第9話 タイミング?




 理衣亜と本を買いに行った次の日の昼休み。俺は山崎と黒木に親睦会に出るのか聞く事にしている。勿論、理衣亜が今日の昼休みに来ない様にお願いしたのは言うまでもないだろう。



 今週中にある程度は仲良くなっておきたい。あわよくば昼休みに、放課後何処かに遊びに行かないかって誘って遊びに行ったりして、仲良くなって親睦会を一緒に出て楽しむ為でもある。



 そのおかげで理衣亜のお願いを俺の出来る範囲で何でも聞かないといけなくなったが、まあそれだけで昼休みにご飯の誘いを来ないなら安い物だ、うん安い筈だ。



 4限の授業も終わり俺は弁当を片手に持った。

 黒木が山崎のいる、隅っこに移動したのを確認してから俺も弁当も持って2人がいる隅っこに、どうか俺まで避けられませんようにと祈りつつ、移動する事にした。



「な、なあ山崎と黒木、今日は一緒にご飯を食べないか?」


「も、ももも勿論歓迎ですぞ! 食べますぞ!」


「う、うん! 一緒に食べよう」


「ほ、ほんとか!? いいのか!?」



 山崎と黒木の所に着いて声をかけてみたが良かった……俺が来ただけで理衣亜も来るんじゃ無いかって逃げられる心配は要らなかったみたいだ。



 逃げられずに済んで安心したけど、思わず本当にいいのか聞いてしまったのはしょうがない。逃げられたのは昨日だし聞いてしまう。



「勿論ですぞ! いいのかと聞かれたら昨日と同じことを言いますぞ!」


「うん、大丈夫だよ」



 黒木の言葉を聞いた瞬間俺は、またお茶を長い事買いに行くのか!? と思い出していたが山崎の言葉でもう一個の方かと安心した。ま、紛らわしいことを言わないでくれ。それから俺も席につき弁当箱を開け一緒に弁当を食べ始める。



「黒木と山崎は……」


「増田殿に……」


「増田君……」



 食べ始めの最初は無言だったが、親睦会の事を聞こうと喋ろうとしたら、声が重なってしまった。そして3人気まずくなり少しの間沈黙になった。



「あ、と、何だ?」


「どうしたんですぞ?」


「どうしたの?」



 少し沈黙した状態が気まずくて気まずさを消すように俺は、どうしたのか聞こうとしたら、また声が重なった。何なんだ一体!?



「……」


「……」


「……」



 今度は3人で沈黙が長く続いた。余計気まずくなったじゃねーか!? 今まで友達が居ないしこんな事を経験した事がないし、どうしろって言うんだ。



「増田殿からどうぞですぞ!」


「うん! 増田君、何かな?」



 俺はもうこの際、挙手でもした方がいいのか? 席を立って喋り始めた方がいいのか? と色々考えていたら黒木から聞いてきて、山崎がそれに続いてきた。



 成程こう言う時は無言が正解なんだな。変に喋ろうとするから、ああなるんだな。

 俺はそれを覚えてから聞きたかった、親睦会の事を聞いてみる事にした。



「その、ふ、2人は親睦会に出るのか気になって。で2人は親睦会どうするんだ? 出るのか?」


「私は出ませんぞ? 理由は93個程ですぞ」


「うん、僕はそこまで多く理由無いけど出ないよ?」



 え!? ちょっ、ちょっと待て俺の聞き間違いなのか、なんだ93の理由って多すぎじゃないか!? そ、それよりも2人は出ないのか!?



「え、そんなにあるのか!? どんな理由なんだ!?」


「私が説明しますぞ、山崎殿?」


「うん」



 黒木が説明するってどう言う事だ、2人は似たような理由で来ないって事か!?

 俺はその理由が気になり無言で黒木の説明を待つことにした。



「増田殿、私達が出ないの理由は簡単ですぞ? 元々参加出来ないからですぞ?」


「へ?」


「私達はグループチャットをしてませんぞ? なので元々出られないんですぞ? そして言いにいけば良いと思われると思いますが私と山崎殿が言いに行けると思いますぞ?」



 元々参加出来ないと言われ、俺は思わず間抜けな返事が出てしまった。その後、黒木が続けてくれたがそう言う事か、しかしこれは問題ない理衣亜に聞けば教えてくれるだろうし問題無い。



 うん問題無いと思っていたが、理衣亜の連絡先を知らねーじゃねーか! 大問題だ、そうだよリア充グループに話しかけるなんて俺にも出来るわけがない。

 グループチャットも出来ないってなると俺も結局参加が出来ないってことか。



「……そ、そうなんだな、俺にも無理だ。俺も参加出来そうに無いな」


「うん、僕達の理由はそう言いう事なんだよ」


「まあ、仮に私と山崎殿が参加した所で結局私達と話すような人はいませんぞ? なので行ってもしょうがないのでありますぞ?」


「俺もそ、そうかもしれないな……」



 俺は山崎と黒木の理由に納得した所で黒木が追い討ちをかけるような事を言ってきて、俺もそうかもしれないと思わず納得してしまった。



「う、うん。それでね僕達は親睦会に出ないし土曜日に遊ぼうかって話もしてたんだけど増田君も親睦会に参加出来そうに無いならどうかな?」


「そうですぞ! 是非一緒に遊びますぞ! 勿論無理にとは言いませんぞ! 親睦会に出られそうなら出るもよし私達と遊ぶもよし増田殿の都合次第でいいですぞ!」



 残り90個ぐらいの理由も続けて言ってくるかと思っていたが山崎と黒木が親睦会に参加出来そうに無いなら遊ぼうと言ってきた。

 え、聞き間違いなのか、今俺誘われたのか?



「え、俺もいいのか!?」


「勿論だよ! それに良かったら連絡先も交換しようよ」


「そうですぞ! いいのかと言われたらまたあれですぞ! 私とも連絡先交換して欲しいですぞ!」



 俺は本当に誘われているみたいだ。誘われたのが本当に嬉し過ぎて泣きそうだ。親睦会に参加出来ないと分かった時は、絶望したが今は遊ぼうと言われたり連絡先交換しようと言われたり、嬉しさがうなぎ登りだ。

 ドッキリじゃないよな!? 冗談でしたとか無いよな!?



「も、勿論遊ぶし連絡先も交換するに決まってるだろ」



 俺はそう言いつつ嬉しくてしょうがないが、それを何とか平静を装いポケットからスマホを取り出した。



「じゃあバーコー……ちょ、ちょっとごめんね増田君、ぼぼぼぼ僕とととトイレに行ってお茶を買ってくる!」


「わ、わわわわ私もお茶に行って、と、とととトイレ買って来ますぞ!」



 急にどうしたんだ2人共!? え、余程トイレ我慢してたのか、俺が変な事をしたのか!?

 ポケットからスマホを取り出して連絡先を交換しようとしたら、2人が慌てた様にそれだけ言って教室を出ていくのを俺は呆然と見ながらそんな事を考えていた。



「け、けけ健人? 手にも、もも持ってるのは何かな?」



 色々考えていた俺に後ろから戸惑った様な声をかけられた。見なくても分かったが後ろを振り向くと目を泳がせながら震えた指で俺のスマホを指しながら立っている理衣亜がいた。

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