夏休み編
第44話 禁断の場所
暦は8月、俺達高校生は夏休みに突入した。
俺は部活動にも入っていないし、夏休みは大和と遊んだり、瑠香の家に行って暇を持て余した。ここまで暇だと、短期のアルバイトでもしてお金を稼ぎたかったが、穂波さんに断固拒否されてしまった。よって今日も今日とて暇である。
部屋を見渡し見ても、整理整頓されていて、埃一つない磨かれた床とピカピカな家具。掃除しようにもする場所が見当たらない。
穂波さんは仕事で学校へ登校しており、瑠香や大和も別件で今日は遊べない。
スマホもゲームは入れているものの、フィルター制限がかかっているので、これ以上新しいアプリをダウンロードすることも出来ない。
一瞬、スマホに入っている穂波さんグラビア観賞会でもしようかと思ってしまった自分が情けない。
穂波さんとの同居生活が始まって早3か月。明らかに穂波さんのポンコツ具合に順応してしまっている自分がいる。
穂波さんが服をリビングで着替えていても気にしなくなってしまったし、下着やブラが部屋に放ってあっても、何事もなかったかのように掴んでそのまま洗濯籠へと入れる。
挙句の果てには、お小遣いをもらうために、その穂波さんのHカップおっぱいを毎週揉んでいる。なんなら、マッサージも絶賛継続中なので週2~3で穂波さんの胸を揉んでいる。
夏休み前なんて、瑠香や保奈美先生のマッサージなどを混ぜると、週5以上は誰かしらの女性の胸を触っていた。なに、その羨ましい生活、そんなふしだらな生活を送っているのはどこの誰かなぁ??
はい、ここの俺、富士見恭太です。
ホント、何してんだろう俺?
家をなくしてから、穂波さんのポンコツ生活を直そうと努めてきて、気が付けば俺が逆に侵食されている始末。ま、まあ、家事全般を怠ることはしてないし? それに付属して、ご褒美で胸触ってるだけと言いますか何と言いますか?
って、乳揉みがご褒美だと思ってしまっている時点で終わってるな俺。
いいよなぁ~世のサラリーマンは……仕事するだけでお金貰えるし、残業すればお金が入るし、なんなら年に1、2回はボーナスまで入ってくる。俺なんて、残業代も出ないし、ボーナスは女の身体っていう超役得……じゃなくて、超ブラック仕事ですよ。
はぁ……っとため息を吐いて、ふと視界の端にとある場所が目に入る。
整理整頓されている部屋で、明らかに異彩を放っているその場所。手を触れることが出来ない絶対領域。そう、穂波さんのプライベートスペースであるベッド。
俺も穂波さんに許されたときだけは乗っかっているが、掃除は穂波さんがいる時に許された範囲でしか行っていない。そのため、今日も散らかしっぱなしの雑誌や寝間着が放りっぱなしだ。
そんな絶対領域の端の方、ベッドの下から何かはみ出ているのが見えた。
「……なんだろう?」
ベッドの下は、穂波さんの私物がいくつものプラスチック箱の中に収納されているのだが、その一つの箱が開けっ放しで無造作に置かれており、そこから何かがはみ出ているらしい。
「……」
思わず俺は、周りをキョロキョロと見まわしてしまう。
だ、大丈夫だよね? 穂波さんはまだ帰ってこないし、俺を見ている者は誰もいない。
「こ、これは、ちょっとパーソナルスペースからはみ出しているのがいけないんだ。そう、だから、俺は掃除の一環だ」
そう自分に言い聞かせて、そのはみ出ている何かを掴んだ。
そして、ひょいっと取り上げると、ピンク色のひも状な様なものに、先端に繋がれたピンク色の卵型の固形物がぷらんぷらんと俺の前で揺れている。
俺は、咄嗟にそれをベッドの下に投げ捨てる。
……見てない、俺はピンクローターなんて見てないぞ!?
いきなり、核爆弾並みのものが発掘されたため、これ以上の詮索は危険だと判断した俺は、その他はみ出している物々を見ないようにして足で押し込んだ。
だが、その押し込んだものが、奥に置いてあった箱に当たり、その上に積み上げてあったものがドバドバと崩れ落ち、ベッドの下から飛び出してきてしまう。
ベッドの下からは、ケースのようなものが出てきた。その表紙には2次元の女性のあられもない姿。そのタイトルを見て、俺は驚愕する。
『お姉さん淫乱教師との甘々同棲生活~ほら、先生が手取り足取り教えてア・ゲ・ル♪~』
『ピチピチ巨乳先生との新婚生活~アナタのアソコもピッチピチ~』
「……」
しばしの無言。そして、俺はそのブツの元へしゃがみこむと、何事もなかったようにスッとベッドの下へと忍び込ませた。
知らない、エロゲーを所持している穂波さんなんて俺は知らないぞ!?
うん、そうだ。これは何髪間違えたに違いないな。
ってか、なんで生徒との禁断同棲ものばっかりなんだよ!!!
大丈夫だよね? 穂波さんがエロゲーみたいな展開を期待して、俺を保護したわけじゃないよね? 俺、穂波さんの事信じてるから!
だが、よくよく今までの穂波さんの行動や言動を思い返してみると、現実では思いつかないような意味不明なことを豪語していたりしたが、もしかしてこれの影響を受けていたりするのだろうか?
聞き出すことも出来ないので、真実は闇の中だ。
◇
日は既に傾き始め、オレンジ色の空が広がり始めた夕方。
夕食の準備をしながら、俺は穂波さんが帰ってくるのを待っていた。
ベッドの件については、聞き出すのが怖いので、黙っておくことにした。
真相を聞いたところで、ポンコツ穂波さんの事だ、ろくな答えが返ってこないことは目に見えている。
そんなことを思っていると、玄関の扉がガチャりと開かれて、エロゲーマスターこと、菅沢穂波エロポンコツ先生が帰宅してきた。
「おかえりなさい、穂波さん」
俺が平静を装って挨拶すると、穂波さんは俺の挨拶に目もくれず、焦った様子でタンスの中をガサゴソと漁りだす。
そんなに急いだ様子で何しているのだろうと、キッチンから覗いていると、穂波さんが声を掛けてきた。
「恭太、準備して」
「はい? なんの?」
いきなり準備しろと言われても、なんのことか分からず困惑していると、穂波さんがクルっとこちらへ向き直って言い放つ!
「今から、一緒に私の実家へ帰るわよ!」
「えっ……」
今なんて言った、実家? 何それ、何かの実? 美味しいの?
って、そんなわけないよな。実家ってことはそうだ、穂波さんのご両親が住んでいる家のことで……って……
「えぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?」
俺はこの夏一番の大声を出していた。
まさかの突然言い放たれた菅沢家自宅訪問。これは、不吉な予感しかない。
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