屋が一つずつあった。


「周りは荒野ばっかりなのに、電気は来てるんだね――右側には……うわっ、埃すごっ! 鉄の棒とかもぎっしり!」


 右側のドアを開けて頭を突っ込んだフウカが、中からぶわっと噴き出してきた埃に面食らって身を引き、顔の前で手をばたつかせながら逃げてくる。


「ティムが集めたガラクタの物置部屋だな。ガラクタ山にほど近い村はずれにわざわざ家を構えたんだ、こいつが変わり者と呼ばれているゆえんでもある」

「で、でもでも、フウカならきっと、この棒が放つ気配のまぶしさとか、こっちの破片の硬さの良さとか、きっと分かってくれると思うんだ!」


 ガラクタを腕一杯に引っ張り出し、目のランプをキラキラさせながらほおずりするティムに、フウカは愛想笑いを返したものである。

 左側の部屋は寝室となっており、少し手狭ながらも金属でできたベッド、枕元には古びたラジオ、そして壁には大きな地図が貼り付けられていた。

 地図の一番上の欄には、インクで字が書き込まれている。


「……惑星、『アーヴェル』……この星の、名前?」

「そ。これは星全体を描いた地図だよ。ほら、この青い丸のある所がニホン村。離れてるこっちがイタリア村……」


 各地の村を示す青丸の中には、さらにいくつもの集落や地名の絵が点在し、その一つ一つにも名前がついている。ティムの家には、小さくバツ印まで描き込まれていた。


「すっごぉ……とっても広いんだね、世界って! でも、ほとんど地続き――島も海もないんだね……」


 と、何気なく壁際に並ぶ本棚を見たフウカが、歓声を上げた。


「わ、本! 本があるよ! ティム、読書好きなんだ?」

「ぼくがっていうか、ワガハイがよくうちに来て、色々本を置いていくんだよ。全部分厚いし、難しいし、それに読書苦手なのに」

「ふん。ティムはもっと学を身につけるべきなのだ。我が輩のパートナーとして、これでは知的な会話もままならん……というか、お前、本が読めるのか……?」

「ちょっと難しいけど、読めるよ! 読んでいい?」


 ティム達の答えを待たず、フウカは本棚から何冊か抜き取って、物理学や数学、機械工学に関する参考書などを、ティムのベッドに座って読み始めた。


「むう……どうやら本当に読めているようだな。何とも不可思議だ。あのくらいの年齢の古い人の子供は脳が未発達でアニメやゲームを好み、数式など理解できんはずなのだが……」

「へえ~そうなんだ。もしかしてフウカってとっても頭いいのかなぁ?」

「別に普通だよ? お父さんとお母さんからこういうの習ったの。けど絵本だって好きだし!」


 そう答える間にももう一冊の本を読み終わったのか、次の本のページを開くフウカ。


「ま、待て待て。先にこっちの質問に答えるのだ。お前はどこから来た? なぜあの船に乗っていた?」


 フウカは本を側に置き、神妙な目つきでワガハイを見返すと、ふるふると首を振った。

「――わかんない……何も覚えてない」

「え? 前のこと、忘れちゃったの?」

「うん……自分の名前と、お父さんとお母さんの事は覚えてるよ。でも、後は何も……」


 どうやらフウカは、自分と家族についての記憶はあるようだが、その前にはどこにいたのか、何をしていたのか――そういった事柄を忘却してしまっているらしい。


「……あ! ぼく前にワガハイから借りた本で見た事あるよ! それ、きおくそーしつって言うんじゃないかな?」

「そうであれば、ますます謎は深まるな。だが、我が輩の仮説の裏付けにもなる……この娘の乗ってきた船が宇宙船であるのなら、記憶喪失になった理由は分かるかも知れないぞ」

「そうなの?」


 ティムとフウカの目線が、ともにワガハイへ注がれた。


「……コールドスリープだ」

「コールドスリープ?」

「そうだ。コールドスリープとは、生物を急激に冷凍して一時的な仮死状態にさせ、長い宇宙航行を可能とさせる事をいう」


 教師のように講義を始めるワガハイに、フウカは真剣な目つきで耳を傾けている。


「ざっと見た所、フウカは頭を打った様子も、何らかの薬物を打たれた痕跡もない。ならば他に考えられるのは、宇宙船に搭載されているコールドスリープ装置の後遺症……と考えるのが自然だろう」

