第17話 練習

 穂波さんからとてもムフフで魅力的なっ……じゃなくて、非常に無情なまでのお小遣い条件が提示されてから、約1週間が経過した。

 俺は未だに、穂波さんのおっぱいを触ることが出来ずにいた。

 そして、思い悩んだ末に、今こうして放課後の瑠香の部屋の隅っこで、俺は陰鬱オーラを全開に醸し出し、体育座りをして縮こまっていた。


「どったの恭太? なんかいつにもまして絶望したような感じだけど……」

「瑠香……暇だ、暇すぎるんだ」

「何言ってんの?」


 瑠香の家にある漫画はもう読み飽きたし、お金がないので放課後にゲームセンタに行ったり、ファミレスでドリンクバーを頼んで友達を喋ったりすることも出来ない。

 俺には今、娯楽という娯楽がない状況なのだ。

 もちろん理由は一つ、お小遣いがもらえないからお金がないのである。くそっ……なぜ俺は銀行のキャッシュカードを穂波さんに渡してしまったんだ! 一生の不覚。


 あれから、なんとか穂波さんの機嫌を取ろうとして、何度かチャレンジはしてみた。


「穂波さん、その格好めっちゃセクシーですね! めっちゃぐっと来ます! いいですね!」

「……いやっ、ただの部屋着なんだけど。どうしたの急に?」


 折角おだてたのに、冷たい視線を送ってくる始末。


「いやぁ……穂波さんが美人過ぎて、俺困っちゃうなぁ~。一緒にいるだけで、ドキドキが止まらないなぁ~」

「そう、なら仕方ないわね」


 すると、穂波さんはベッドに置いてあった、ブランド物の財布を手に取って……

 そのまま、財布を自分の胸の谷間の間にすっと挟んでしまう。


「そんなに困っちゃうなら、私のおっぱい揉んでもいいのよ?」

「ぐっ……感づかれていたか」

「はぁ……そんなまどろっこしいことしないで、とっとと触りなさいよね。減るもんじゃないんだし」


 いや! なんといいますかそのぉ……触るタイミングを逃したと言いますか、こっちも見栄張っちゃった以上引き下がれないと言いますか……


 どうやら、穂波さんも同じようなことを思っているらしく、お互いに引くに引き下がれない膠着状態になってしまっていた。お互いにそんな状態が続き、戦いは長期戦の模様を呈していたのだが。俺がついに、敗北寸前まで精神的に追い詰められる状態となっていた。


 こうなったら、もう穂波さんの胸を触るしかないのか!?

 いやっ、でも俺胸なんて触ったことないしなぁ……


 ドキドキして触ったら、穂波さんが高らかに俺を鼻で笑ってあしらう姿が凄い目に浮かぶ。

 それは嫌だ。どうにかしてスマートに胸を触る方法はないか?


 そこで、俺はふと、あることを閃いた。そうだ、その手があるじゃないか!

 どうしてここまで気が付かなかったのだろうか?

 俺は、顔を上げて羨望の眼差しで瑠香を見つめた。


「瑠香」

「ん、何?」


 ベッドで寝っ転がり、脚をパタパタしながらスマホをいじっている瑠香に対して、俺はこう口にした。


「胸触らせてくれないか?」

「……」

「え、まさかのスルー!?」

「あったりまえじゃない、急に真剣な声で言ってきたから何かと思えば……あきれた」

「なっ、今の俺にとっては死活問題なんだぞ!?」

「あ~はいはい、わかったから、さっさと触れば?」

「だから、俺にとっては人生がかかってると言って……って、今なんつった?」

「だから、好きに触れば、私の胸。ってか、触るだけじゃなくて揉んでいいし」


 瑠香はダルそうにしながらも起き上がり、俺の方へ身体を向けてきた。


「え!? いいの!?」


 まさかの返答に、俺が驚いて瑠香を見てしまう。


「なんで頼んだ恭太が驚いてるのよ……別に、断る筋合いが無いでしょ」

「いやっ、ありまくりだろ」


 俺たち、別に付き合ってるわけでもないんだぞ!?


「他の男に触られるくらいなら、恭太に沢山揉まれた方がまし」


 そう言って、制服のベストをスルスルっと脱いで、ブラウス姿になる瑠香。なるほど……今日は赤かぁ~。って、感心してる場合じゃなくて!


 俺は、一つ咳ばらいをしてから、確認の意を込めて尋ねる。


「ち、ちなみになんだが、今回は俺が胸を揉む練習ということで頼む。それでいいか?」

「別に練習じゃなくてもいいし。むしろ本番だと思ってくれれば」

「いやいや、本番はないだろ」

「おっぱい揉みたいのに?」

「あぁ」


 だって、これは穂波さんの胸をスマートに揉むための練習であって、別にやましい気持ちはこれっぽっちもないのだから。


「はぁ……ま、いいや。練習でも本番でもどっちでもいい。準備するからちょっと待ってて」


 瑠香は諦めたようにため息を吐いてから、おもむろにぷちぷちとブラウスのボタンを外しだした。


「ちょっと待て!」


 そこで咄嗟に、俺は手を出して瑠香を制止する。


「ん? あ、もしかして制服の上から最初はじっくり揉みたい派?」

「いやそうじゃないけど! もういい、そういうことにしておいてくれ」

「ん?」

「まあいいや、始めよう……」


 一言言っていいか。


 なんのエロゲーこれ?

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