第2話 火山のごとく

 モエとリアは上空にいた。


 死神は空を飛ぶことができる。

 2人は空を飛び、ブラックソウルが出たという荒野へ向かっていた。


「ブラックソウルはどんなやつだ?」


 モエがリアに聞いた。

 リアは記憶した情報をモエに話した。


「なんでも、動物虐待の罪で捕まった男がブラックソウルになったらしい。しかも、何度か未遂で警察に話を聞かれていたそうだ」


 モエは右手の拳を左手の平にぶつけ、怒りをあらわにした。


「動物虐待だと!?ふざけやがって!かわいい動物もいるのに……くそー、うちがそのブラックソウルを鎮めてやる!!」

「まあ落ち着きたまえよ、モエ君。君が怒る理由は分かった。だが、どっちにしろ鎮めることには変わりないんだ。深呼吸をしたまえ!」


 リアは激高するモエをなだめた。モエは2、3回深呼吸した。

 深呼吸したモエは落ち着きを取り戻した。


「悪いな、リア。我を忘れそうになった。こうなったら、ブラックソウルに怒りを全部ぶつけて鎮めてあげよう!」

「そのいきだ、モエ君!」


 しばらく飛んで行くと、荒野の真ん中に人間の影のようなブラックソウルが立っていた。


「あいつがブラックソウルか」


 モエとリアがブラックソウルのいる場所に近づいて行くと、ブラックソウルの体から濃紺の靄が立ち込めた。


 そして、そのままモエたちと同じ高さまで浮き上がると、上空でまた動かなくなった。


「なんだこいつは。そっちから来ないならこっちからいくぞ!」


 モエはブラックソウルに向かって飛んでいく。


「――待つんだモエ君!うかつに近づかない方がいいぞ!……遅かったか」


 モエがブラックソウルに近づくと、モエに向かって濃紺の靄が吹き出し、モエは吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされたモエをリアが受け止めた。


「大丈夫か、モエ君。僕が作戦を伝えるからその通りにしてくれ」


 リアが作戦を伝え、モエはブラックソウルの前に立ちはだかった。


 すると突然ブラックソウルの前方に、まとまった靄がいくつかでき始めた。

 そのまとまった靄は、回転しながら犬のような姿になった。


「あれは…」


 靄の犬たちはモエに襲い掛かってきた。

 モエは飛びながらその靄犬たちをかわしている。


 かわしながらモエは右の手の平をパーにして上に向けた。

 その手の平の上に火を出現させた。


 そして、右手をピストルのようにすると靄犬に向けて撃った。


 一匹の靄犬は当たると火が燃え広がり消滅した。


 モエは次々に靄犬に向けて火を撃っていった。


「あいつは犬を虐待してたんだ。だから、靄の犬を使役して攻撃してるんだな。とんだクソ野郎じゃねえか!」


 靄犬を何匹消しても、ブラックソウルはすぐに靄犬を出現させる。


「くそ、きりがないな。まだか、リアは…」


 リアは下に降り、地面を触って何かの準備をしている。

 モエはリアに言われて時間稼ぎをしていた。


「――はぁっ!」


 モエの前方から靄犬が二匹向かってきた。

 ――モエが二匹の靄犬に火を撃ったと同時に、三匹目の靄犬がモエの左腕に噛みついた。


「くっ…」


 モエは堪(こら)えながら、三匹目の靄犬の頭に右手のピストルで火を撃ちこんだ。

 そして、モエは体勢を立て直すために靄犬から離れた。


 逃げるモエに靄犬が迫る。


 ――靄犬たちが襲いかかろうとした時、リアが叫んだ。


「モエ君、準備ができたぞ!!」


 リアの目の前には小さめの丘のような火山が作られていた。

 その火山口は空洞になっていて直径が3メートルぐらいある。


「――よし、やっとだな!」


 モエは襲いかかった靄犬を火で消すと、リアが作った火山口に突っ込んでいった。


 火山の底に降り立つと、両手を開き外側へ向けた。その場で回転すると火が炎となり上昇していった。


 モエは踊るように回転しながら火山の中を炎で充満させた。

 そして、モエは両手を上に向け火山口から一気に炎を放出した。

 放出した炎はブラックソウルに向かって行った。


「これがうちとリアの合わせ技、火山のごとくだ!」


 火山口から放出された炎は靄犬を消し飛ばして、ブラックソウルを焼き尽くした。

 焼き尽くされたブラックソウルは跡形もなくなった。


 モエとリアはブラックソウルを鎮めることに成功した。


「よしっ、完了だな!スッキリしたぜ!」

「モエ君悪いね。火山の形成に時間がかかってしまって…」

「大丈夫だ!鎮められたからな!」


 モエは靄犬に噛まれた左腕を擦(さす)りながら言った。


「帰ろうか、モエ君」

「ああ、帰って報告だな。めんどくさいけど…」


 モエとリアは荒野の上空を飛び去って行った。

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