第43話
土方さんに言われた通り、パスポートも取りに行ってサイズ合わせもした。
さくらはエステに通えてご機嫌だ。
妻がキレイになると、僕にも恩恵がある。
「あ、ローション塗らなくちゃ」
お風呂に入ろうとしたさくらがそう言って戻ってきた。
「僕が塗ってあげるよ」
「えっ、いいよ!自分で出来るから」
リビングに置いてあったエステサロンの紙袋からローションを取り出しながら恥ずかしそうに言う。
「いいじゃん、旦那なんだし」
「だってお風呂上がって体拭く前に塗るんだよ?」
「いいじゃないか」
ニンマリ笑う僕を見て
「ヤダ!なんかヤダ!」
そう言ってバスルームへ逃げて行った。
上がってくる時がチャンスだ。
「カチャ……」
バスルームのドアが開く音がした。
僕は急いでバスルームへ行く。
「きゃ!」
「はい、塗りまーす!」
「えー! だから恥ずかしいって!」
バスタオルを胸の辺りで握りしめ、後退りするさくらに
「じゃあ、後ろ向いて」と促す。
さくらは見られるのがダメなようで、昔からあまり体を見せることは無かった。
産後、ボディラインが崩れたり、妊娠線の後が消えなかったり、そういうことでさらに見せなくなった。僕はちっとも気にしてないのに。産後の変化は僕にとってはむしろ愛しい。
「ライト消して」いつものセリフ。
脱衣場のライトだけ消して、バスルームの明かりだけにした。薄暗い中でさくらの背中のシルエットが浮かぶ。ちょっと引き締まったな。そう思いながら、背中にそっとローションを垂らす。さくらがピクンと反応する。手指でローションを塗り広げていく。風呂上がりのさくらの体温で、アロマの香りがふわりと広がる。エステで磨かれた肌は一段と白く瑞々しく、するりと滑らかで吸い付くようだ。
「……あっ……はっ」
さくらのぷるんとしたピンクの唇から甘い吐息が漏れる。
視覚、触覚、嗅覚、聴覚──
後は味覚でコンプリートだ。
まずはそのグミみたいに美味しそうな唇からいただきます。
背中から腰に滑らせ
肩から腕をなぞる
シャツを脱ぎ、自分の肌を沿わせる
腹部から胸を撫で上げ
固くなった部分を確かめながら
首筋から耳を味わう
さくらの膝が崩れたので
座らせ、足を持ち上げて
太腿から爪先へ手を滑らせながら
腿裏から踵まで丁寧に味わって
左足も同じようにする
最後はデコルテから首筋へ
キスしながら滑らせる
深く求め合いながら
さくらの柔らかい下腹部へ
身を沈ませる
ローションよりもねっとりと絡み付く蜜が溢れだす
動けない……
クールダウンを企んでいるのを見透かされ
さくらが僕の首に腕を回し、キスをする
誤魔化すようにさくらを抱き上げる
大きく体を反らせるさくら
さらに締め上げらる……マズイ……
柔らかな膨らみに抱き締められ果てる
くそっ、今日こそは僕が勝つはずだったのに。
さくらもほんの少し遅れて果てる
今日も僕のストレート負けだった。
子供達が起きてきたら大変と、余韻にひたる余裕もなくシャワーを浴び、パジャマに着替える。
「おやすみ」
キスをして
手を繋いで眠る。
いつまでこうして居られるのかな?
世の中では『レス』な夫婦が増えているようだけど、僕達は今のところ変わりない。
いつまでもこうして居たいな。
おじいちゃんとおばあちゃんになって、機能的に困難(あんまり考えたくないけど)になってしまっても、キスをして、手を繋いで眠りたい。
愛情表現にはいろいろあるけど、やっぱり触れあっていたい。シワシワでカサカサでも、僕だってそうなるし、愛する人に変わりはないのだから。
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