第15話 神通力の習得
と、いうことで、俺達の目の前にはボコボコにされた100歳近いジジイが簀巻き状態でいるわけだが……
さて、どうするか……一応今までの話で一番気になったのは……やっぱり魔法か。
「ジジイ、聞きたいことがある」
「男の話は聞かん」
ゴスッ! ゴスゴスッ!!
「やめっ! やめてっ!! 言うから! 言いますから!!」
「お前、ハギトって言ったな。今の立場分かっているか?」
「お……お前は年寄りを労わる気持ちはないんか……」
「元治くん……少しかわいそうだよ?」
「ご主人様、外道……素敵」
「あんた、ほんっと腐ったやつね……」
「お前らこいつに感情移入してんじゃねぇよ。一番腐っているのはこいつだ」
「にょほ♪」
「麻由美さん、あんた魔法に興味津々なの、そのソワソワ感でわかるから」
「気付いたぁ? ねぇおじいちゃん、おじいちゃんがちゃんと私たちに魔法のこと教えてくれたら、あたしのおっぱい触らせてあげてもいいんだけどぉ♪」
「はほほほほーーー! それはほんとかっ! それはほんとかぁぁぁぁ!!」
「ええ、だから早く話してくれないかしら」
「わかったぞい!」
麻由美さん、エロジジイの扱い方がめちゃくちゃうまいな。今度からこういうやつは麻由美さんにお願いするか。
「魔法とはすなわち英知。多くの知識を得たものが会得することができる神の副産物じゃ」
「神の副産物?」
「そう、その昔、神は我ら人間に怒りを覚えこの世界に閉じ込めたという。しかし、人間の中には神に近しき者がいたのじゃ。そやつらは、知識を極め、少しでも神になれるように努力した。それを見ていた神はその者たちに新たな力を与えたのじゃ」
「それが魔法?」
「うむ。しかし、その当時は魔法とは言わなかったがの、神に通ずる力、【神通力】とよんだのじゃ」
「そうじゃな……有名な神通力使いとしては安倍晴明など想像してもらえればわかるかの?」
「安倍晴明だと……! 超昔の人じゃん!」
「左様。だが、人間は神通力よりも機械の発展に力を注いでしまった。結果、この世界は人間自身で滅ぼしてしまったのじゃ、世界の破滅に神は悲しみにくれておるわい」
まぁ、伝承みたいなものか。だが伝承も事実に準えて伝えられているものもある。完全には否定できないのも事実だ。
「じゃあ二つ目、その神通力は私達も使えるようになる?」
「……」
急に黙る。さっきまでのおちゃらけた表情はいつの間にか引っ込んでいた。
「……五分五分じゃな」
「え? できるようになるの?」
「そもそもお前らはすでに神に気に入られておる。それ以上に力を求めると神と離反してしまう恐れがある」
「離反する?」
「神通力とは神に通ずる力、すなわち神を穿つ力にもなり得るのだ。神持ちが神通力を使うとなると、そばにいる神が一番影響を受ける」
「……なるほど、人間が神を穿つ力として発展させてしまった、ということか?」
「まぁわしの聞いた話では今の話までが限界だがな。神通力を持った人間が神に成り替わろうと思うことだってあるとは思っている。欲深いからのう人間は」
「イザナギ、そんな人間見たことある?」
『むむっ、うーむ、いたようないなかったような……何分、はるか昔のことだからな、覚えてはおらん』
「まぁそうか」
「待て、お主の神はそこまで流暢に言葉が話せるのか?」
「イザナギに限ってだけどな」
「当り前じゃ! 普通の神はわしら人間の世界にはほとんど干渉できん! せいぜい意思を伝えることぐらいじゃ!」
「でさぁ、五分五分って言ってたけど……」
「そんなことはどうでもいいぞ! お前らは神通力を使わない方がいいってことじゃ!」
「じゃあ、ハジメはどう?」
