第18話 ドSブスはドSに人生を終わらせる
「さすがのおねぇさんも我慢の限界……あなたが来ないなら私から行っちゃおうかしら」
「イザナギ、全力で俺を守れ」
『プリズンで守っている彼女らはどうする?』
「解いていい、多分もう大丈夫」
『?』
イザナギはプリズンを解きすべて俺のもとに集まる。
「私の魅了からはいくら神の力があっても逃れられないわよ……」
「どうだろうな?」
俺は不敵に笑って見せる。辺りはオレンジ色の空が世界を照らし始めていた。海はそろそろ満潮を迎えるころだろう。臭いも人間に分かるくらい近くなってきている。
ゆっくり、ドSブスがこっちに向かって歩いてくる。
「さぁ、ここで一つ問題」
「なぁに?」
「強烈な香りを感じた時、人間の脳は個人のフィルターを通してそれが良い香りなのか、嫌悪する臭いなのかを判断し、感情をだします」
「何の話?」
「一度いい香りを嗅がされた人間の脳は、別の強烈な臭いがするものを続けて嗅がされた場合、一体どうなるのでしょうか?」
ドSブスが俺の目の前に来て勝ち誇った顔をして言う。
「さぁ、あなたも私の虜になりなさい……」
「正解は……」
突如、一陣の風が横を通り抜けた。その瞬間、ドSブスが空中へ吹き飛ぶ。
「がッ……! がはっ!!」
空へ飛んで行ったドSブスの顔は面白いほど歪んでいた。
追撃でさらに三段階の大爆発を起こす。
「脳がリセットされて元のいい香りも嫌悪してしまうのさ」
「やっとちゃんと動けるぅ!」
「……たくっ、手間取らせるんじゃねぇよ……」
「悪かったわね、もう大丈夫よ」
「汚い花火だねぇー!」
「あかねに同意します」
どこかの負けやすいヒーローみたいな言葉を発し、空を見上げる。
花火の先の崖に、麻由美さんが怒り狂った笑顔でガッツポーズをとっている。女って恐ろしいな。
花火が散った所で大蛇丸がドSブスを締め上げ拘束する。
「モトハル、この海域の海はちょっと殺人的に臭かった。お主わしを殺そうとしたな?」
「よく生きていたな。この地形はプランクトンにとって絶好の場所だったんだろう。真っ赤な海なんてカッコいいじゃねぇか」
「そんなことは聞いておらん!」
「いいじゃねぇか、生きていたんだから。それにその海水がなかったら全滅。ここでゲームオーバーだったぞ?」
「そうね、でも本当にひどい臭い」
つまり、こいつの能力は恐らく香りなんだ。ここの海がプランクトンの生息地じゃなかったら完全に奥の手を使うしかなかった。魅了というスキルは大体二つに分類される。自分の姿を見せ幻惑にかける方法と、別条件のものを発動し脳に直接語り掛ける幻惑だ。
まぁ簡単に言えば、視覚と嗅覚ということだ。因みにこいつは嗅覚に語り掛けるタイプだ。結果的にそうだったということだが……。嗅覚タイプは狭い空間でこそ効果を発揮するんだがな……こいつは自分の能力の特性をちゃんと理解していなかったんだろう。
「とりあえずこいつどうするのだ?」
「起きる前に鉱石を探しておけ、見つからなきゃ、全裸にして一生抜け出せんように気に括り付けて放置しておく」
「うわッ! 残酷ぅ~!」
「相変わらずそういうところはすごい考えが浮かぶのね」
「ご主人様、私の裸、見たい?」
「サディストを苛めるとは、モトハルは鬼畜の極みね、でもそれじゃちょっと私の気が収まらないから、全裸で気に括り付けた後は、性欲旺盛なサルをこの辺に解き放ちましょう」
「うわっ、ここら辺のサル、まだ前の善女竜王の力の影響があるから人間と同じくらいの大きさだぞ? ガチの獣姦になってまう……」
「ご主人様、たぶんこれ。これから気配が漂っている」
「見つかったか、よかった。念のため、全裸にはしておけよ」
「こんなババァより、ハジメの裸の方が見たい?」
「お前は脱ぎたいのか?」
首を左右にフリフリする。こんなの教えてんの麻由美さんしかいないだろ。
「いいか、ハジメ。麻由美さんに言われたことはとりあえず全部反対の意味にとらえるんだ」
