第20話 ニーナちゃん
いくら待ってもニーナちゃんがやってこない……麻由美さんこっちに来ること忘れて自分の研究始めちゃったんじゃないかな?
「モトハルくん、少し落ち着いたら? まだ麻由美さん探しに行ってから5分も経ってないよ?」
「ご主人様ソワソワ、可愛い」
「子供ね」
いやね、君たちわかってないね、自分の趣味が再開できるかもしれないっていう状況なんだよ? そんなのソワソワするに決まってるじゃん。
「ダメだ、待ちきれない! 俺も大蛇丸の中に行ってくるわ!」
「あぁ! 待って! それじゃあ私も行くから!」
「私は遠慮する。お父さん口臭いから」
「あたしも爬虫類の口の中は行きたくないな」
「じゃああかね早く行こう!」
あかねの手を取ってダッシュする。大蛇丸は体がでかいからいつも人里からは少し離れたところに身を潜める。今までだってあの姿で見つからずにいたのだから潜伏能力は相当すごいんだろう。
大蛇丸の気配が濃い方に向かっていくと、でかい穴を発見した。
「もしかして……大蛇丸の巣?」
正直、驚いた。こんなでかい穴開けといてよく今までバレなかったな。完全に何かいるじゃん。誰だって気付くじゃん。
「おおーい! 大蛇丸いるか!?」
大声で穴に向かって叫ぶ。
「モモモモモモトハル殿!! 助けて!! あぁーーーー」
……なんか悶絶しているんだけど。そんなドス黒い声で悶絶されると笑いが込み上げてくるから止めてほしいんだけど。
「あかね、行くか?」
「……うん、ちょっと興味ある」
怖いもの見たさだな。俺達は大穴に入っていった。
穴の中は当然だが何も目視できないくらい暗くて、そして寒かった。
「あかね、ちょっと舞ってくれよ、何にも見えない」
「じゃあ、明るめの舞をするね」
そう言って、風がフワフワする感じがするのだが、まぁ見えないのでたぶん舞っているんだろうな程度で待つ。
ボッ。
辺りが急に明るくなった。あかねの頭が燃えている。
「それ、熱くないの?」
「? 私は大丈夫だよ?」
「まぁ自分の技で自滅する奴はいないか……」
奥に進んで行くとでかい蛇の尻尾があった。
「大蛇丸だよね?」
「あいつしかいないだろう」
偶にビクンッ! と脈打つ蛇の尻尾にかなりの違和感を感じながら蛇の上に飛び乗って歩いていく、顔付近まで来たときに麻由美さんの姿が見つけた。
「あらぁ……すごいわねぇ! こんなに完成度が高いなんて……」
「あぁ!! 麻由美殿……もうやめ……あぁ!!」
「ウフフ、まぁだだめよ? どのくらい我慢強いのか知りたいじゃない?」
「あぁ! わしはもうだめじゃあ……違うの所望したいぞぉ……」
……何やってんだこいつら。麻由美さんが蝋燭を持って大蛇丸に垂らしている。SMプレイでもしているんだろうか……
「麻由美さん」
「あら、元治いいところに来たわね」
「俺は最悪なときに来てしまったと思っていますよ」
「? なんで? この世界ではアッと驚く発明の実験中よ? おもしろくない?」
「何がアッと驚く発見ですか!? もう少し恥を知ってください! 下品です!!」
あかねが怒っている。まぁ怒って当然だと思うけど……
「あかねちゃん、あなた、この世界で蝋って作れると思う?」
「作れないんですか?」
「作れるわ。普通の蝋ならね。でも蝋の抽出には動物性か、植物性の油が必要なんだけど、この蝋燭はどちらにも属していないの」
「どういうことですか? そもそも油を使っていないとか……?」
「さすが元治、この蝋は可燃性のものを含んでいない、それなのにこうやって燃えて、しかも消費するように溶けている」
「それってすごいことなんですか?」
「すごいというか、有り得ないというか……つまり、麻由美さんが持っているあれは、鉄でそれに火がついているようなもの……かな」
「そうね、しかも酸化ではなく溶けているということが重要」
「まったく新しい物質ということですね」
「そう、そしてこの物質を作り出したのがこの子! ニーナちゃんよ!」
麻由美さんの横にずっといた謎の少女。この子がニーナちゃんか! 緑色の髪は三つ編みに左右に括られていて、目が見えないくらい分厚い大きな眼鏡をしている。作業服のようなつなぎを着ていて、この村の雰囲気からはどこか異彩を放つ格好をしている。
「初めまして皆さん! 村長の孫娘のニーナです!」
声たっか!! スーパーソプラノボイスじゃん! なんとなく癒し系に見えてきたよ声だけで!
