第28話 幼馴染の作戦は、意としてない所で上手くいく
「はぁ……」
物寂しさ残るお風呂場で、私は湯船に浸かりながら、思わず落胆のため息を漏らしていた。
作戦は失敗に終わった。
これで、恭太が多少意識してくれればいいのだが。あの恭太のことだ、風呂から上がれば、いつもの幼馴染に戻っているのだろう。
「はぁ……一番身近にいる人が、一番攻略が難しいものね」
思わずそんな独り言を呟いてしまう。
私もなんか今日は疲れちゃったし、もういいや。この後は普通に過ごそう。
そう決心して、私は湯船から出て、風呂場を後にした。
◇
お風呂から上がってきた瑠香は、何事もなかったようにいつもの瑠香に戻っていた。
俺はそんな様子を、瑠香の部屋のいつもの端のスペースで体育座りして眺めていた。
くそっ……瑠香は気にしてないというのに、どうして俺はこんなに意識してしまってるんだ!!
落ち着け俺、瑠香は幼馴染、瑠香は幼馴染、幼馴染で俺の婚約者で、柔らかそうな胸が見事に育った……って、違う違う!!!
俺の頭は、正常な思考能力を完全に失い、悪循環に陥っていた。一度落ち着くために首を横にぶんぶんと振って、煩悩を払う。
だが、正常な機能を失った脳はいうことをきかず、自然に視線は瑠香のふくよかな胸に向かってしまう。
当の瑠香は、俺の視線を気にする様子もなく、つまらなそうな顔でスマホをいじっている。
にしても、なんで今日に限ってグレーのタンクトップなんだよ……赤いパーカーを羽織っているとはいえ、ズボンも黒のショートパンツ……色々と目のやり場に困るじゃないか……これも瑠香の作戦か?
ホントに困る。胸を見たらいいのか? それとも、白くてまぶしい太ももを見ればいいのか? はたまたスラっとした長い首元の鎖骨を見ればいいのか分からない!!
って、なんでいやらしい所しか見ようとしてないんだ俺は!
ダメだダメだ、俺の頭が可笑しい。これは、今日はもう大人しく布団に入って気を紛らわそう、そしてそのまま眠りに着こう。
「あの……恭太、近いんだけど……」
ふと瑠香が困ったような声が聞こえ、我に返って顔を上げると、なぜか瑠香が目の前にいた。
というか、俺が自分でも気づかぬうちに、ベッドの上に乗っかり、瑠香の目の前まで移動して、瑠香のタンクトップ越しから浮き出るふくよかな胸をまじまじと観察してしまっていた。いや、ホント何やってんの俺!?
「あっ、いやっ、違うこれはそのあれだ!!」
言い訳しようと、手をアワアワしていると、その腕を瑠香にバシッと掴まれる。
瑠香は、はぁっとため息を吐いてから、ニコっと優しい微笑みを浮かべる。
「心配しなくても別にいいわよ。恭太が揉みたいなら、私の胸、いつでもどこでも揉ませてあげるわよ」
頬を赤く染め、恥じらいながら言ってくる瑠香に対して、俺は食い気味に尋ねた。
「……いいのか?」
「うん、いいよ。こっちおいで」
もう身体が言うことをきかなかった。俺は瑠香に誘われるようにして、壁際にもたれかかる。追うように、瑠香が俺の足の間に身体を入れ、身体を俺に預けてくる。
普段なら……普段なら瑠香の寝間着姿なんて気にもしないのに……なぜだろう、凄いドキドキバクバク心臓が鳴っている。
おかしい、今まで全く瑠香の着替え姿でさえ気にならなかったのに、今は瑠香の寝間着姿さえ艶めかしく感じてしまう。
俺が瑠香から目を離せなくなってしまっている間に、シュルっとパーカーを脱ぎ捨てて、タンクトップ一枚になる。上から眺める、そのぷるんとした大きな膨らみがそそられる。
「そ、それじゃあ、どうぞ」
「お、おう……」
瑠香は恥ずかしそうにしながらも、腕を下ろして無防備な体制になる。その瞬間、俺の胸の鼓動が更にバクバクと高鳴る。
落ち着け! 瑠香の寝間着姿なんてしょっちゅう見てるだろうが! 沈まれ!!!
俺は首を横にブンブンと降って煩悩を振り払おうとする。
「どうしたの?」
その様子を見ていた瑠香が不思議そうに上目づかいで、首を傾げて見つめてくる。
「あっ、いや……なんでもない」
「そう」
「……」
「……」
そして謎の沈黙が生まれる。何か言わなくてはと思い、俺は咄嗟に言葉を発した。
「その……もうちょっとこっちきてくれるか?」
「うん、わかった」
俺が適当に口にした言葉通り、瑠香がさらにこちらへ身体を預けて密着してくる。しまったぁ! 何言ってるんだ俺!
今その状態で来られたらいろいろと困る!
