第25話 しつこい?




 俺だけジャージ姿で、かなり恥ずかしい思いをさせておいて、そんな事とか悠里は本当に巫山戯ているのか。



 実の兄にどれだけ恥をかかせたのか、俺がどんなに恥ずかしい思いをしたのか、1から説明しないと分からないのか。それを、そんな事扱いをした挙句に、今は聞きたくない、アイツの話を聞くわけがない。



「……なあ、そう言えばご飯ってあるのか?」


「……え……? いや無いけど? そ、それよりリアねえのこと……」


「そうか、無いのか……は? え、ない!? 無いって何も無いのか!?」



 理衣亜の話を悠里に、させない様に俺は、話を逸らそうと、ご飯の話を聞くだけにしたが、ご飯が無いと、悠里の言葉を聞いて、変な声が思わずでた。



 こんな時間まで寝ていた、俺が悪いから朝ごはんは無くてもしょうがないが、昼ごはんも流石に無いと聞くと、思わず驚いてこんな声になる。



 朝ごはんは無く、昼ご飯も無いとか、ありえなさすぎる。俺が寝すぎなのも悪いが、寧ろ悪いだろうけど、それでも昨日の朝から何も食べていない、息子がいるのに何も無いとか母さん、なんて虐待をするんだ。



「……お母さんが急に仕事になったみたいで、お昼ご飯は、これでお弁当食べなさいって2千円置いて行ったよ。そ、それでね、リアねえの……」


「だ、だよな、ビックリさせるなよ。先にそれを言えよ! そ、そうか弁当買っていいのか、弁当を買って食べていいとか久しぶりだし、何弁当を食べようかな、悠里は何弁当を食べるんだ?」



 久しぶりに弁当を、買って食べていいと聞き、俺は思わず喜び、何弁当を食べようかと悩みながら悠里にも聞いてみる。

 悠里と違う弁当にして、おかずを少し交換をしてもらおうと考えて。



 唐揚げ弁当、焼肉弁当、ハンバーグ弁当それにスタミナ弁当。それか敢えてここは定番の、のり弁当の大盛りがいいか……? トンカツ弁当にミックス弁当も捨て難い。



 家では、こう言う事が無い限り、買って弁当を食べる、何て事がなかなか出来ないから、悩みに悩んでしまう。



 父さんも母さんも、栄養が偏るとか冷凍物のの何が美味しいんだとか、色々と言って買おうとしない。栄養が偏るとかは、否定出来なさすぎるけど、けどだ魚とかは、どうするんだよって話だ。



 殆ど冷凍食品みたいな物だろと、思わずにはいられない。冷凍をしていないのも、あるかも知れないけど。スーパーで売っている、外国産なんかは絶対に冷凍だし、国内産でも冷凍物はあるはずだ。



「え? えっと……私はパンを買って食べようかなって思ってるけど……? っで、でね!? リア……」


「……は!? なんで!? 久しぶりに弁当を買って食べていいのに、パンにするのか!?」



 悠里が、パンにすると聞き俺は驚く。

 いつでもパンなんか食べられるのに、何で態々パンにするのか意味が分からない。



 それに、さっきからアイツの話をしようと、しつこすぎるだろ。

 何をそんなに話したい事が、あるのかは知らないが、聞きたくないから話を、聞かない様にしているのに、アイツの話をしようとする、悠里が理解出来ない。



 俺とアイツが喧嘩をしているのを……喧嘩って言うより、俺が一方的に突き放したって、言った方が正しいかもしれないが、それを悠里は知らないだろうし、分からなくもないけど、話をしようとしない時点で察して欲しい。



「なんでって、パンが食べたいだけだからだけど? だからそんな事よ……」


「パンとか、いつでも食べられるだろ!? 今日は弁当にしないか? 悠里の好きなハンバーグに唐揚げもあるぞ? それにトンカツだってあるしどうだ?」



 パンが食べたいだけだからと聞き、俺はいつでも食べられるパンより、悠里の好物で弁当を推してみることにする。



「どうだって言われても、パンでいいんだけど……? お昼ご飯の話より……」


「そ、そうか分かった」



 悠里の、パンでいいんだけどと聞き、俺はもう諦める事にする。

 ここまで、パンでいいと言われたら、何も言えなくなるし、俺にもプレゼン能力なんか無いし。



「うん。それでリアねえの……」


「うるさい! さっきからしつこすぎるだろ! アイツがなんなんだ!」


「……っご、ごめん」



 アイツの話はしたくないって時に、悠里がしつこく、アイツの事をまだ喋ろうとしてくるから、俺は思わず怒鳴る。



 俺の怒鳴り声を聞いた悠里は、驚いた表情をした後、落ち込んだ表情をしながら、申し訳なさそうに謝ってきて、それを聞き俺も、申し訳なくなり気分を落ち着かせ、謝ることにする。



 悠里を絶対に泣かすと、決めはしたものの、いざ悠里に、こんな顔をされると罪悪感を凄く感じる。



「……お、俺も急に怒鳴ってごめん」


「う、ううん、えっと……」


「じゃ、じゃあ俺は弁当をもう、買いに行くから。悠里のパンも何か買って来ようか!? 何がいいんだ!?」


「……え? うん、ありがとう。何でも良いよ」



 悠里の言葉を聞き、俺は分かったとだけ言って直ぐに、家を出る準備をして、弁当とパンを買いに出掛ける。



 俺とアイツの事情を知らない、悠里に怒鳴るとか本当に、自分が嫌になってくる。だけど今だけはアイツの話を聞きたくないからどうしようも出来ない訳で……



「はあ……悠里にプリンか何か、デザートも買って帰るか……」



 俺は、そう独り言を呟き、弁当屋に向かった。



 弁当を買うまでは、本当に良かった。

 自分の食べたい弁当を、買うだけだから直ぐに、買うことが出来たが、問題が発生した。



 コンビニに着き、パン売り場の前で俺は固まった。

 なんでも良いとは言われたが、惣菜パンか菓子パン、どっちにするかは聞いとけば良かった。それに何個食べるかも分からない。



 お昼ご飯らしく、惣菜パンを買うべきなのか、悠里の大好きな、菓子パンを買うべきなのか、大好きかは知らないが……。



 考えても分からない、スマホを持たずに家を出た俺が悪いし、ここはダメだったらダメで素直に、悠里に怒られよう。



 足りないよりはいいと考え、数がやっぱり多いのが1つは、あった方がいいと思い、スティック状のチョコチップパン6本入りと、チョコクロワッサンとチョコチップメロンパンを、買うことにした。お昼ご飯ぽく感じがしないのは、気の所為……気の所為にする。俺は、それとデザートにプリンを、2つ買って家に帰る事にした。

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