第19話 本番
ついに迎えた本番実行日当日。いつものように穂波さんは、ベッドの上で雑誌を読みながら、お菓子をぱりぽり食べてくつろいでいた。
「ほなえも~ん! お金が無くて死んじゃうよ~」
「……ほなえもんは四次元ポケットなど持っていません。まあ、マネーポケットならありますけど」
ッチ、この人もう何言っても適当な反応しかしなくなってきやがった。
僅かな望みで、許してくれるかと思ったが、穂波さんにその意思はないようだ。
仕方がない。こうなったら、もうこちらから一気に行くしかないな!
そう覚悟を決めて、俺は穂波さんのベッドの前まで近づき、寝っ転がっている穂波さんに視線を落として言い放った。
「穂波さん、おっぱい触らせてください」
「う~ん……へっ!?」
いきなり言われたのが予想外だったのか、穂波さんは読んでいた雑誌から目を離して、驚いた表情で俺を見上げる。
しばしの沈黙の後、気恥ずかしくなって俺は視線を外してしまう。すると、穂波さんは、勝ち誇ったように含みのある笑みを浮かべた。
「へ、へぇ~。ついに私の胸触りたくなっちゃったんだぁ~……」
そうからかってくる穂波さんに対して、俺はまたもや無駄口を叩いてしまう。
「ち、違いますから。断じて穂波さんの胸が触りたいわけではなくて、お小遣い、お金を得るためです! 死活問題なだけですから!」
だが、それが今の穂波さんにとっては逆効果になってしまうということは、言い終えてからさほど時間はかからなかった。
しまった!っと思った時には時既に遅し。
穂波さんは、しゅんっと落ち込んだ様子で肩を落としながら言った。
「そっかぁ。私って恭太にとってそんなに魅力ない女性だったんだね……」
いかん、このままでは一生お小遣い貰えないまま餓死することになる!
俺は咄嗟にその場に座り込んで、頭を下げて土下座しながら、必死に言い訳めいた言葉を適当にまくしたてる。
「わ、わぁあわぁわぁ嘘です! 嘘! ほんとはめっちゃ毎日気になってしょうがないくらい、穂波さんの胸のことばかり考えてました、ごめんなさい!! だから、穂波さんのおっぱい触らせて下さい!」
もうこうなったら、恥を忍んででも、どうにかして穂波さんの胸を触って、お小遣いをもらうしかない。
渾身の土下座を繰り出したのが功を奏したのか、穂波さんは、ふぅ~んと意味ありげに呟いた。
「そっかぁ、へぇ~。そんなに触りたかったんだぁ~」
「は、はい……それはもう……」
う、うぜぇぇぇぇ~
本当ならぶん殴ってやりたいところだが、ここは我慢する。お金には代えられないからね。プライスレス。
「そう……なら、こっちに来なさい」
ようやく満足したのか、穂波さんはトントンとベッドを手で叩いて俺を促した。
「し、失礼します……」
今まで穂波さんの家の中で、唯一俺が足を踏み入れたことない絶対領域へ初めてお邪魔した。
ベッドは、ふかふかとしていて結構心地がいい。可能性はゼロに近いが、もし初日に穂波さんと一緒に寝ることにして、このベッドの快感を味わってしまっていたら、俺もこのベッドの虜になってしまっていたかもしれない。そう思えるほどには、ふかふかで心地よいベッドの感触だ。
俺がベッドの上に乗っかって、穂波さんと向かい合う形になると、穂波さんは恥ずかしそうに頬を染めながら身をよじる。
「そ、それじゃあ、どうぞ……」
穂波さんは手を下に降ろして、無抵抗の状態になる。
そんなに恥ずかしそうに頬を染められて上目づかいで見られると、こっちまで緊張してきちゃうんですけど……
だが思い出すんだ俺。練習通り、ちょっとだけキュっと触ればいいんだ。
キュっと!
そう、あの時みたいに思いっきり後ろから鷲掴みにして…… って、そっちじゃなくて!
瑠香のせいで余計なことを思い出してしまい、思わず穂波さんの溢れんばかりの胸を凝視してしまう。
「そのぉ……そんなに熱い視線で見られると恥ずかしいと言いますか……」
「あっ……ごめんなさい」
咄嗟に目を逸らす。だが、ついつい視線は戻ってしまい……
「穂波さんの胸って、やっぱり大きいですよね」
そんな正直な感想が口から漏れてしまう。
「なっ、何まじまじと観察してるのよ馬鹿!! それとも何? 私を視姦して、貶めていじめるのが恭太の趣味!?」
「そんな性癖は俺にはありません」
はぁ……本当にこの人は、どこからそんなよくわからん発想にいたるのだろうか?
逆に、ちょっと妙な雰囲気だなとか思っちゃった自分が馬鹿みたいだ。
とっとと触って終わらせよう。
「じゃあ、とりあえず触りますから」
そう言って、俺が腕を伸ばして、そのふくよかな胸へ触れようとした時だった。
「待って!」
穂波さんは腕で胸を抱えるようにして俺の魔性から逃れた。
なんだよという無言の圧力で穂波さんを睨みつけると、穂波さんはいとご不満と言ったように頬を膨らませる。
「もっとムードというものがあるでしょ!」
「はぁ?」
何言ってんだこのポンコツ? という目で睨みつける。
いや、ホント何言ってんのこのポンコツ? ほんとマジで何言ってんのこのポンコツ?