瑠香のお風呂上がりのいい香りと、瑠香の温かい体温と、柔らかいか身体を全身で感じてしまい、おかしくなる。
「ちょっと待って!」
俺は手で瑠香を制止する。
「どうしたの?」
キョトンとして首を傾げる瑠香。そんな何でもない仕草さえ、可愛いと思えてしまうくらいに、俺は今異常な状態だった。
「や、やっぱり、今回は正面からでもいいか?」
「うん、いいけど……」
瑠香は不思議な様子ではあったが、スっと身体を離してくれた。
ふぅ……これでようやく何とかなると思った俺が間違いでした。
そのままクスっと俺の正面を向いて、頬帆を染めながら見つめてくる瑠香。
前回はブラウス越しだったが、今回は思いっきりタンクトップ越し、谷間が溢れんばかりに見えていることからも考えて、つまりはノーブラであって……瑠香のスベスベの胸をリアルに感じることになって……
あぁぁぁぁぁぁ!!!!
なんで俺はこんなに無駄に意識しちゃってるんだ!?
おかしい、今日おかしいぞ!?
瑠香は居心地が悪いのか身をよじって落ち着かない様子だ。
そして、なぜか今日に限って鼻が利いているのか分からないが、瑠香のお風呂上がりの香りがまだ漂ってくる。
思わずクンクンと匂いを嗅いでしまう。
すると、瑠香が恥ずかしそうにさらに身をよじった。
「ご、ごめん……さっきまた汗かいたから、もしかしたら汗臭い?」
「いやっ、いい匂いだから大丈夫」
「そっか……よかった」
いや、何が良かったんだ?
何にも良くない!
俺は今、非常に瑠香の胸を欲望のまま揉みしだきたくなってしまっている。
ダメだダメだ!
瑠香はただの幼馴染だ。そんな邪な気持ちで揉んでしまったら、折角瑠香の気持ちを踏みにじってしまう。
「恭太、触らないの?」
何もしてこない俺に疑問を抱いたのか、上目づかいで覗き込んでくる。
今そうやって上目遣いで見られるとまずい……
「いやっ、触るようん……」
俺は一度深く深呼吸してから、意を決して腕を瑠香の身体に伸ばして、そのたわわな胸に触れた。
ふよん……と、胸が俺の手の中で揺れた瞬間。俺はなにかが吹っ切れてしまった。
その柔らかい乳房に憑りつかれるように、俺は思いっきり揉みまくった。
「やっ……こらぁ……急に激しくっ……あぁっ……」
すぐに瑠香から嬌声な声が聞こえ始め、その声が段々と甘くなっていく。
そして、今日は瑠香のいい匂いがより一層増している気がする。
俺の鼻腔をくすぐり、さらに頭をぽわっととろけさせる。
「瑠香……」
自然と興奮が高まり、俺の息もあらぶってしまう。
「あぁ……恭太、息がぁ……」
瑠香がぷるぷると身体を震わせて悶えている。どうやら俺の息が荒くなったのを見て、少しうれしそうな様子だ。だが、そのなんとも可愛らしい仕草が余計に俺の心を揺さぶった。さらに力を入れて瑠香の胸を揉みまくる。
「んん……あぁぁっ!!!」
瑠香は、今日一番の嬌声な声を出した。
「あっ……あぁ~んんっ……!」
我に返った時には、どれほどの時間瑠香の胸を揉みしだいていたのであろう。
瑠香は完全に身体が蕩けきっており、息を荒げて甘い吐息を吐きながら脱力していた。頬も赤く染まり、完全に茹で上がったように上気した肌。まさに出来上がっていた。
俺はふと我に返り、その柔らかいおっぱいをもう一揉みしてから手を離した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
お互いから漏れる吐息が辺りを包む。
そして、息を整えるようにして、ふぅっと瑠香が大きく息を吐いた。
「もう……ばかっ……」
「ごっ、ごめん」
「べ、別に怒ってないし……」
瑠香は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
何とも言えない甘酸っぱい空気が辺りを覆う。
「そ、そろそろ寝よっか……」
「そ、そうね……」
こうして、どちらからとでもなく、俺たちは眠る準備を始めた。
癒し対決勝負初日。幼馴染瑠香との同居生活は、色々と意識させられる羽目になりつつも、違う意味で癒しを貰う一日となった。
明日は後攻の穂波さん。さすがに今日みたいなことは起こらないだろうけど、穂波さんは穂波さんで、何をしでかすか分からないので、恐怖しかない。
◇
暗闇の部屋で私は一人胸がキュンっとなっていた。
恭太が私の胸を獣のように揉みしだいてくれたぁぁぁぁぁ!!!!
これは、お風呂での効果があったってことだよね?
間違いなく、私のことを女の子として意識してくれてたよね!?
恭太が触ってくれていた感触が残っているその胸を自分で触る。
ぽわぁっと幸せな気持ちがぶわっとあふれ出てくる。
「くぅぅぅぅ!!!」
私は、一人布団の中で声を押し殺すようにして悶絶する。
これは、いい線行ったんじゃない?
幼馴染ルート完結!
「勝ったな……」
思わずニヤリと口角が上がり、そんなことを呟いてしまう。
とにもかくにも、これで私のターンは終了。明日からは菅沢穂波のターンに入る。
これは、結果発表が楽しみね!
そんなウキウキ気分で、私は眠りについた。
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