第6話 恥ずかしい本!?




「皆! ちょっと聞いて貰ってもいいかな? 今度の土曜日にクラスの親睦会をカラオケか食べ放題のお店で、する事になったんだ。それでお店の予約とか、あるから参加するかしないかを、クラスチャットに入ってる人はそこで返事をして欲しい。していない人は俺に言いに来てもいいし、クラスチャットに入れるように誰かに招待して貰ってチャットで返事をして欲しい」



 その日の放課後。HRが終わってから名前は分からないがリア充グループの1人の男子が言いだした。

 俺は、それを聞きいつの間にそんなの決まったんだ!? とか、クラスチャットとかいつ出来たんだよ!? とか少し本当に少し、複雑に色々思いつつも歓喜していた。



 俺はカラオケに行ったことがないし、ご飯を食べに行くのも理衣亜か家族としか行ったことがない。喜ぶなって方が無理な話しだ。決してクラスチャットを教えてもらえなくて、悲しい何て思っていない。



 誰にも教えてないし、聞かれてもないけど、これはしょうがない。決して除け者見たいにされてとか、考えて震えている訳じゃない。初めて理衣亜と家族以外と何処かに行けるのが嬉しくて震えているだけなんだ。



 俺は、勿論聞いた瞬間に参加する事を決めたが山崎と黒木は参加をするんだろうか? 俺的には他に話せそう人が他に理衣亜以外には居ないし理衣亜は理衣亜で友達とも喋るだろう、まあ参加するかは分からないけど。



 そんな訳で2人が居なかったら、軽く浮く可能性もある。親睦会なのにそこでボッチになる自信すらあるから是非とも参加をして欲しいところだ。



 2人が参加するのか知りたいが、聞きに行って今日の昼休みの事もあるし、俺が話しかけに行って理衣亜が来るかもと思われて、理衣亜達が来た時みたいに俺も逃げられたらショックだ。そこで俺は山崎と黒木に聞こうと思いつつ、昼休みの時みたいな事を避けようと理衣亜が居るのか確認してみると、まだ教室の中にいた。



 今日は聞けないな。明日何とか聞けないかな? と考えつつ俺は教室を後にした。

 教室を出てから思い出した。今日は新刊のボッチな俺が金髪尻軽ビッチにプロデュースされリア充になるの発売日だという事を。俺は思い出したと同時に足早に靴箱に向かう。



「待って! 健人待って! 一緒に帰ろ!」



 足早で靴箱に向かっていると、後ろから理衣亜が走りながら慌てた様に声をかけて来た。

 俺はそこで振り向いて廊下は走るな! と言いたかったが、新刊が早く欲しかったから手短に済ます事にする。



「今日は、と言うか今日もだけど無理だし友達と帰ればいいだろ?」


「友達にはさっき、『大事な用があるから先に帰るね』って断ってきたから、だから一緒に帰ろ?」


「はい?」



 ついつい間抜けな返事をしてしまった。え? 大事な用があるなら早く帰れよって思うのは俺だけじゃないよな? 誰だってこうなる筈だ。



「えっと、一緒に帰ろ?」



 いやいや、別に聞き返してるわけじゃないし、耳が悪いわけじゃない。ちゃんと聞こえてるからな!? 俺が間抜けな返事をしてしまって何を勘違いしたのか理衣亜が同じことを言ってくる。



「用があるなら早く帰った方がいいんじゃないか? それに俺も今日は用があるし無理だ」


「え、そうなの!? 用って何!? だ、誰かと遊びに行くの!?」



 俺が用があるから無理だって言うと、理衣亜は驚いて慌てた様に少し大きめの声で言ってくる。

 そんなに俺に用があるのがおかしいのか、友達が居ないからって用があったらおかしいのか!? 俺だって用ぐらい、ある時はある。



「今日、発売される本を買いに行くんだ、それより理衣亜も用があるなら早く帰った方がいいんじゃないか?」


「えっとね、わ、私も本を買いに行こうと思って! い、一緒に行かない!?」


「……いやいや、本なら友達と買いに行けばいいんじゃないか!? 何でわざわざ俺と一緒に?」


「その、と、友達の前じゃ、は、恥ずかしくて買えないと言うか…だから、一緒に買いに行こ?」



 理衣亜はいったい何を買おうとしてるんだ……恥ずかしくて買えない本って何だ。何でそんな本を俺の前では買えるんだ。



 あれか? 健人は友達じゃないしただの幼なじみだからってことか!? 振った追い打ちをここまで掛けてくるのか。



「流石に俺の前で恥ずかしい本を買うのもどうかと思うぞ? 何を買う気だよ」


「そ、それは、ボッチ……き、金髪……恥ずかしくてこんな所で言えるわけないでしょ! 聞かないでよ! それより早く行こ!」



 余程恥ずかしかったのか理衣亜が顔を少し赤くしながら慌てた様に言ってきた。

 り、理衣亜は本当に何を買おうとしてるんだよ!? ボッチと金髪は分かったけど、学校で言えない様な恥ずかしい本を買うって本当に大丈夫なのだろうか。



「はあ……分かった。ここで、こんなに話してて変な勘違いされても嫌だし早く行くか」


「うん」



 俺は結局、一緒に行くことを認めた。もう一緒に行く気があるみたいだし、そして何を言っても着いてくるのも目に見えていたからだ。



 そして俺が一緒に行くことを了承すると、理衣亜は少し赤くした顔のまま返事をした。

 俺は、何で勘違いを周りにされる様な事は、したくないのに了承したんだろなとそんな事を考えつつ、2人で学校を後にした。

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