第10話 なさすぎる?
「け、けけ健人? 手にも、もも持ってるのは何かな?」
そんな言葉と共に後ろを振り向く俺。そこには目を泳がせながら震えた指で俺のスマホを指しながら立っていた理衣亜がいる。その後ろにはリイどうしたの?と言いながら理衣亜の友達もやって来ていた。
何なんだ、始めて連絡先が聞けそうだったのに何でこのタイミングで来るんだ。狙ってるのか、もう色々狙ってるだろ!? お願いまでして理衣亜のお願いも聞く事にしたのに何でこんな事になるんだよ。
「け、健人? そ、それで何を持ってるの?」
俺が内心で色々思っていたら理衣亜が同じ事を聞いてきた。
見てわからないのかスマホだろ、始めて家族以外の連絡先が入る奇跡的瞬間だったのに。
「……何ってスマホだろ? 何に見えるんだよ?」
「スマホじゃない?」
「スマホだよね?」
質問の意味がよく分からず俺が呆れた様に、理衣亜に答えると後ろから理衣亜の友達が、同じ事をお互い見ながら答えあってる。
理衣亜の友達もスマホって分かってるじゃねーか! 何で俺より先に持ってる理衣亜がスマホを分からないんだ、これがおもちゃにでも見えるのか!? 見えるかもしれないけど。
「そ、そそそうだよねスマホだよね。それでなな何で持ってるのかな?」
「……何で持ってるって親に買って貰ったからだろ?」
「買って貰ったからじゃないの?」
「買って貰ったからだと思うよ?」
俺が理衣亜のよく分からない質問に答えたら、後ろから理衣亜の友達がまたお互いを見ながら答えを言いあってる。
普通そうだよな分かるよな、買って貰わないと持ってる訳が無いだろうし。
「もも勿論そうだよね、わ、分かってるよ私でも! そ、そうじゃなくて、えと……」
「いや、理衣亜じゃなくても分かると思うんだが寧ろ分かってて何で聞いてくるんだよ……本当にどうしたんだ?」
「リイ、本当にどうしたの? 増田なんかほっといて早くご飯食べよ?」
理衣亜の様子がさっきおかしいから、俺はどうしたのか聞いた所で合わせる様に、背の低い方の女子がそんな事を言い出した。
名前は知らないがナイスアシストだ、増田なんかって言葉に棘を凄く感じるけど、本当に早く理衣亜を連れてご飯を食べてくれ。
じゃないと教室の入口でチラチラこっちを見ている2人が戻って来られない。
本当はお茶も買わずトイレにも行かなかったんだろうな、先程から入口でモグラ叩きのモグラの様に顔を出しては引っ込める2人の様子がなんとも言えない。
「うん、ごめんね? つかさちゃんと結衣ちゃんは先に食べてて? 私は健人に話があるから」
理衣亜が後ろを振り向き2人に答える。いや、理衣亜も食べて来いよ! と思ったのは言うまでもない。そこで今まで俺を見ようともしなかった2人の鋭い目付きが一瞬俺の方に向いた。
俺は何もしていないのに、何でそんな目で睨まれなきゃいけないか謎だ。つかさちゃんと結衣ちゃんって言うみたいだがあれか? ご飯を早く食べたい見たいだし、2人共腹が減りすぎて気が立っているんだろうか?
理衣亜と友達2人が話すのを、その後も俺は黙って見ながらそんな事を考えていたら、2人が席の方に戻って行った。どうやら理衣亜が説得したみたいだが負けるなよ、つかさちゃんと結衣ちゃんとやら! 世の中には諦めちゃダメな時があるんだぞ!
内心で俺が叫んでいたら、それが聞こえたかの様なタイミングで2人が振り返り一際鋭い視線が飛んできた。
「そ、それでね健人。私に言いたい事とか聞きたい事とかあるよね!?」
2人の視線を見ながらエスパーか!? 超能力者か!? どっちも一緒か。とくだらない事を考えていたら理衣亜が振り向き俺に突然何を思ったのかそんな事を言い出した。
言いたい事に聞きたい事か、山ほどあるに決まってる。
2人の視線が鋭すぎるから早くご飯を3人で食べてろ!とか約束破ったから約束無しなとか! 後は……あれ? おかしいな後何がある? 山ほどあるとか思っていたが米粒程しかないぞ!?
おかしい、おかしいぞ。聞きたい事が何も出てこない上に言いたい事も他に全く思い浮かばない。
きっとまだ何かある筈だ、探せ俺の言いたい事は他にきっと脳内の何処かにあるはずだ! 理衣亜に言いたい事、言いたい事……俺の求める言いたい事という秘宝が脳内の何処にもねーじゃねーか!
「健人? どうしたの?」
「ん? あっごめん、言いたい事と聞きたい事を考えてみたけど、これと言って無いな」
約束の事とかは言わなくても分かってるだろうし言ってもしょうがないしな、それに早くご飯を食べに戻れと言った所で変わらない。理衣亜が戻らないのは目に見えてるし。となるとやはり言うことが無い。
聞きたい事にいったては皆無と言ってもいいぐらい全く出てこない。
何だよ聞きたい事って!? 何でわざわざ今来たんだと聞いたところでスマホを持ってたからとかそんな事を言われるのは分かってる。聞くまでもない。そうなると他に聞きたい事と言われてもある訳が無い。
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