「あなたがニーナちゃん? よろしく、元治です」
「私はあかねです。よろしくお願いします」
「よろしくです!」
なんか今までになく元気な子だなぁ、なんか調子狂わせられる。けど子供は元気な方がいいからね! でもこの子何歳なんだろう。見た目的には小学生くらいなんだけどな。ここの世界は年齢よくわかんないからなぁ……聞かないようにしよう。
「あのぉ、それでみなさん何か用なんですか?」
「あれ? 麻由美さんから聞いていない?」
「はい、麻由美さんが来たときにあの出来上がった物質を自慢したら奪われて、それからずっとオロチンに垂らして遊んでいます」
……麻由美さん、ほんと使えないっすねあんた。
「実はね、君にも俺達と一緒に来てくれないかと誘いに来たんだよ」
「私はここで麻由美さんの助手してたいです」
「大蛇丸だって移動するからそれじゃ俺達と一緒ってことだけど」
「え? もう行っちゃうんですか?」
「あ~あ~、元治喋っちゃったのぉ~?」
麻由美さんが遊び終わったのかこっちに歩いてきた。
「あたしも助手が欲しかったから、移動するまでここで軟禁してニーナが気付いた時にはもぅ帰れないくらい遠くにいて強制連行っていうのが私の思い描いていた作戦だったのに~」
ほんと人道にも外れていますね麻由美さん。
「えぇー! 麻由美さんそれ酷くないですか~!」
「さすがの俺も酷いと思うぞ」
「でもあなた達だってニーナに来てもらいたいでしょ?」
「まぁ俺は発掘作業ができるものを作ってもらうつもりだったしなぁ……」
「あ、あの、ニーナちゃん、ちょっとこっちに来てもらえます?」
あかねがニーナの手を引いて、隅っこに連れていく。
「あ、……て……れま……す……」
「……い、あ……じゅ……れ……す」
「そ……」
二人が戻ってきた。
「ニーナちゃん! 私達と一緒に来るそうです!!」
「「「ええええええええええええええええええええええっ!!!!」」」
いつの間にか話が決まっていた。てか、ニーナちゃんも驚いているんだけど。
「ま、まぁ、麻由美さんの手伝いもまだしていたいし、ずっとこの村にいるのもやっぱりつまらないと思うし……うーん、うん、少し早い気がしますが、この機会にこの村を出ることにしますか!」
ニーナちゃんもこの閉鎖空間からは出たいみたいだな。でも村を出たところでこの大蛇丸の腹から出ない限りは閉鎖空間は変わらないけどな。俺的には必要な発掘作業道具を作ってくれれば何も問題はない。
「じゃあ、よろしくな! 村長に一言言っておかないとなぁ」
「言うと結構話こじれると思いますよ?」
「でもなぁ、あれ? 両親はいないの?」
「両親は私が5歳の時に……」
「あ、悪いこと聞いちまったか……」
「ぎっくり腰で寝たきりになって以来、今は元気に農業を営んでいます」
ズザァァァァー!
こいつは、なかなかの手練れだな……。
「まぁまだ村ではやることがあるから、そのついでに一回大蛇丸から出て一緒に村長のとこ来てくれる?」
「わかりましたー!」
そうして新たな仲間、錬金術師のニーナを勧誘したのだった。
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