第22話 新たな仲間
みんなの元に戻ると、そこにはニーナちゃんの両親が訪れていた。
「あ、どうも新木元治といいます」
「ニーナの父のロイです。こっちは妻のカルネです」
横にいた女性は驚くほどきれいで清楚な女性だった。子供を持つ女性とは思えないほど若く、そしてニーナちゃんには似ていなかった。
「初めまして、ニーナの母です。ニーナがお世話になっているようで感謝いたしますわ」
……少し期待したのだが、声は高くなかった。少しっていうか結構期待していたんだけど。でも、喋り方はニーナちゃんと違ってかなり礼儀正しい感じがする。
「あの……ニーナちゃんの件、話は聞いてますか?」
「はい、ニーナを連れていきたいということですよね? ニーナ自身も自分の道を見つけたようであなた方に付いて行きたいと思っているようですので親としては、彼女の気持ちを尊重してあげたいのですが……」
「まぁ気持ちはそうでしょうけどね……、じじ……ハギトさんの話も聞いているのでしょう?」
「はい、危険な旅になると……」
「そう、今しがた手に入れた情報なんですが……」
そこで俺はボアを拷問して手に入れた情報をみんなに伝える。って今思ったけどボアのやつ演技をしていたという可能性もあるな。ていうか、ほぼ演技だろう。自分が助かるためにレイプされるような奴だからな。情報はたぶん本当だと思うが……。
「なるほど……それはかなり……危険な状態ということですね」
「そうですね、俺達、というか俺に追手は向けられるらしいですからね。しかしまぁ、全員ねじ伏せるつもりですが」
「相手の能力が分からない以上、絶対に勝てるという保証はないわね。今回の件もあるし、相手の能力は私らの能力を凌駕しているようにも見えるし」
相沢が自身の体験談とでもいうかのように分析していた。しかし、確かにそうだ。この鉱石だが、これはアバストクリクスではないようにも感じる。全体は赤く染まり、禍々しい気配を放っている。
「麻由美さん、一応これ調べてもらえるかな?」
「その方がよさそうね、私達全員この鉱石の力に一度負けているもの。誰かに使えるような代物とは思えないしね」
「相沢の言っていることにも一理ある。なぁイザナギ、俺達はお前らの力をちゃんと引き出せているのか?」
『……使いこなしているかどうかといった点では、使いこなしてはいるだろうな。しかし、イザナミの能力、奴の能力は神の力を最大限に引き出す類のものだ』
「お前!? イザナミ知っているのか!?」
『恐らくだが……我の妻だ……』
「なななななななななな……!!!!!!!」
「「「「なにいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」」」」
☆
イザナギに妻がいた。……まぁこれはいいとする。で、その妻が、俺を狙っている。これは、俺を狙っているんじゃなくてイザナギを狙っているといっても過言ではない。
『しかし、イザナミは子を産んだ際に怪我をし、その怪我が原因で死んでしまった。また、我はその子を恨み、殺してしまった』
「わかった、それ以上は言わなくていい。だが、動機が判明したな。イザナミが狙っているのはイザナギ本人だ。しかも、イザナギが残っているこの世界を壊すという動機にもつながる気がする」
「そうね、そしてイザナミの能力、神の力を最大限に引き出す……でしたっけ? そんなことが出来ればこの能力差も説明がつく」
「敵が単体で来てもやられる恐れがある。できる限り単独行動も少なくしたほうが懸命だな」
「それはご主人様とずっとくっついてていいってこと?」
「違うよ、ハジメちゃん」
「ぶぅ。あかねには聞いてないよ」
「生意気になったねぇハジメちゃん」
さすがのあかねも少し苛立ったのか顔は笑顔だが、拳がプルプル震えている。
「でも実際どうするの? いくら敵が危ないからといって隠れてばかりじゃ結局負けと変わらないと思うけど……」