「むむ! この女子は……神通力使えるのう……はぁーびっくりした。お前の神は恐らく相当高い位に位置する神だということじゃな……その神に気入られるとは……先ほどまでの無礼を詫びよう」
急にジジイの言葉使いがかっこよくなった。ところでここまで聞いて新たな疑問が生まれた。
「ラチカって何で神通力使えんの?」
「私は、神に近しい存在ということですね、まぁ神通力はハギト様に教わったものですが……」
「じゃあハジメも教われば覚えられる?」
「はい、大丈夫だと思います」
「どうするハジメ?」
「ご主人様の為だったら覚えようと思います」
よし、それじゃあハジメはしばらくここで修行だな。
「この子に神通力の修行をさせてやってくれないか?」
「お主の頼みなら断る訳にもいかんじゃろ、わしが今まであった中で一番崇高な神に仕えているお主ならな」
「決まりだな、ハジメ頑張ってこいよ!」
「はい!」
それから俺達はこの村を拠点にして、それぞれ探索や修行に時間を当てた。偶に降ってくる魚類たちはいったい何なのか聞いてみたら、村人は「神の恵みです」と言っていた。少し宗教染みていてこの村怖いぜ……。
ハジメの修行は順調で、神通力は少しずつ使えるようになっているらしい。神通力とは不思議なもので習得すると神の気配も感じられるようになり、俺が近づくといつもハジメは、家に入る前に出迎えてくれる。
「気配を感じ取るのが一番難しかったー」
「そうかそうか、毎日大変だな」
「あかねとの手合わせでもなかなか負けないようになってきたよ!」
「いやいやハジメちゃん、まだあかねは本気出してないのだよ! ハジメちゃんにはまだまだ負けないよ!」
「ご主人様、あかねまた嘘言ってるよ? あたしに勝った時『しゃーおらぁ! まいっただかこらぁ!』って言ってたもん」
「それは本気ですね」
「ハジメちゃんそれ言っちゃダメなやつぅ!」
相沢は偶に手合わせで来るくらいで、ほとんどはその辺の探索に出ているらしい。相沢なりにいろいろ考えることも多いんだろう。
そうしてここで一か月ほどの時間が経った時、事件はいきなり起った。
「師匠、ありがとうございました!」
「うむ、まさかこんなに早く神通力の基礎を習得するとはこちらも驚きだ。またいつでもここに帰ってきなさい」
「はい、師匠! 次に帰ってくるときは、神通力を使いこなして成長した私とまた稽古してくださいね!」
「どうじゃ? 帰ってきたらラチカと一緒になるというのは」
「あたしにはご主人様と一緒になるという使命がありますので!」
「しゅん……」
隣でかなりがっくりしてしまったラチカがいた。お前、ハジメが好きだったの?
「それにしても、相沢のやつ、出発の日だってのにまだ寝てやがるのか? あかね、ちょっと相沢呼んで来い」
「合点承知の助!」
「お前本当に高校生か?」
すごいスピードでこの場を離れる。こいつも結構修行していたから身体能力上がってんだな。そして、ものすごい形相で帰ってきた。
「元治くぅぅぅぅん!! 佳凛ちゃんの部屋からこれがぁ!」
「おお、よしよし、すごく早く走れるようになったな! あとでご褒美あげよう!」
「ほんとにぃ!? ひゃっほーい! じゃなくて、これ見て!」
あかねは一枚の紙切れを俺に見せた。
「何々……【娘は預かった。返してほしくば、元治一人で東の海岸まで来い。もし来なければ娘の命はない】か」
俺はジジイを睨みつけた。
「わ、わしじゃないぞ! ていうかなんでわしを疑う!?」
「この文面から多少は情報が読み取れる。まず、邪神に捕まっているという線は消薄くなった。お前の頭髪のようにな!」
「元治くん何で?」
「これを書いた奴は結構頭が悪いな」
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