第43話 ご褒美の……

 保奈美先生マッサージ論破事件や、期末試験など色々な行事が重なりつつ、無事に全日程を終え、そこから自宅で珍しく穂波さんが仕事を持ち帰ってきたかと思えば、テストの採点を手伝わされたりと、色々ありながらも季節は梅雨が明けて、夏本番へと近づいていた。


 じめっとした暑さに、容赦ない日差しが俺たちに降り注ぎ、歩くだけで拭き出てくるような日が続く毎日だが、今日も穂波さんは通常運転。ベッドに寝っ転がりながら、ダラーンとしている。しいて言うなら、服装がさらに地肌をきわどい所まで晒す服装になっていることか。


 あとは汗。お小遣いの諭吉は、穂波伸の谷間に挟まれるたびに、蒸れ汁を吸収して、俺がモミモミして貰う頃にはしわくちゃになっていた。あとは、秘伝(豊胸)マッサージも、穂波さんの代謝がいいのか、俺の腕にベットリと張り付くほど発汗して、そのHカップが汗でてかてかに照り光するほどに汗を掻くようになっていた。

 その姿が、また大人のエロさを醸し出していて、俺にとってはご褒美以外の何でもないのだが……


 そんなことを思いながら、今日もリビングの掃除をして終えた時、ふと穂波さんに声を掛けられた。


「そうだ恭太、ちょっとこっちに来て」


 穂波さんに手招きされ、俺は穂波さんのベッドの前まで移動する。

 穂波さんは起き上がって、ベッドの下に置いてあったバッグの中から何かを取り出した。


「はい、これ!」


 それは、とある大手電機メーカーの紙袋だった。


「何ですかこれ?」

「いいから開けてみな!」


 そう促されて、俺は紙袋の中から中身を取り出した。

 そこから現れたのは、一台のスマートフォンだった。


「えっ……これって……」

「言ったじゃない、マッサージ80点以上取れたら、スマートフォン買ってあげるって」

「あ、ありがとうございます……!」


 まさか、本当に買ってくれるとは思っていなかったので感動した。久しくさわってなかったスマートフォンの感触。思わず手が震えてしまい、握りしめている手から誤ってスマートフォンを落としてしまうのではないかと心配になる。



「本当にありがとうございます! 大切に使わせていただきます!」


 そう言って、早速俺は、電源ボタンを押してスマートフォンを起動させる。

 初期画面が映り、早速アプリをインストールしようとしたのだが……


 画面表示されたのは、『親御さんからの許可を得てからダウンロードしてください』の注意書き。


「穂波さん……これは?」


 俺が目を細めて穂波さんへ尋ねると、穂波さんは思い出したように口を開いた。


「あぁ……言い忘れてた。恭太がエッチなサイトとか見ないように規制? みたいなのしておいたから」

「まさかのフィルター制限!?」


 なんということだ……これじゃあ、本当にただの連絡手段としてしか使えないじゃないか。

 俺が落胆してると、穂波さんはこほんと一つ咳払いをした。


「ま、まあ。恭太も男の子だっていうのは十分承知しているつもりだわ。だから、フォルダにいいものをプレゼントしといてあげたから」

「フォルダ?」


 俺はメイン画面へと戻り、アルバムを開く。すると、そこには大量の写真が入っていた。

 しかも、水着姿で四つん這いの体勢で胸を強調するような写真や、洗面所の鏡越しで手ぶらしている画像、さらには布一枚で覆われただけの、健康的なお尻の画像など、めっちゃおっぱいとかお尻とか太ももとかきわどい写真ばかりが入っていた。


 顔が映っていない写真ばかりだなぁっとスクロールした瞬間。その本人の顔写真がお披露目になった。それは、妖艶な目つきでねっとりとしたカメラ目線でセクシーポーズととっている穂波さんだった。


「……これは?」


 俺が顔を上げると、なぜか穂波さんは身体をもじもじとさせていた。心なしか、頬も赤いように見える。


「わ、私も頑張ったんだから、たくさん使ってね?♡」


 恥じらうように言う穂波さん。

 ってことはこの画像の人全部……


「ちょ、身体張りすぎ! ってか、使いませんから!」


 いつの間にこんなきわどい写真撮ったんだ!?

 俺はスクロールして写真を一通り確認していく。あっ、このあたりは誘うような視線でむちっとした身体つきに谷間がいいかんじに……って何してんだ! 使う気満々じゃねーか!


「と、とにかく! 後で全部削除しときますから!」

「えぇぇぇぇ!! そんなぁ!?」



 ガーンと項垂れる穂波さん。でも穂波さん嘘です、多分消さない。あとで使えそうなやつだけフォルダ内に残して、後はクラウドにバックアップ取っておこう。


「むぅ……えぃ!」


 すると、突然穂波さんが俺の手からスマートフォンを没収してしまう。


「あっ、ちょっと穂波さん返して!」


 俺が身を乗り出そうとすると、穂波さんに手を掴まれ、そのままベッドの方へと引きずり込まれた。

 そして、ふにゅっと穂波さんの胸に頬が密着すると、穂波さんはそのままスマホをこちらに向けて、カシャリと写真を撮った。


「ちょっと!?」


 そして、得も言われぬ速さでスチャスチャスマートフォンを操作すると、ご満悦な笑みでスマホを返してきた。

 すると、ホーム画面の背景画が、先ほどとった写真に変更されている。

 しかも、加工がされており、『ほなみ』『恭太』っと可愛い丸文字で書かれていた。


「これでよしっと!」

「いや!? 全然よくないからね!?」

「ちなみに、そのホーム画像変えてないか、毎日チェックするから」

「あんたは浮気を疑う嫁か!」

「いいじゃない! あれだけ体張ってオカズあげたんだから。少しは誠意を見せなさい!」

「誠意もくそもないんですけどね……」


 もちろん、画像は内緒でたっぷりと使わせてもらう予定ですが……


 色々と制約はあるが、ひとまずスマートフォンを手に入れることに成功した。

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