「一応、俺の考えだがいいか?」
全員がこちらに注目する。大した案じゃないから少し恐縮する。
「基本的に移動中はオロチマルの中で過ごす。能力で負けているなら数を増やすべきだと思う。だから、味方になれる適合者を探す」
「うん」
「……これだけです」
「え? これだけ? その先じゃないの?」
「いや、あんまり縛るのは逆に士気に関わると思うからこのぐらいで後は個人に任せるくらいがいいと思う」
「うん、そうかもね」
麻由美さんが賛同する。
「大蛇丸の中っていうのは、閉ざされた閉鎖空間。いくら私の能力があるからといって閉ざされた場所にいる人間っていうのは精神が病んでしまうものよ。移動中以外は、好きにできる時間にした方がいいのかもしれないわ。でも、移動はできる限り19時以降にしてもらいたいわ」
「え、夜移動なの?」
相沢が疑問を投げる。俺以外は何故?って顔をしている。
「今まで全然気にしてなかったけど、大蛇丸って夜行性?」
「そうよ」
「やっぱそうか、じゃあ麻由美さんの案で決定。大蛇丸も大事な戦力だ。必要な時に動けないのが一番痛い」
「そういうこと、それじゃあ大体の流れは決まったわね。神の気配を頼りに大蛇丸に任せて夜に移動。仲間を集めて戦力増強。あとは個人的にでも強くなればいいわ」
「そうだな、コンビネーションとかも決めておければいいけど、まだまだ個人能力にも不安がある。今は一人一人が精進するしかないな」
不安そうな顔をしていたり、不服そうにしていたり、無表情だったり、各々思うところはあるだろう。しかし、生き残るために俺達は強くならないといけない……
「……まとまりましたか?」
ロイさんが沈黙している隙を見計らって話しかけてくる。そこで俺は話が脱線しまくっていることを悟った。
「あぁ! ごめんなさい、ロイさん! ニーナちゃんのことでしたね! どうですか? やっぱり厳しいですか?」
「いえ、ニーナはもう大人です。それでも不安ではありますが、何もしなくても生きていられなくなるのであれば、ニーナに世界を救う手助けをさせてあげたいと思っております。あとはニーナ、お前はどうする?」
「あたしの答えは最初から決まってるよ。付いて行く。世界がどうとかは分からないけど、ここにいたら気付けないことも、きっとこの人達となら見つけられる気がするんだ!」
「だ、そうですよ。おじいちゃんも許してあげたら?」
「むむぅ……しかしなぁ、やっぱり心配じゃの……」
まだ煮え切らないジジイの前にニーナちゃんは歩み寄る。
「おじいちゃん……」
「ニーナ……」
歩み寄ったニーナちゃんの胸をがっしり掴むジジイ。
「どこ触ってんじゃゴラァァァァァァァァァァ!!!!」
目にも止まらぬ速さのパンチを繰り出すニーナちゃん、世紀末のヒーローの技みたいだ。
「ご! 誤解じゃ!! 偶々!! ほんと偶然!!」
「あんな思いっきりニギニギしといて偶然はねぇぞ、このスケベジジイ!!」
「心配なのはほんと! ほんとだから行かないで~」
「さぁ、新木さん、私は行くと決めました。親の許可も取ったし、もういいでしょ!」
「そ、そうだな」
「ニーナ……」
「寄るなジジイ……お前はもう死んでいる(人として)」
これまた世紀末ヒーローみたいな言葉を吐く。俺の中でニーナちゃんの愛称は世紀末になった。
「まぁ、ジジイも適合者だし来てくれればと思ったんだけど、お前の能力お前しか守れないもんな、すげー必要ないよ」
「お主、そんな自然に傷つくこと言わないでおくれ……」
「じゃあ、パパ! ママ! 行ってきます! 帰ってきたらママの特製フルーツパンケーキ食べるから用意しておいてね!!」
「ははは! ニーナ! 頑張ってきなさい」
こうして、俺達は新たな仲間を迎え、旅立つのだった。
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