第2話
「レイ!そっちに行ったぞ!」
「はい!」
Sランク魔獣を2人で倒す最強の冒険者親子。
9年前に突然現れたこの親子を、人々は畏怖の念を込めてこう呼ぶ。
『死神親子』と───何が死神よ!か弱い女の子につける異名じゃないわよ!
「考え事は後にしろ!」
「ごめーん!」
目の前に現れた邪竜の大きさはお父様の10倍はあるけど、こんなのおちゃのこさいさいよ?
【麻痺】
ピタリと止まる邪竜の頭上にお父様が現れ、手に持った剣で一刀両断にすれば終了。
「ふう·····全くお前はこんな時に考え事とはな」
「ごめんごめん。ほら、早く取るものとって浄化しちゃわないと死の土地になっちゃうよ」
「チッ」
「舌打ちは下品じゃないの?」
鱗を20枚、爪を全部、目玉もヒョイととれば完了·····最初は目玉取るのが怖くて逃げてたけど、いつの間にか平気になってたわ。
やる気さえあればなんでもできーる!
「よし、後は核だけだな」
「うん」
邪竜に手をかざすとサラサラと塵になっていき、後に残されたのは火の色の核だけで、お父様がそれを拾って皮袋にしまってから私の横に来て一緒に祈りを捧げる。
次の生では穏やかに過ごせますようにと。
他の冒険者達がこういう事をしているのかは分からないけど、私達はこうやって祈る事にしてるの。
だって、魔獣に生まれたくて生まれた訳じゃないもの。
「さて、戻るか」
ポンと私の頭に手を置いたお父様に微笑んで、その場で【転移】というと依頼を受けたギルドの前に出て、2人で中に入ると皆がギョッとした目で私達を見たけど、それはまぁ依頼を受けてまだ2時間しか経ってないから以外にはない。
これは慣れてるからそのまま受付に行って、爪や鱗を指定数だけだして鑑定が終わるのを待つのがこの5年間の私達の生き方。
「確認がとれましたので報酬を振り込ませていただきますね。おふたりですので半分ずつで?」
「それでいい」
冒険者ギルドにはアーテムという魔術で作られた機械があり、このカードで支払いから何からできるし現金を持ちたければアーテムから引き落とせるからめちゃくちゃ楽。ま、現金を持つ事なんてないけどね。
「はい、全て終了致しました」
「ありがとう」
「ありがとうございます!」
ニコッと笑うと受付のお姉さんが真っ赤になって顔を隠したんだけど·····実は、私は髪を切って男の子だと偽ってるの。
冒険者カードに性別は書かれないし、男の方がバレにくいだろうと思ったけど、髪を切る時だけは2人で号泣したわ·····一度も切った事がなかったし、亡くなったお母様にそっくりの白金の髪だから。
名前をクレアからレイにする時も少し泣けたけど、冒険者カードは偽名でも通るから全然OKなのよね。
後暗い経歴の人も多いから·····。
「レイ、行くぞ」
「うん!」
ここは朱の国という人間達の暮らす国で、一番魔獣が多く倒す手立てがあまりないから冒険者の需要が高いの。
ヒロインのヤンナが住む国でもあるけど、彼女はド田舎出身だから王都には来ない事は分かってるからまだ楽ね。
「あ、待って下さい!」
この場を去ろうとすると、受付のお姉さんが慌てて追い掛けて来てお父様に封筒を渡したんだけど·····すごく嫌な予感がする。
「レイ君は学園に通わないといけない年齢になりますよね?住所がないのでウチに届いたんですよ」
「ああ、ありがとう」
グシャリと封筒を握り潰して乱暴にポケットに突っ込んだお父様は、私の手を引いて先へ先へと歩いて行く。
「お父様」
「まだ宿じゃないからその話し方はやめろ」
「は·····うん」
宿までの道を歩きながら、学園に行かない方法はないかと必死に考えるけどそんなものはない。
この世界では、全ての国から集まった生徒達が16歳から3年間同じ学園生活で学ばないといけない。
平民も貴族も関係なく·····そこで番を見つける者も多いから仕方ないんだけど、また始まるのかと思うと気が重いのよね。
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