「……あっ! そういえばわたし、変なカプセルの中で目が覚めたよ! それでずっと頭がぼうっとしてて、今は大丈夫だけど……もしかしてあれが?」

「その可能性は高い。船に戻れば確認も取れるだろう」

「な、治るのかな? ずっと記憶喪失のままだと、嫌だよ……」

「それは分からん。我が輩は医者ではないからな。まぁ軽度のものであれば、じきに思い出せる……とは、宇宙関係の資料のどこかで見かけたが」

「そっか……よかったぁ」


 ワガハイの返答を聞いて胸をなで下ろしているフウカ。

 一方まるで話についていけないティムは、置き去りにされまいと懸命に口を挟む。


「そ、そういえばさ! フウカのかけてるそのペンダントって、もしかして開けられたりするんじゃないかな?」


 フウカの首もとにあるロケットを指し示すと、少女は両手で掴んで見せ、それから指で弾くようにすると、ぱちんと音を立てて。


「あ……開いた、開いたよ! ティムの言う通り!」

「えへへ……」

「たまにはお前の勘も役に立つではないか。それで、中に何が入っているのだ?」


 もしかすれば、記憶喪失に関する事柄のヒントかも知れない――そうしてフウカがロケットから取り出したのは、一枚の小さな写真。

 そこに映っていたのは、どこか緑に囲まれた木々の間で、並んでこちらに晴れやかな笑顔を向ける、三人の古い人。


「……あれ、もっと下の方に、何か書かれてる。……十一桁の、数字……?」


 写真の裏側には謎の数字が羅列されており、フウカは小首を傾げて指先でなぞっている。


「えっと、男の人と、女の人と……あ! この子、フウカじゃない? そっくりだよ!」

「ふむ……写真の娘と同一人物ならば、この二人が両親である可能性は高いと言えるな」

「なんで?」

「家族というのは、そういうものだからだ。本能的に寄り集まり、こうした媒体に意味もなく足跡を残そうとする」

「意味なくなんか、ないよ……」


 ワガハイへ反論するように、フウカは俯いて呟く。


「わたし、覚えてる……ずっと前に、お父さんとお母さんと、ピクニックに行ったの。久しぶりのお出かけで、暗くなるまでずっとずっと一緒に遊んで、お父さんの車で寝ちゃって……」

「フウカ……」

「起きたらね、もうお父さんはお仕事に行っちゃってて。お母さんも働きに出なきゃいけないのに、わたしのためにご飯、作ってくれてたの。わたしが中々起きないから、温くなっちゃってたけど……ずっと覚えてる。だってこんなに、胸が温かいのに……」


 フウカは首を上げた。振り向けられた両目には心なしか熱が籠もり、なのに唇を真一文字に引き結んで、漏れようとする何かを抑えているような表情で。


「わたし……家に帰りたい。お父さんとお母さんに、会いたいよ」


 滴を落とすような呟きを最後にその場が静まりかえり――ティムは尋ねた。


「フウカのお父さんとお母さんって、とってもいい人達なんだね」

「え……?」

「だって……今は近くにいないけど、こんなに強く思ってもらえてる。だったらさ、逆に言えば、フウカのお父さんとお母さんも、フウカの事を捜してると思うんだ」

「あ……」


 フウカが小さくまぶたを見開く。弱々しかったその瞳には寂しさの他に、ほのかな光が灯ったように感じられ、ティムは勢い込んで言葉を続けた。


「……うん! そのコールドスリープ? っていうのをするくらい長い間宇宙を旅して、ここに来たならさ! お父さんとお母さん、案外この星のどこかにいるんじゃない?」

「え? てぃ、ティム、本当!?」

「正直希望的観測に過ぎんが……否定もできないな。――それにだ、ティム」


 ワガハイがまっすぐにティムを見据え、重々しく問いかける。


「……そんな事を言って、お前は何をする気だ?」


 ティムは躊躇なく答えた。


「フウカのお父さんとお母さんを捜す! いるかも知れないなら、捜せば見つかるさ! ね、フウカ!」

「ティム……」

「やれやれ、まるで根拠がないではないか」


 呆れたように片眼鏡をかけ直すワガハイ。

 それでもフウカは、目元を潤ませてティムを見つめ、歯を食い締めて頷く。


「わ、わたしもっ、お父さんとお母さんに会いたい、会いたいよ……っ」

「……まぁ、我が輩にとっても興味深い、益のある話だしな。その娘の両親を捜してやる事自体には別に異論はない……」

「うん、それならまずは集落で聞き込みだね! 行こう行こう!」

「そこって……機械の村、なんだよね?」

「そうだよ。ニホン村はすっごく広いし、いっぱいいっぱいみんながいるから、きっと誰かが知ってるし、すぐ見つかるさ!」


 ティムは握り込んでいた拳を開き、そっと差し出すと。


「……うん!」


 フウカはその錆びだらけの金属の手を見つめ返し、自分の小さな手を乗せた。

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