第20話 なんの関係が?




 何で知り合った人と遊べるのが、嬉しいって言っただけで、ここまで哀れんだ目で見られた挙句に、同情までされるのか納得は出来ないけど、このままじゃ話が脱線していってしまう。



 悠里に言い返したい事はあるが俺は、それを何とか堪えて話を戻すことにする。



「と、取り敢えず、その話は置いといて本題の服装と仲の良さと何の関係があるんだ?」


「何で置いとくの!? 折角、可哀想なおにいの為に可愛い妹が遊んであげるからねって言ってるのに! 寧ろこっちを本題にしてもいいぐらいじゃん!」


「い、いや、その話はまた今度聞くから。頼むから」



 早く服装を決めたい俺は、言いながら頭を下げて悠里にお願いする。

 今日は友達と遊びに行くって、言ってるのに何で悠里と遊ぶ話を、本題にしないと行けないんだ。本当に頼むから話を進めさせて欲しい。



「絶対だから約束だからね、おにい? 分かった?」


「分かったから、何でも約束するから!」


「ならいいけど。じゃあそっちの話に戻すけど、仲の良さも大事だけど、遊びに行く場所とかも決まってる?」



 悠里に聞かれ俺は遊ぶ場所の事や、山崎と黒木2人との仲の良さの話をし、俺の話を黙って聞いている悠里は、話を聞いてる時に疑いの眼差しを向けてきたが、俺はそれを無視して話を続けた。



 2人との仲の良さについては、悠里に友達がいないと、いつまでも思われ続けるよりは、いいだろと考え、ちょっと? いや、少し……かなりか、仲の良さをアピールしといたのが失敗したのか、疑いの眼差しが強くなった気がする。



 お、俺にだってお兄ちゃんとして見栄を張りたくなるし威厳を何とか保ちたい。あるかどうかは別として。

 俺の話が終わり黙って聞いていた悠里が疑いの眼差しを向けたまま口を開く。



「ふーん、毎日一緒にお弁当食べながらゲームしたり、一緒に登下校ねえ……下校の時は買い食いしながら、楽しくおしゃべりねえ、本当か嘘か分からないけど。ふーん」



 復唱をしないでくれ……見栄や威厳の為に自分で言った事だからなんとも言えないが自分の言った言葉を他の人が言うと堪える物がある。本当に、う、嘘は良くないな……何か聞いてて惨めになる。



「……そ、そうなんだ、それで服装はどうしたらいい?」


「ジャージでいいと思うよ? 近場だしどっか街に行くって訳でもないし」


「い、いや流石にそれは無いだろ!? それに1駅離れてるし近場って訳じゃないだろ?」



 俺が話を盛ってるからって、盛ってるってよりは嘘に近いが、嫌がらせで適当な事を言ってるのか……? いくら何でもジャージは無い。それだけは流石に俺でも分かる。



「はあ、これだから、おにいは。1駅しか離れてないけど、歩いて大して時間かからないから、近場だよ。格好は大して仲良くなかったら、大問題だけど大丈夫。すっごく仲が良くて、毎日一緒にゲームしながらすっごく楽しくご飯食べてて、毎日帰りに一緒に買い食いしながら、すっごく楽しく帰る程仲良しなら楽な格好でいいよ。そんな近場に行くのに変にオシャレをしすぎる方が引かれるよ」



 悠里は最後におにいにオシャレが分かるか別としてと付け加えた。言い方に悪意を感じるのは、気の所為……いや、気の所為にしたい。

 それより1駅分を歩いて20分が大して時間かからない近場になるって、だいぶ遠い気がするのは俺の考えがおかしいのか。いや、遠すぎるだろ。



「……だ、だけどだ……」


「だけども何も無いからおにい。誰かに見せるの? 見せる相手とか居ないでしょ? 見られると思ってるのおにい? 大丈夫、おにいは誰にも見られないから、自意識過剰だよ。それにもし仮に友達が何か格好の事で言ってきたら、友達じゃないから大丈夫。そんな近場に行くのに格好を気にする友達何て居ないから」


「そうかもしれ……」


「はあ、おにい? 友達と遊びに行くのもゲームセンターにカラオケでしょ? オシャレな所に行くわけでもなく。ジャージでゲームセンターやカラオケとか普通に来る人もいるから本当に大丈夫だって。まだ説明いる? まだわかりやすく言った方がいい?」


「……い、いや大丈夫だ。そうだよな気楽に遊べる友達と、気楽に遊べるゲームセンターとカラオケだし、気楽な格好ていいよな! そ、そうだよな……きっとそうだよな……。 悠里ありがとう」



 俺が喋ろうとする度に悠里が被せるように、色々と理由付けで言ってくるから、自分に言い聞かせるように、渋々ながらも納得する事にした。



 それから、俺と悠里は母さんの朝食の用意が出来たと、言葉を聞き、話の区切りも良かった事から返事をしてソファから立ち上がり、悠里と2人で移動し朝食を食べ始めることにした。



 朝食を食べ終えてから俺は、直ぐに部屋へと戻り、悠里の話を聞き渋々納得してしまった俺は、釈然としないながら3本線の入ったジャージに着替える。

 着替えてからも思うが、本当にジャージで大丈夫なのか不安でしょうがない。



 確かにゲームセンターに、ジャージで来ている人はいるにはいた、だけど明らかに部活終わりって人が多かった気がするし、たまに違うかって人を見かけたぐらいだ。



 見かけたりはしていた訳だし、ゲームセンターはいいとしても、本当にカラオケにジャージで行く人がいるのか甚だ疑問がある。

 どうしてもカラオケだけが、引っかかる。



 考えた所で、行ったことが無いから分からないけど……こんな事になるなら本当に悠里か理衣亜と、もしくは2人と一緒にカラオケに行っときたかったけど、2人揃って何故か頑なに拒否するから行けなかった。



 そうなると、1人でカラオケに行けば良かったと思うけど行けてたら苦労はしない。



 店員さんに何を言われるとかは、無いだろうけどあの人友達居ないのかなとか、色々思われたりしたらと変な考えが浮かび、それが嫌で1人でカラオケに行けずにいる。

 まあ、理由は他にも色々とあるけど、それが1番大きな理由。



「色々考えても仕方ないか。きっと大丈夫……悠里があれだけ言ったんだ大丈夫なはず……」



 不安を消すように呟き、俺は時間はまだ9時前と早すぎるが、もう遊びに行くことにする。

 寝ていないせいと、ご飯を食べてから物凄く眠くなってきて、隣のベッドに入りたい欲が凄く出てくるから。



 俺は家を出る時にも色々と言われたが、聞き流しつつ行ってきます、とだけ言って家を出た。駅に着いた俺は、電車に直ぐに乗らず、2本遅らせて乗ることにした。



 待ち合わせ場所に到着してから時間を見てもまだ9時30分を過ぎた所。いくら何でも早すぎたな。



 まあ、今はそれはいいとしよう。寝ていない俺が悪いし。

 それよりもだ、問題が別に出来た。

 あんのクソ妹があああああ騙したなあ! 何が近場はジャージで大丈夫だ! 全く見かけねーじゃねーか!

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