第29話

 抜けるような秋晴れの空



 スマホで音楽を聴きながら洗濯物を干す。

 ふと手を止めてベランダの手すりにもたれかかり

 遠い空を見つめる。



 私のしたことには功罪ある。

 だけど、それが愛だと思う。

 奪うのではなく、守るのでもなく、分け合う──そんな愛し方もある。



 この空は繋がっている。



 今の私は

 今まで出会った沢山の人達と

 その人生の一瞬を

 お互いにシェアしてきた上に成り立っている。

 今の私が在るのは

 みんなが人生をシェアしてくれたおかげだ。


 私が幸せであるように

 みんなも幸せでありますように。

 風に想いを乗せる。

 ラベンダーのハンカチが揺れた。




 ◆◆◆◆☆☆☆☆◆◆◆◆☆☆☆☆◆◆◆




「ママー!早く!」


「はーい! ちょっと待って」


「土方のじぃじのお顔書いたの」


「あら、それはきっと喜んでくれるわね」


「ねぇ、僕のピンクのネクタイ知らない?」


「えーっと、確かクローゼットの左の方に…」


「マーマ! じぃじが待ってるよ」


「はいはい、みんな車に乗って!」


 賑やかで愛しい日常を乗せて

 爽やかな秋風の中、車は走り去る。






 第一部、完

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