第26話 策士幼馴染
私は今、恭太が作ってくれた夕食を、恭太と一緒にテーブルに向かい合うように座って、美味しくいただいているところだった。
ふっふっふ……聖なる宴、いやっ! 性なる宴はここからが本番……
先手必勝。恭太の心を鷲掴み。なんなら、そのまま私の胸もお尻も身体すべて鷲掴みにしてもらうには、これからが真の勝負!
ズバリ! 『女の子として意識してもらおう大作戦!』
ここまでいつもと変わらない日常を送ることによって、何の変わり映えのない私を演じ続けてきた。今、恭太は完全に油断しきっている。その隙を狙う。
恐らく恭太は、私のことを女の子としてではなく、幼馴染というある一種の別のカテゴリーに埋めることで、私の女性的意識を逸らそうとしている節がある。そのレッテルを外すくらい私が女であるということを証明にするには、今までよりも凄い色仕掛けが必要になる。
つまり、作戦は、こうだ!
夕食を食べ終わった後、お礼として皿洗いをかってでる。
その間、恭太を先にお風呂へと促して、恭太がお風呂に入ってタイミングを見計い、私もお風呂に侵入。あられもない私の姿を見た恭太は、そのまま欲情して抑えられなくなり……そのまま……
キャァァァァ!!!!
恭太ってば大胆なんだから!!!
◇
「……」
夕食中、幼馴染が頬を押さえて首をブンブンと振りながら何やら悶絶して壊れました。俺の幼馴染がこんな壊れているわけがない。
「る、瑠香? どうした?」
「へっ!?」
瑠香に声を掛けると、瑠香は我に返ったように、はっとした表情で俺を見つめてきた。
「いやっ、何でもない! あはは……」
瑠香は手をブンブンと振ってそう言い張る。そして、誤魔化すようにして俺の作った料理を口に含んで、話題を変えてきた。
「こ、この恭太が作ってくれた生姜焼き美味しいよ! やっぱり人に作ってもらうご飯は最高だね!」
我ながら幼馴染として何というクズ発言。まあ、瑠香に料理スキルが無いことはもともと分かり切っていることだが……ここまで潔いと、愚痴の一つや二つ零しておきたくなる。
「お前ももう少し自炊してくれると、俺としても親としてもうれしいんだけどな……」
「いいの、私は出来ないことはしない主義だから!」
「俺は将来のお前が心配だよ」
本当に心配。将来の旦那は大層苦労をするだろう。
「大丈夫! 将来は恭太に養ってもらう前提だから!」
「決定事項かよ!」
ってか忘れてたけど、瑠香の中では俺が将来の旦那になっている設定だったんだ。婚約者かどうかはこの際置いておいて、瑠香も相当思考的にポンコツであることは間違いない。
「それに、恭太は言わなくてもやってくれちゃうし!」
そうにっこりと微笑みながら、美味しそうに俺が作った生姜焼きを平らげる瑠香。
実際のところ、瑠香の世話を有無を言わずにやってしまっているので、ぐうの音も出ない。
はぁ……俺の幼馴染はこんなにポンコツなわけがない。
◇
食事を終えて、食器を流しにまとめて置いたところで、瑠香が俺を手で制止する。
「片づけは私がやるよ」
「……どういう風の吹き回しだ?」
嵐でも来るんじゃないか?
「私だって、恭太に任せっきりじゃないってこと! ほら、片付けは私に任せて、先にお風呂入っちゃって」
背中を押され、半ば強制的にキッチンから追い出されてしまう。
「まあ、瑠香がそういうなら先に入るわ……」
「うん! 入って入って!」
いきなり瑠香がやる気を出したことに疑問を抱きつつも、俺は瑠香に見送られて着替えを取りに瑠香の部屋へと向かった。
◇
私は恭太がキッチンと出て行くのを見送って、そそくさと皿洗いに取り掛かる。
「よしっ!」
思わず握りこぶしを作って、ガッツポーズを決めてしまう。
ひとまずこれで、準備は整った。
後は、ちゃちゃっと皿洗いを終わらせて入浴中の恭太の元へ突撃すれば完璧!
私は皿洗いを進めながら、頭の中でこの後の展開をシュミレートする。
脱衣所で、シュルシュルっと服も下着も全部脱ぎ捨てて裸になる私。
その先には、湯船に浸かっている恭太が……
そして、タオルで前を少し隠しながら恭太の入っているお風呂へ突入!
「恭太!!」
「うわっ……な、何してんだよ瑠香!」
「何って、一緒にお風呂に入ろうと思って! 昔も入ってたじゃん!」
「ば、馬鹿! 今と昔じゃ状況が違うだろ」
私の身体に視線が釘付けになっている恭太は、顔を真っ赤にしている。
「ふふっ、どうしたの恭太? そんなに幼馴染の身体、まじまじと見つめちゃって? 顔真っ赤だよ?」
「べっ、別に見つめてなんか……」
顔を逸らす恭太にじわりじわりと近づいていき、じっとりとした視線で見つめる私。そして、誘惑するように艶めかしい視線でゆっくりと前を隠していたタオルを外していき……
「私の身体見ると、興奮する?」
「そ、そんなわけ……」
「なら、ちゃんと見て? ほら?」
完全にタオルを外した私は、両手で真っ赤に染めている恭太の両頬を掴み、そのまま私の身体の方へ視線を強制的に向けさせ、不敵な笑みを浮かべてで言い放つ。
「恭太が触りたいなら……触ってもいいんだよ?」
そしてついに、我慢できなくなった恭太がそのまま……
「グヘッ……ヘッヘッヘッヘッヘ……」
待っててね、恭太……私の女としての魅力に取りつかせてあげるから……!
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