「?」
何を言っているのか理解できず、ハジメは首を傾げるポーズをとる。
「ちょっと難しかったか、つまり……そうだな。麻由美さんが、これを食べろ……とか……あと、俺を落としたいならこんな言葉を言いなさい……とか言われたら、食べなかったり、その言葉は絶対に使わないようにしたり……なんか説明も難しいな……」
「?」
今度は反対に首を傾げる。
「まぁ、麻由美さんの言うことは真似しなくていいんだよってことだな!」
「ご主人様、麻由美嫌い?」
「んー」
……何気に痛いところを突くな。嫌いなわけじゃないんだけど、裏がありそうで完全には信頼していないというのが本音か……
「嫌いじゃないよ、あとその鉱石、俺にちょっと預けておいて」
「はい」
一度、村に戻り、態勢を整えてから次に向かうことがその場で決まり、尋問は村の地下牢かどこか逃げられないところでやろうということになった。
「ハジメ、そういえばお前ラチカみたいに瞬間移動とかできないの?」
「神通力は個人の資質が大きくて、覚える力も個人で全然違う、あたしには移動系のスキルは覚えられないです」
「そっか、じゃあ俺も神通力覚えようかなぁ」
「イザナギ様と、一緒にいられるんなら覚えてもいいと思います。でも前にも誰かが言ったような気がしますが、すでに神に認められている方が神通力を覚えても、あんまり変わった力は覚えられないです」
「確か、聞いたような気がするな、そもそも神の力を持っているのに神通力では同じような力の劣化版みたいなものができるようになるだけだってな」
「そうです。まったくの無意味ではありませんが、鉱石を取られない限り、使うことがない能力になってしまいますね、まぁ気配は感じられるようになるかもしれませんが……」
微妙なところだな。気配だってイザナギがいれば大した問題にはならない。そもそも、能力が絶対防御の俺の鉱石が奪われた時点で俺達は敗北だ。まぁ奪ったやつが使えるかは別として。
大蛇丸の上でどうでもいい会話をしていると村に着いた。
「今更なんだけど、ここの村の名前って何ていうの?」
門番をしていたやつにちょっと聞いてみた。
「コロバヌ村です」
「あ、そ」
正直どうでもよかったのに聞いてしまった類のことだったので、聞いたところでこんな感じになってしまったことを悔いる。
そういえば、あの頼みたいことがあった。
「なぁ、この村でモノづくりに詳しい人っているか?」
「それならニーナという者がおります。先代の技術をよく受け継いで若いながらも今ではこの村の必要機材なんかはニーナが殆ど作っております」
「その子、引き抜いたら、怒る?」
「怒ります」
「だよねぇ」
まぁいいや、ハギトのジジイにまた交渉してみよう。
「おい、戻ったぞ」
「きゃあああぁぁぁぁ」
「よいではないかぁ、あはははははは」
「やめてぇえぇぇぇぇ」
「あっはぁ♪ つぅーかまぁーえたぁー♪」
しかし、捕まえたのはまさかの相沢のおっぱいだった。
相沢の顔は汚物でも見るかのような苦悶に満ちた顔をして言い放った。
「万死に値する……」
「奥義ツクヨミ、双剣死面楚歌!」
奥義出た!? 殺す気だ! 俺にはいちいちもっと優しく見たいなこと言うくせにおっぱい触られたら奥義出して殺してもいいのか!?
「相沢……その辺にしてあげたら?」
「いや、私はこいつの息の根が止まるまで切り刻み続けるぞ」
「たぶん死なない。気付いていると思うが、こいつ俺と似ている気がする」
「似ているわけがない!」
「モトハルくんの方がカッコいいよ!」
「ご主人様、こいつは本当に万死に値するです」
「いや、そうだとしても殺せないよ、うまく隠しているが、こいつも鉱石の適合者だ」
「おや、誰かと思えば、元治殿一行ではないか!」
切り刻まれた体の口の部分が浮き上がり俺達を確認するような動きを見せる。かなり気持ち悪い。
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