第4話 日本の現状、世界の攻撃
何てことしてくれたんだ。それが本当なら確かに人類は滅んだかもしれないな。そういうことであれば俺が見に行くしかないようだ。
「はぁ……わかった。最初は俺だけで行こう。麻由美さん、そのミサイル、俺の鉱石で守れるかな?」
「さぁ……? あなたの鉱石の実験は済んでないから何とも言えないわ」
そりゃそうか。
「わかった。じゃあ麻由美さん案内してくれる?」
そう言うと麻由美さんは、キーボードを操作し俺の進む道が光って見えるようにする。
「この通りに進めば外に出れるわ。扉はあなたが出口に着いたら遠隔操作で開けるから心配しないで」
扉の心配しかしてないな。俺はどうなってもいいってことか。
「ありがとう。そしてさようなら」
俺のボケに誰も反応してくれなかった。本当に死ぬかもしれないからボケになってないのか。
俺は案内通りに施設内を歩く。階段が多いな、ここは相当地下に作られた施設ということだな。色々な部屋があるみたいだが、とにかく外の様子が知りたくて何も考えずに階段を上っていく。
しばらく上ると階段の上が行き止まりになっていて、大きな丸い天井の真ん中に開きそうな部分があった。
『そこが出口よ、今開けるわ』
室内スピーカーから麻由美さんの声がして、丸い天井が開けていく。
そこで俺は言葉を失った。
そこは、緑豊かな森林の中だった。なんだよ、てっきり地面とかヒビ入ってて、草木一本生えないような世界を想像していたのに。こりゃ麻由美さんのドッキリ説が濃厚になってきたな。
ぴぴー、ぴぴー、ごしゅーーー
うん?
ドガァァァァァァァァーーーーン
顔を両腕で隠して爆風に耐える。目を開けると、自分の周り一帯の森は半径10メートルくらい吹き飛んでいた。
「ガチかっ!?」
ぴぴーぴぴー
ヤバい! 二発目が来る! 辺りの視界が開けたことでミサイルの出所がハッキリする。俺は砲台に向かって走った。
驚くべきは俺の身体能力。砲台までおよそ1キロくらいあったと思う。砲台までの距離を10秒程で到達。途中に放たれた砲撃は真面に食らっても鉱石が完全に防いでいた。
砲台を拳一つで破壊し、近くにあった砲台も尽く壊していった。とりあえずこの辺り一帯の危険はなくなったかな? 視力も格段に上がっている。これがアバストクリクスの適合者の力ということなのか?
この辺りで一番高い崖に上り、世界がどうなっているのかを確認する。
……人類は本当に滅んだのかもしれない。辺り一面、森と山しかなかった。所々にコンクリートの俺が知っている建物の残骸もあるがどれも破片と化している。人類がまだ生きているのなら、こんな風にはならないだろう。さっきのミサイルがある限り。
麻由美さんの話が本物だということの証明がこの景色なのだろう。
俺は研究所に戻り、このことを二人に伝えなくてはならない。まだ若かった二人には本当に残酷な真実だ。
「嘘でしょ!? 本当にそんなことある訳ないじゃない!」
「嘘じゃない……ミサイルも本当だったし、あのミサイルがある限り世界が森になるはずがないんだ」
「でも、そんなの信じられないよ! じゃあお父さんもお母さんもみんな死んじゃったってこと!?」
「おそらく……」
「嫌ッ! 絶対に信じない!」
二人はふさぎ込んでしまった。
「なぁ麻由美さん。どうして世界は日本にこんなことをしたんだ? というか日本はこんな状態だけど世界はまだ残っているのか?」
「まずは世界が残っているかのことだけど、今の日本と同じ状況でしょうね」
「そんな……」
「世界がどうしてこんなことをしたのか……」
麻由美さんは一瞬間を作って躊躇うように話し始めた。
「すべての元凶はこの鉱石よ」
この鉱石? こんな石の為に人類が滅んだということか? いくら人間が馬鹿でもそれはないだろう。
「50年前、世界は大飢饉だったの。勝手に増え続けるこの食べることができる鉱石は日本でしか育たない。世界はそんな日本に目を付けた」
「……」
「世界の重鎮たちは日本に契約を持ち込んだ。その契約とは新木元治の永久冷凍保存、それを行わないのであれば、いずれ滅ぶ世界を今壊し、人類を殲滅するとした。日本はこの鉱石の特徴。新木元治の下でしか育たないということを知った時、新木元治が死んだら結局人類が死んでしまうことを危惧して、新木元治の身を確保することを約束したの」
「俺が……」
「日本政府はこの契約をのんだことを公表できるわけもなく、気を失ったあなたを自分たちの近くで置いて、次の契約の切り札にしようと画策したのだろうけど、あなたの体は見つからなかった。なぜならあなたの鉱石はそんな連中からもあなたを隠していたから」
「それからしばらくして私があなたを見つけて、保護していたの。この施設は私の能力で作っているから安全だし、食べ物ももちろん困らないわ」
「私が隠れている間に、世界と日本の契約は破綻。世界は人類を滅ぼすことにしたのよ」
「……それが、今のこの状況を作り出してしまったのか?」
「結果的にはそうね」
「お前……何で俺を政府に引き渡さなかった? 俺を渡せば世界は滅んでなかったかもしれないだろ?」
「滅んでいたわ。確実に」
「何でそんなことがわかるんだよ!!」
俺は急に怒りが爆発して怒鳴ってしまった。だってそうだ! 俺がいれば誰も死ぬことなんてなかった! 今この二人がこんなに悲しむことなんてなかったのかもしれないのに!
「私はここにいないと死んでいたから」
麻由美さんの言葉にハッとなる。
「世界は初めから日本とあなたを奪うために動いていたのよ。自分たちが生き残るなら日本人なんてゴミと同然。化学兵器を撒き散らして大半の日本人が死んだわ。いくら私が鉱石に守られていても進化した化学兵器から逃れられるわけもないわ。あれは本当に人を殺すためだけに作られた本物の化学兵器。あなた並みの絶対防御がないと誰だって死んでしまうのよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます