寄り道……

第23話 大蛇丸シティ

 大蛇丸の中に案内される。麻由美さんは大蛇丸を完全に私物化していた。いくら大きいからって、お腹の中に噴水があったり、家が何軒か建ち並び、娯楽施設があったり研究施設があったりと、完全に大蛇丸シティへと変貌していた。驚いたことに、訓練施設などもあり、俺達がこの中に来ることが決まってから麻由美さんなりに考えて作ったのだろう。


「一応説明しておくけど、私のラボラトリーにはあんまり近付かないこと、何が起きても保証はできないからね。あと、それぞれの家に通信機を作っておいたわ。基本的にはこれを使って所在を確認すればいいと思う。あと……」


 大蛇丸シティをある程度説明されたが、これを一日で作るとかかなりすごいな。


「質問いいですか? イズノメに限界はあるんですか?」


「まだ分からないわね、限界まで使ったことはないし。ただ言えるのは、私の想像のものが作れるだけで、それを超えるものは作れないわ」


「人間の限界以上は作れないね、きっと」


「科学者だからね、どうしても現実的な物しか顕現できないの」


「そっか、それでもかなりすごいんだけどね」


「あの、あたしもいいですか?」


 相沢が名乗り出る。


「歌を歌える施設なんか……作れないですか?」


「すぐ作れるわよー2分待ってて」


 少し離れたところの空き地のような場所に、ライブハウスが顕現される。


「じゃあ、あそこ。佳凛ちゃん自由に使っていいから。一応、防音機能とレコーディングスタジオ、ダンスフロアなども地下に作ってあるわ」


「わぁ! ありがとう!!」


「待って、地下って何!? 大蛇丸の腹の中なんだけど!?」


「あ、私、知らない内に空間も作れるようになっていたのよ。すごくない?」


「いや、さっきの話なんだったの? 人間の力超えてるでしょ。万物の法則を軽く凌駕しちゃっているでしょうが!」


「うるさいわね、できるんだからしょうがないじゃない。その、できるできない線引きが未だによくわからないのよ」


「あのぅ、佳凛ちゃん」


「なぁに? あかね」


「私も偶に使わせてもらってもいいかな」


「もちろんよ」


 そういえばこいつら、いつだったか物凄く綺麗な舞と、歌声を披露していたな。あれはすごい元気になった。きっとそういうことがやりたいんだろう。こいつらは俺と違って若いし、夢を追いかけていた時にこんなことになってしまったんだろうから、せめて、その夢は応援してあげないとな。そのためには、やはり世界を守って、残った人間を助けて、世界復興をしていかないといけないな……。大変だけど、今、俺がやるべきことな気がする。


「麻由美さん、もしかして空間いじれるなら、大蛇丸のお腹、どんだけでも広くもできるってことなのかな?」


「できるわ。すごいでしょ。確かに大蛇丸の中なんだけど場所的には別空間と考えてくれてほうが分かりやすいかしら?」


「いや、マジでスゲーよその能力。応用利き過ぎ! もしかしたら大蛇丸シティすげー人口になるかもしれないな!」


「あぁ……なるほどね! まぁあるかもしれないわね、で、世界が戻ったら過疎化して大蛇丸ともどもさようならって結末が見えるわ」


「大蛇丸がさようならってのは別にいいんじゃないか?」


「そうね、平和になったら必要性なんてないわね」


「悲しいこと言わないでくれ……」


大蛇丸は腹の中の会話が聞き取れるようだ。うわ、下手なこと言えなぇな。


「麻由美さん、大蛇丸の何でも聞けちゃうやつ、どうにかできないの?」


「できないわ、仕方ないけど」


「まぁいいや、大蛇丸、じゃあ夜の間は頼んだぞ」


「フン! お主に言われなくとも大丈夫じゃ」


 麻由美さんには、あんなものが欲しい、こんなものが欲しいとリクエストを飛ばすと、大体のものが手に入る。みんな大蛇丸シティを満喫して過ごすことが出来そうだった。


 俺は、発掘道具をニーナに作ってもらった。ニーナの物づくりの力は本当に職人レベルだ。一回、麻由美さんに出してもらったこともあったんだが、ハンマーの違いとか、タガネの形などをうまく伝えることが出来なくて全然ちゃんとしたものが出せなかったのである。


 ニーナは俺の言葉と、用途を理解し一番使いやすい感じに改良した道具を作ってくれた。これが物づくりに生きる職人のすごいところだ。使い方を聞いただけで、頭の中でそれがどんな形なのか想像できてしまうんだからすごい。


 こうして、俺は発掘作業に勤しむことになった。



 ☆



 村を出てから、数日経った時のことである。


「人間を発見した。モトハル殿、どうする?」


 睡眠中だった俺に、大蛇丸が問う。


「うーん、気付かれてはいないんだろ? 今日はこの場に留まって、明日行ってみるよ。お前は身を潜めて朝が来るのを待っててくれ」


「わかった。しかし、モトハル殿、神の気配はまだ先なんじゃがどういうことなんだろうか?」


「それを含めて、明日調査すればいいよ」


「そうか、そうだな。わかった、今日はここで身を潜めよう」


 素直に納得し、今日はここで身を潜めることになった。大蛇丸が寝床を決めるのにどんな衝撃があろうが別空間だから揺れも何もないのが非常に便利である。


 翌日、俺は通信機でとりあえず全員に声を掛け、周辺を探索することにする。とりあえず、付いてきたのは、ハジメとあかね、あとニーナだ。よく考えたら、女だらけだな、ハーレムとか言われたら言い逃れができないかも。


 まぁ実際はハーレムなんてもんはなく、俺は昼間には外に出て発掘作業、夜は訓練場で少し訓練したり筋トレしたりして風呂入って寝る。とっても規則正しい生活を送っているのだった。こないだ見つけた魚の化石……、あれすごかったなぁ! あんな生物見たことないぞ! また歴史的発見をしてしまったかもしれない! 誰も称える人間がいない世界じゃなければ!! 仕方ないから部屋に飾っとこ。


「ニーナ、無理して来なくてもよかったんだぞ? いきなり攻撃とかもあるんだからな?」


「分かってますよ! でも、せっかく外に出たんですから世界を歩きたいじゃないですか。それに……守ってくれるんですよね?」


「そりゃぁまぁ守るけどさ……」


「ていうか、相沢ってなんでこういう時来ないの?」


「ご主人様、佳凛は、怖がり。で、怖がり隠している節が見受けられる」


「ほう」


「ハジメちゃん、本人が気にしていることあんまり言わない方がいいよ」


「そうかもしれない、佳凛、ごめん」


「いないところで謝っても意味ないだろ、どうでもいいけど」


 俺達はバカ話をしながら、茂みを掻き分けて進んで行った。少し歩いていくと岩場があり、湯気が上がっている。


「こ、これは!」


「も、もしかして!」


「「「温泉!!!!」」」


 湯気が上がっている方へ俺達は走っていく、この世界に自然な 温泉があるなんて思わなかった! 麻由美さんが作ったお風呂もいいけど、水は自分で調達するしかなかったし、結構大変なこともあって、こういう露天風呂みたいな温泉はすごく嬉しい!


 近くまで行くと湯気でまだよく見えないが、人影も見える。こりゃあ温泉も入れて、生存者も見つけてと一石二鳥感が半端ないぜ! ひゃっほーう!!


 こうして、俺達の旅はこんなところで何とも不思議な温泉回へと突入していくのであった。

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