第45話
夕闇が迫る頃
土方さんはさくらと腕を組んでソワレへ出掛けて行った。ソワレはVIP専用の上映会で招待客しか入れない。レッドカーペットでは美しい女性が撮影を求められる。この場所で最高に美しく着飾ることが女性のステータスであり、その女性を同伴することが男性のステータスでもある。VIPばかりのこの場所はビジネスの場としても大きな役割を果たしている。
僕達は違う会場を見て回ることにした。
子供達は見るもの全てが目新しく、大興奮だった。ベビーシッターとして一人、秘書の方についてもらって助かった。
「みんな、はぐれないように気を付けてね。手を繋いで」
子供が好きな人みたいで良かった。安心して任せられる。彼女は白石さん。美人だ。巨乳だ。
「藤木さんのお子さんはみんな可愛いですね」
「いやぁ、元気すぎて大変ですけどね」
「子供らしくていいですよ。旦那様も素敵な方だし、奥様羨ましいなぁ」
「いやぁ……」
い、いかん、デレる……。
出掛ける少し前
土方さんはさくらを部屋へ呼んだ。
「さくらくん、君にひとつお願いがあります」
「はい、なんでしょう?」
「今夜のパーティーにミシェルという人が来ます」
一枚の写真を差し出す。ロマンスグレーの紳士が写っていた。
「この人を探してエスコートして来て欲しいんです」
「お連れするのですか?」
「そう、連れてきて欲しいのです。実はミシェルさんは優秀な実業家で、私達は彼と一緒に仕事がしたいのです。ですが、彼は少々気難しい人で、アプローチしてもなかなか会ってくれません。そこで、彼の事をいろいろと調べてみると、どうやら美人に弱いようでね。まぁ、男はみんなそうなんだけど」
「それで私を?」
「そうなんだ。君のセクシャルを利用するようで申し訳ない。嫌なら断ってくれてもいい」
ここまで来て断るなんて出来ない。
土方さん、確信犯だよねー!と、後でさくらが話してくれた。
「わかりました。ご期待に添えるよう頑張ります」
「ありがとう!助かるよ」
きっと、この強引さと大胆さがあの大財閥を作ったんだろうな。
会場へ着くと土方さんはBarで待っていると言い、さくらと別れた。しばらく歩き回ると、視線の先に写真の男性を見つけた。
「こんばんは、ミシェルさん」
「やぁ、これは素晴らしい東洋の真珠!こんばんはマドモアゼル。どうして私の名を?」
「土方さんという方に頼まれて来ました。あなたにお会いしたいそうです」
「ヒジカタサン?」
「はい」
「キミが連れていってくれるの?」
「はい、あちらのBarでお待ちです」
「ふぅん、そう……じゃあ、行こうか」
そう言ってミシェル氏は肘を差し出した。
さくらは腕をからめ、ゆっくり歩き出した。
Barで待っていた土方さんが二人を見つけて手を挙げる。
「ミシェルさん、こんばんは。土方と申します」
「こんばんはムッシュ土方。私に何か御用ですか?」
「ええ、あなたにお会いできて本当に嬉しい。しかし、その前に。私の宝石を返していただけますか?」
土方さんはそう言って、さくらに手を差し伸べた。
「あぁ、これは失礼」
「ありがとう、さくらくん。思った通り君は素晴らしい」
さくらは笑顔で応え「では失礼します」と、その場を後にした。
ミシェル氏が名残惜しそうに手を振った。
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