マジ寄りのマジでホント何言ってんのこのポンコツ?
むしろムードをぶち壊したのはあなたの方ですよね?
うわぁ~この人めんどくせぇ~……!
ってかムードって何それ美味しいの? まあ確かに、穂波さんのヌード姿は美味しそうだけど……じゃなくて!
ムード作りなんて俺は知らんぞ? 何、穂波さんをムラムラさせればいいの?
俺がワカリマセンといったような視線を送っていると、穂波さんは何かを察したような表情を浮かべて、少し悲しい目で俺を見つめてくる。
「ごめんなさい……そうよね、恭太はまだ女の子の胸さえ触ったことのないチェリー君だものね。ムードを作れなんて言った私がバカだったわ」
そういう言い方で言われると、余計に腹が立つな。自分だって処女のくせに……っとは口が裂けても言えないが……
「仕方ないなぁ~。それなら、穂波お姉さんが、基礎からじっくりと、恭太に胸の触り方について、手取り足どり教えてあげましょう~」
そう言って、四つん這いになり、さらに大きさが強調されたその胸を俺に見せつけるようにして、ねっとりとした上目づかいで見つめてくる。
『ほらぁ~私の胸。大きいでしょ? もう視線が釘付けじゃない。頭の中で、触りたい!! って、叫んでるんじゃないの?』
とか思ってそうだなぁ……
だが残念だったな穂波さん。俺はもう既に、胸の触り方は心得ているんだよ!
穂波さんが隙を見せている瞬間は今しかない。そう思った俺は、ここで一気に強硬手段へと出た。
ばっと一気に身体を動かして、強姦の如く穂波さんへと襲い掛かるような体勢を取り、その胸目めがけて一直線に手を伸ばす。
「きゃ! ちょ、恭太くん!?」
急に暴れ出した俺から逃げるように、穂波さんは逃げよう身体を起き上がらせるが、その瞬間、穂波さんの片方の腕を掴んで、逃げ場を作らせない。
そして、もう一方の腕を伸ばして、ポフッとノーマークになっていた穂波さんの左胸をスマートに一揉みしてみせた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、顔を真っ赤に染め上げて、悲鳴とも絶叫ともいえぬ声を出す穂波さん。
「はい、終わり」
「ちょ、終わりじゃないわよ! 何すんの!?」
穂波さんは手で触られた胸を隠しながら、鬼の形相で睨みつけてきた。
「何って、胸をちょっと触っただけですよ」
「そう言うことじゃないでしょ!? 一歩間違えれば犯罪よこれ!?」
「胸を触れって言ったのはそっちでしょうが、その時点でお互いの了承は得ているはずです」
「……こうやって世のセクハラって蔓延るのね」
「何か言いましたか? まあいいや、ちゃんと胸は触ったんでお金ください」
そう言って、俺は手を差し出した。
「なっ……くぅぅぅ……」
穂波さんは屈辱的だったのか、歯を食いしばって何か言葉をかみ殺していたが、はぁ~っとものすんごい厭味ったらしくため息を吐くと、ソファーの端に置いてあったお財布に手を伸ばして札を取り出した。
「はい」
穂波さんが財布から出してた札を受け取ると、そこには見事なまでの野口さん1枚!っておい。
「高校生舐めんなよ」
半ば恐喝気味に穂波さんに詰め寄ると、穂波さんは対抗するようにプィっと視線を逸らした。
「そんな無理やりにしか胸を触れない悪い子にはそれしかあげられませーん! あっ、ちなみにその中に今週の夕食の食材代も入ってるから」
「はぁ!?」
それ、ほとんど夕食代で消える計算になるんですけど!?
俺が驚愕の表情で穂波さんを視線を向けていると、穂波さんは怒ったような表情で睨みつけてくる。
「だって、私初めてだったのよ……それなのに、こんな仕打ちある?」
「それはだって、穂波さんが処……」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! それ以上は言わないでぇぇぇ!!!」
慌てたように穂波さんは俺をドンっと腕で押した。俺はバランスを崩しそのままベッドから転げ落ちた。
「おわっ!」
ドンっという鈍い音と共に背中から転落する。
「いってぇ……」
俺が起き上がって背中をさすっていると、穂波さんは興奮したように頬を染めながらズビシっと俺を指さして宣言する。
「いい? 恭太からムードを作って、私のおっぱいを揉まない限り、今後一切お小遣い追加はないから!」
そう高々と宣言されて、新たな穂波さんからの素晴らしいご提案……じゃなくて、非情なまでの通告を受けてしまった。こうして、俺、富士見恭太による『菅沢穂波のおっぱいモミモミ大作戦第二弾』が早くも幕を開けることになった。
一言言っていいか。だから、これなんてエロゲ?
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