第61話 妹幼馴
瑠香と瑠香の母親に事情を説明して、なんとか誤解を解き、瑠香の家で夕食をご馳走になった後、穂波さんからの連絡が来るまで、瑠香の部屋でしばらく待機することになった。
適当に本を
「恭太次入る?」
「いや、俺泊まるかどうかわからないし、まだやめとく」
「そっか、わかった」
部屋の扉を開けて、瑠香は母親に『恭太入るかどうかわからないから、先入っていいって!』っと叫ぶ。
「わかったわー!」
微かに、扉の隙間から瑠香の母親の声が聞こえてた。それを聞いて、瑠香は部屋の扉を閉じだ。
「んで? 恭太をほったらかしにして、宅飲みを楽しんでいるクソ女はどこのおなティ?」
「……誰だよそれ?」
多分穂波さんの事を言っているのだろうけど、あだ名が未だに定まっていないのは、どうかと思う。
「まあ、あなティのことは置いておいて、恭太大丈夫? 最近全然連絡ないから心配してたんだよ?」
「あぁ……悪い。ちょっと母さんのところ帰ったりとか、いろいろしてて忙しかった」
「
「うん。元気にやってたよ」
「色んな意味で?」
「……元気に過ごしてるって意味で」
「な~んだ」
ちょっとつまらなさそうな表情をする瑠香。いや、色んな意味かもしれないけど、実の母親でそれを想像するのはちょっとやばいというか、考えたくない。
「ってことは、ほなてぃーと一緒じゃなかったんだ」
「いや、ずっと一緒だったぞ?」
「え? どういうこと? もしかして、ほなてぃー真知子さんのところまでついてきたの? どんだけ過保護」
「違うんだよ。説明すると長くなるんだけど……」
「いいよ暇だし、恭太の話聞きたいから聞いてあげる」
そう言われてしまったら、話すほかない。
俺は、夏休みに突然実家へ連れていかれたこと。それから、偶然にも母親と再会したこと。同棲を認められないと言われてたこと、また穂波さんと一緒に暮らせるようになったことを時系列ごとに話した。
「まあ……そんな感じで、また無事に穂波さんと一緒に暮らしているという感じです」
俺が話し終えると、瑠香はしばし
「って、寝てんじゃねーか!」
「……っは!? ごめん恭太。話長くて寝ちゃってた」
「話聞かせてって言ったの瑠香の方だよね!?」
「だって恭太の話、本当に長かったんだもん。まあでも、大体はわかった。最終的に、ほなてぃーのおっぱいが世界を救ったってことだね」
「全然あってないから!」
確かに穂波さんのおっぱいは世界を救える力を秘めているが、断じてそんなことは一言も言ってない!
「冗談だって! にしても、まさか真知子さんの再婚相手が、ほなてぃーの親戚だとは……これって、どこのエロゲー?」
「いや、エロゲーの世界設定なんて知らん」
俺やったことないし。
穂波さんは所有しているみたいだけど……
「いやぁ~エロゲーの世界だとよくある設定みたいだよ? これとか、主人公の母親の再婚相手が、幼馴染の父親で、結局主人公と幼馴染の方がヤっちゃうはなしだったし」
そう言いながら、おもむろにソファーの下から何かいかがわしげなパッケージの箱取り出した。
「……瑠香ちゃん。ナニソレ? 僕、そんな幼馴染に育てた記憶ないわよ?」
「ん? ほなてぃーから借りた」
「あの人の所有物だったか……。ってか、何貸し借りしてんの!?」
「え? いやだって、ほなてぃーに恭太を幼馴染ルートに入れこむなら、どう攻略したらいいですか? って相談したら『これで勉強しなさい』って言うから……」
「いや、まず前提として勉強する教材が間違ってるよね!?」
「そんなことなかったよ? 幼馴染の在り方とか結構わかったし。ってことで恭太、早速だけど、このゲームで学んだことを実践して……」
「するかアホ!」
そう言いながら、俺は瑠香が手に持っていたそのいかがわしいパッケージを没収する。
「あぁ……
俺の手に渡ったそれを、悲しい表情で見つめる瑠香。
「これは、俺から穂波さんにお返ししておきます」
そして、一切今後瑠香にこういった不健全なものの貸し借りをすることを禁止させないと、瑠香が腐っちゃったらどう責任取ってくれるんだあの人。
瑠香は取られたのがショックだったのか、項垂れて落ち込んでいる。
そんなにこれを取られたのがショックだったのか、ちょっとやりすぎたかな?
そんなことを心配していると、瑠香が顔を上げて俺を見た。その表情は、真剣そのものだ。
「恭太はさ、ほなてぃの事。どう思ってるの?」
「へっ? ど、どうって?」
唐突に尋ねられた質問に視線を逸らす。が、瑠香がそれを許さない。
「穂波先生の事、好きなの?」
「そ、それは……」
どう答えようか迷った。
以前、穂波さんとどちらが恭太に相応しいか勝負をした際は、穂波さんのおっぱいが最高だからという理由で、穂波さんとの生活を選んだ。
だが、今尋ねられているのはそういうことではなく、穂波さんを一人の女性として、俺がどう思っているのかということが聞きたのであろう。
俺は、生唾を一つ飲み込んでから、真っ直ぐな眼差しを瑠香に向けた。
「うん、好きだよ」
たった一言。でも、その一言に絶対的な自信と、信頼がある。その言葉に嘘はなかった。
瑠香は、真剣な瞳で俺を睨めつける。
だが、諦めたようにため息を吐いて口を開いた。
「そう……」
たったそれだけ、瑠香は息を吐くようにして答えて、視線を逸らしてしまう。
その瞳の先で、何を見ているのか、俺に知ることは出来ない。
すると、スマートフォンの画面がピカっと光る。
見ると、穂波さんから電話がかかってきていた。
「……出れば?」
「……おう、悪い」
瑠香に促されながら、俺は通話ボタンを押して、スマートフォンを耳元に傾けた。
「もしもし」
声を出すと、電話越しから返ってきたのは、意外な声だった。
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