第16話 城

青い蝶の導くままに旅を続けると首都に着いた。


首都では建国千五百年の記念パレードが開かれていた。


女性はカラフルなドレスに、男性はタキシードに身を包み、美しい音色に合わせて踊る。


おごそかなパレードだ。


私は聖剣リアムの柄の先端を撫でながら、パレードの進行方向とは逆に歩く。


パレードを抜け、街から外れると蝶に息を吹きかけた。


蝶はひらひらゆらゆらと舞いながら直進していく。


遠くでまだ賑やかなパレードの曲が流れている。


私は聖剣リアムの柄をぎゅっと握りしめた。


急な坂を登り、森の中へ入ると、遠くに建物が見えた。


あれだ、と直感的に感じた。蝶は道の突き当たりにある大きな城に着く。


まるで真っ白な雪が積もっているかのように純白で、重厚な門をもつ、鬱蒼とした森に隠されたような城だ。


そこで蝶は立ち止まりくるりと私の方を向く。


それが到着の合図のような気がした。


蝶は再び私の髪に止まり髪飾りへと姿を戻した。


すると前方からひそひそ声が聞こえてきた。


咄嗟に脇道に逸れ、木の陰に身を潜ませて耳をそば立てる。数名の男たちが門の前に立っているのが見えた。 


「おい、なんで開かないんだよ」


「鍵がねえからだ」


「鍵穴なんてどこにもねえぞ」


「おっかしいなあ」


「本当にここに財宝はあるんだろうな」


「間違いねえよ。酒場のジイさんに聞いたのさ」


「ここまで来たってのに、一体、どうして門は開かないんだ」


門が開かない?


私は木の陰から姿を現すと、男たちの前に出た。


確かめたかったからだ。本当に開かないのかを。


「お、おい!誰だ!てめえ!」


突然姿を現した私に驚いたのか、男たちは慌てた様子だった。


それを尻目に、鍵穴のない門に手を当てた。


開け。


そう念じて手に力を込める。


傷付け続けたその痣のようなものが光り輝く。


きっとこれが”鍵”だ。


誰にも開くことのできない門をリュカだけが開くことができた。


ギィと音を立てて開く門。開いて良かった。


そう思ったのも束の間、財宝に目が眩んでいる男たちが剣を抜いた。


本当はこんなところで争いたくはないのだけど。私は帽子を取った。


「お、女!?」


男たちの中の一人が声を上げる。


長い髪が風にはためいて揺れた。


その風に乗って私は剣を振るう。


次々と男たちを峰打ちで倒し、剣を鞘に収めた。


うめき声を背中で聞いた。


私はそんな男たちのことよりも城の中の方が気になっていた。


意を決して門の内側へと進む。私が中に入ると門は自動的に閉まった。


まるで私以外入れたくないと言っているようだ。


城の扉を開き、中へ進むと大きな壁掛け時計があり、その前に自分と同じくらいの歳の少女が倒れていた。

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