第12話仲の良さ?




 理衣亜が驚く様な事を言うから俺は何秒ぐらいだろうか、固まってしまった。夢か? 夢ではないよな。

 理衣亜が俺の連絡先を聞きたいってどういう事だ? ダメだ、振られたのにまた勘違いの方向にばっかり考えてしまう。



 きっと、友達として以前に幼なじみとしてだろうな。そうじゃ無いと理衣亜が聞いてくる理由がないだろう。



 そんな事より今の状況だ。理衣亜が大きめの声出したせいで、親睦会の幹事さんが何故か来たじゃないか。山崎と黒木の姿も全く見なくなったし迷惑な話だ。山崎と黒木は今日のお昼ご飯を食べられるだろうか。

 


「えっとね、今井君。その連絡先はやっぱり仲良くなってからが良いんだけど……」


「うん、分かるよ! だからその為の親睦会だし、その前に連絡先を交換していたらもっと仲良くなれそうじゃない? それに彼とは仲がいいの? たまに話すのを見かけていたぐらいだけど?」



 幹事さんの名前は今井君って言うのか。まあ関わる事は無いだろうからいいけど、今井君は理衣亜の話を聞いていないのか。

 理衣亜は仲良くなってからって言ってるのに、その為の親睦会ならその時に聞けばいいじゃないか。

 仲良くなれそうじゃない? とか意味が分からない。



「私は、親睦会には出ないよ?……健人? 健人とは凄く仲がいいよ! だよね健人!?」



 あれ? 理衣亜も親睦会に出ないのか、 何でだ? 俺と話してる時は理衣亜は出るものだと思ってたが違うのか?



「ん? そうだな、悪くは無いんじゃないか?」



 理衣亜と今井君のやりとりを、無言で見ながら考えていたら、俺にも話を振ってくる理衣亜。取り敢えず無難に答えとく事にした。



 俺が答えると今井君は、一瞬チラッと剣呑な目で見てきた。

 無難に答えたと思ったが、ハズレを引いたらしい。まさかそんな目で見られるとは思いもしなかった。



「へえ、君は早川さんと、どんな関係?」



 そう聞いてくる今井君。

 どんな関係とか言われても幼なじみだな。もしくは振った振られたの関係だけどこれは言えないな。



「凄く仲がいい幼なじみだよ?」



 俺がこたえるより早く何故か理衣亜がこたえる。

 凄く仲がいい幼なじみってなんだ……普通に幼なじみだけじゃダメだったのか!?



「僕は彼に聞いたんだけど……」



 何故か困惑気味に言う今井君。理衣亜が言っても変わらないと思うがダメだったのか。ここは理衣亜に合わせて凄く仲がいい幼なじみで俺も言うべきか。幼なじみでダメな理由は分からないが。



「そうだな、凄く仲がいい幼なじみだな」



「凄く仲がいい幼なじみって何かな? ただの幼なじみと違うの?」



 何で今井君、そこまで聞いてくるの!? 別にいいだろ、俺もただの幼なじみでいいと思ってるし、本当に何が違うのか俺が知りたいぐらいだ。



「えっと……健人、凄く仲がいい幼なじみって、ど、どんな風にかな?」



 少し顔を赤くしながら理衣亜も俺に聞いてくる。

 知らねーよ! 俺が聞きたいし、何で言った理衣亜が俺にまで振って来るんだ。意味が分からなすぎるからな!



 いったい何を言えばいいんだ。どうしてこうなった? 振った振られたの関係を言えば良いのか……言えるわけねーだろ! 取り敢えず凄く仲が良さそうな話をすればいいか。



「どんな風って、あれだろ? 昨日は手を繋いで買い物に行ってご飯を食べたし、ほか……他には一緒に風呂に入ったりもしたな、一緒の布団で寝……」



 言いながら俺は気付いた。理衣亜が顔を真っ赤にして俯いて、今井君は顔を引き攣らせていた。



「ち、ちちちち、違うぞ! お風呂とか一緒に寝たのは小学生の! 小学生の頃の話だからな!」



「け、健人のバカ! 中学生の時も1回だけ一緒に寝たよ! 忘れたの!?」



 大声で言う理衣亜。教室がシンっと静まりかえった。教室の視線が集まる。

 バカはどっちだよ! 顔を真っ赤にして恥ずかしい癖に何でそんな事を言うんだよ! それに中学生で一緒に寝た記憶なんて本当に無いからな!?



「い、いや忘れたとかじゃなくてな? それより今井君もだけど皆が変な誤解をしてそうだからこの話はな?」



「一緒に寝たのは誤解じゃないよ……じゃ、じゃあちゃんと中学生の時も一緒に寝たの覚えてたんだね!?」



「も、勿論覚えてるに決まってるだろ!? そ、そそそ、それより連絡先だろ! 俺、やり方分からないから理衣亜がしててくれ!」



 俺は、早く話題を変えたくて焦りながら言う。誤解じゃないかもしれないけど誤解してるだろ!

 俺も自分で何考えているのか全く分からなくなった。理衣亜も何を考えているのか全く分からない。何で教室でこんな事を大声で言うんだよ!



 今井君が深く聞いてこなければこんな事にはならなかったんだが本当になんて事を聞いてくれたんだ!



「分かった! あ、後ね? 約束の事なんだけどちゃんと守ってね?」


「わ、分かった分かったから何でもいいから早く、早くしてくれ!」



 俺はそれから理衣亜の連絡先が入ったスマホを返して貰って一目散に教室を出た。

 今井君は相変わらず引き攣ったまま固まっていた。

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