第22話 限界? 後悔?




 理衣亜と待ち合わせ何てしていないのに、何が早いねだよ。悠里に聞かないと分かるわけがないし、態々聞いてまで来るとか、いい加減にしてくれ。



 一緒に買いに行った、お揃いの色違いのジャージまで、着て来て本当に何がしたいんだ。



 悠里も悠里で、何で理衣亜に俺が遊びに行くことを、教えようと思ったのかも謎だし、今日は楽しい1日になる予定が、朝から疲れる1日って厄日にしても程があるだろ。



 俺のそんな内心を知らない理衣亜は、俺に挨拶をした後、黒木と山崎に挨拶をして話しかけている。山崎と黒木は早口で、何を喋っているかわからない所もあるが……



 俺は、何とか平静を保ちつつ、3人を黙って見ていたら、理衣亜が背の高い人が黒木と分かった時は驚いていた。まあ、あの変身具合を見たら、誰もが驚くだろうから分からなくもない。



 その様子を黙って見ていたが、理衣亜達の会話が終わり。俺の方に黒木と山崎が話しかけてくる。



 理衣亜も話しかけに来るかもと思っていたが、理衣亜は少し離れた場所で、周りを何かを探すように見渡していて、今は正直助かった。



「ま、増田君ごめんね? よ、予定があ、あああったなら教えてくれれば良かったのに」


「そ、そうですぞ! む、無理に遊ばなくても大丈夫でしたぞ」


「……あ、ああ。何かごめんな? 理衣亜との事を忘れてて……そ、そうだ、4人で遊ばないか!?」



 ああ、やっぱり、そう思われるよな。と思いつつ、ここで何を言っても理衣亜が居ることに変わりは無いし、言ったところで意味は無いと思い素直に謝る事にする。



 謝った後、俺は名案が浮かんだと言わんばかりに、ダメ元だが4人で遊ばないかと、聞くことした。



「……あ、ありがとう、で、でででも僕達の事は気にしなくていいから!」


「そ、そそそうですぞ! 名前を忘れられるような私なんかと遊んでもつまらないですぞ……」



 やっぱり断られるよな。分かっていたけど……

 黒木の場合は名前を忘れられるようなとかじゃなく変わりすぎだと思うが……しかし、なんて黒木に言えばいいか分からないから、スルーすることにした。



「気にしてるとかじゃないし、やっぱり4人で遊びたいと思ったんだ」


「ううん、本当に気にしないで! 2人の邪魔になるだろうし!」


「そ、そうですぞ! 姿形、名前も覚えられていない私がいても邪魔にしかなりませんぞ! なのでお二人でごゆっくりですぞ!」



 だ、誰か黒木の自虐を止めて欲しい。黒木になんて言えばいいんだよ、何を言ってもダメな感じしかしない。



 俺はそれからも遊ぼうと、必死に言って見るが、やはり2人に頑なに断られ、理衣亜も途中からやって来て、折角会ったんだし遊ぼうよと、誘ったりして余計断られることになり、黒木と山崎はその後、今度遊ぼうねと言いながら離れていく。



 黙って2人を見送った後、俺はこのままここにいてもしょうがないし、やる事も無くなったしで帰ろうと思い、駅の方に行こうとしたら理衣亜に声をかけられる。



「健人? どこに行くの」



 駅の方に向かってる時点で分かって欲しい。帰る以外に何も無いだろ。なんか疲れたしもう帰って寝たい。



「どこに行くって帰るに決まってるだろ」


「え、遊ばないの?」



 は? 何で理衣亜は遊ぶと思ってるんだ、遊ぶわけがないだろ。遊ぶ気分すら無くならせた理衣亜が言うのか。



「遊ぶわけが無いし、帰るって言っただろ! 何で遊ぶって思うんだよ!」


「ゆ、悠里ちゃんが遊ぶって言って……」


「ああ、そうだな、態々悠里に聞いてまで、来たんだったな……理衣亜はストーカーか? それとも俺の保護者になったのか!? いったいなんなんだよ!」


「ち、ちが……け、健人、どうしたの……?」



 どうしたのって、理衣亜は分かっていないのか、誰のせいだと思ってるんだよ。

 理衣亜が悠里に聞いてまでここに来て俺が遊ぶのを邪魔したからだろ。



「違わないだろ、何が違うんだよ! 悠里に聞いてまで来るとかストーカーになったか、保護者になった気分でいるかどっちかだろ! なんなんだよ、それともなにか? まだ中学校の時みたいな同情で私も遊んであげるって気分で来たのか!? ふっざけんな!」


「ち、ちがっ……わ、私、そんなつも……」


「これも違わないだろ! 悠里に聞いて来てる時点でそうだろ! 友達と遊ぶって聞かなかったのか!? それとも、理衣亜はまだ俺に勘違いさせて告白をさせて笑おうとでもしてるのか!? 本当になんでもいいからいい加減にしてくれ! 俺の事を好きでも何でも無いんだろ!? 同情なんかもいらないから、もう本当に構わないでくれ! 迷惑だ!」


「……け、健人、ち、違うの話を……」


「何も違わないって言っただろ! 理衣亜はこれだけ言っても分からないんだな。理衣亜にも分かりやすく言ってやるよ! 俺はお前が大嫌いだから構わないでくれ! 話しかけるな!」


「…………え……? け、けん……」



 理衣亜が何かを言おうとする度に俺は被せるように捲し立てながら喋っていた。

 歯止めが聞かず支離滅裂気味に全てを言い切った俺は駅の方に走って向かった。駅に向かってる時に俺は悠里がいるのに全く気が付かず通り過ぎた。



 駅のホームに着いた俺は、最後に思ってもない大嫌いなんて、勢いで言ってしまったのが原因で後悔している。



 理衣亜が同情なんかで中学校時代、話しかけてきたんじゃないって分かっていても、言葉を止められなかった自分が情けない。



 2人と遊べなかった八つ当たりみたいな感じで朝からの全てを理衣亜にぶつけた感じになり自分が嫌になるな。



 ホームに電車が来て俺は目元を拭ってから電車に乗りそのまま家に帰り着いた。



―――――――――――――――――――――――――――――――



 健人が立ち去ってから私は、力が抜けたように座り込み、これは夢だよ、夢なんだよと、涙を流しながら自分に必死に言い聞かせ両頬を両手で抓る。



 痛くて、夢じゃないと分かっても、私は痛くて泣いてるだけ、両頬が痛すぎて泣いてるだけだよと……健人の言葉は気の所為、きっと気の所為だよねと言い聞かせる。



 き、気の所為何だから泣く理由なんて無いよ、うん。痛すぎてどんどん涙が流れてくるだけなんだよ。



「……うぅ…………けんとぉ……だ、大嫌いなんて、いってないよね……気の所為だよね……」



 私はそれからも、悠里ちゃんが何とも言えない様な顔をしながら、私の様子を見ているのも気付かずに泣き続けた。

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