【2】仙台に雪が降る 30首

仙台に雪が降る





目覚めてもゆるくみじめだ今積もり始めた雪のしとしとしとと




静止した朝一枚にカラス来て自転車が来てはげあたま来る




サンタ帽最初の人だ十二月九日十時三十七分に




雪の中でタイヤがうなる人間の言葉で言えばウーンウンウン




泣いているある時点から悲しみを維持しようとする力まざまざ




知ってると言ってあなたが話し出すエピソードのささやかな脚色




予期しない瞬間に見たオレの顔がクッソつまらんただの男だ




クイズショー不正解者の心地する顔面もろに雪風を受け




あやしげな健康食品販売店の朝の雪かき真っ当である




工事用機械の首は長くのびついにはオレを見つけてしまう




三人で歩いていれば前をゆく二人と後ろをゆくオレとなる




このようにはなりたくないと切り捨てる悪例に含まれているオレ




あわよくば世界を覆い尽くそうと上へ左右へ命は伸びる




午後五時のすでに暗くて〈砂押町〉降りる者なく通過するのみ




   ・ ・ ・ ・

四拍のゲンパツイラナイ

   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

七拍のキレイナミヤギヲトリモドソウ




仙台の町にウサギとサンタいて看板を持つ「原発NO」の




「仙台駅」三文字「SENDAI STATION」十三文字で大差がついた




怪人の手下のようなマスクしたおばちゃんが来た難なくよけた




健全な肉体座る健全でない精神にさいなまれつつ




打ち出され釘に転がる銀玉の特にあっさり消えたものへの




傘を降り落ちないしずくと落ちるしずく何が違っているのでしょうか




近づけば夜のマンホールさざめいていつかは海になりたい汚泥




スタジアム漏れる光の●●○●●照らせば照らすほど川暗く




何らかが押し寄せてくる急かされるようにペンをとるも何も出ず




親指に指紋があると思い出し無性に見たくなり飛び起きる




透明な犬飼ってます透明な犬用のエサ食べさせてます




震災にヤマザキ春のパン祭り景品皿に傷ひとつなし




名を呼んで伸ばされた手は届かずにみんな枯れ木になってしまった




そんな気がしてきただけさわたくしもあなたもいなくなった海底




そこここに空を見ている人がいて青さを喜び合っている夢

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る