第19話 七色の玉
倒れたヨルの元へと歩く。
トドメを刺す気はない。
直に死ぬのはその出血量でわかっていた。
ヨルは血塗れになった唇をゆっくりと動かす。
「この城の中に七色の玉をはめる場所があるわ。
探してごらんなさい。
ただしお城が崩れるとその場所もなくなって、この城はこのまま国の首都に突っ込むわ。
今日は夜通しパレードよね。
一体何人の人が死ぬかしら。首都は壊滅よ」
「そんなことはさせない」
「そう。だったら早く見つけなさい。
時間がないことは仕方ないわ。
ちんたら旅を続けていた自分のせいで時間がなくなったのよ。後悔なさい」
私はヨルを一瞥して城の中へと駆けた。
「サヨウナラ、姉さん」
ヨルのそんなつぶやきは誰の耳にも入らなかった。
大きな城中を駆け巡った。
城はグラグラと揺れ、崩壊は止まらない。
一体どこに七色の玉をはめる場所があるのか。
私は城の一つ一つの部屋を巡った。
いつだったか同じように探し物を求めていたことを思い出す。
そう、あれはリアムの父の研究室で五つ目の玉を探した時のこと。
あの時はリアムがいてくれたから見つけられた。
ーー待てよ。
そうだ、研究家の家で見た。
”時を知らせるもの、虹のありかを示す”
不自然だと思っていた。
ヨルが横たわる壁掛け時計の針が真下を向いたままで止まっている。
そうか。ゴールは足元にある。
私は時計台の下を思い切り踏み込んだ。
するとその場所だけに穴が空き、私は下の階に落ちた。
ドスンという音とともに着地し、あいたたたと腰をさする。
埃を払いながら急いで立ち上がり、首を動かした。
ふと、長い廊下のその先に壁一面絵が描かれている場所を見つける。
ドラゴンと少女が約束を交わす絵だ。右上には虹が描かれている。
そこに七つの窪みを見つけた。
「あった!」
私はそこまで駆けていく。
でも窪みは高すぎてこのままでは手が届かない。
辺りを見回していると、壁が大きく崩れ、そのせいで外が見えた。
ものすごい勢いで城が森を下っているのがわかる。もう時間がない。
私は赤い布を払い、聖剣リアムに念じた。
すると剣の柄から翼が生え、ふわりと体が浮く。
遠くから人の悲鳴が聞こえる。もう街へと近付いている。
私は急いで七つの玉を窪みに納めた。
翡翠色、飴色、紅色、山吹色、瑠璃色、桔梗色、藍色。
七つ目の藍色を納めたところで、城は急停止した。
戦車のような車輪に乗ったボロボロの大きな城が街に突っ込む寸前のところへ佇んでいる。それはそれは異様な光景だった。
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