第5話 チャンスが!?




 入学式から2週間経った。理衣亜との通学は入学式以来1度もない。理衣亜が迎えに来る前に学校に来ているからだ。おかげで登校するのは1番だ。勘違いされるのが嫌だから1人で来ている。俺なんかで勘違いするかは別として。



 俺は、まだ彼女が作れないのは分かっているから、最初に友達を作ろうとしている。ラノベではなんだかんだと、モブ的な男友達がいるか主人公気質なヒーロー的な男友達が直ぐ登場したりして、まあ登場しないのもあるが……取り敢えず、そこからハーレムみたいになってそこから告白されたりしているだろ? しかし考えて見てくれ。



 俺にそんな人は居ない。なら作るしかないだろう? そう考え俺は色んなクラスメイトに必死に声をかけたりしてみた。そりゃあもう必死にだ自分でもこんなに気軽に声をかけられるのかと、驚くぐらいに声をかけたが全く友達ができる気がしない。



 まあそれは、妄想だから当たり前なんだけどな。

 考えたら分かると思うが、俺は家族と理衣亜としか、ほぼ話してなかった中学校時代。まず何て声を掛けていいのか分から無くなってしまった。



 ラノベの様に誰か声を掛けてくれないかなと、期待をして待っても見たが案の定。話しかけて来るのは理衣亜だけで他には声をかけられるの事もなく、あっという間に2週間がたってしまった。色んなグループが出来上がり尚更声をかけ辛くなった。



 授業中に休み時間にも色々と考えても見たりしたが結局このままでは一緒だなと考えて俺は昼休みになった今、話しかけることを決めた。そして、俺は席を立ち妄想の様に場の空気が凍りませんようにと、祈りながらそこへ向かう事にする。



「なあ、俺も一緒にご飯を食べてもいいか?」



 俺は教室の隅っこに居た背が高いメガネをかけた男子と横に広く背の低い男子に声をかけた。

 何故かって? 俺みたいなボッチで隅っこにいた奴は似たように隅っこにいる奴にしか声をかけられる自信がないからだ。



 だ、大丈夫だよな、俺と同じく隅っこ同盟に断られたら軽くどころじゃなく純粋にショックで寝込みそうだ。



「え、えっと……」


「私は別にいいですぞ?」


「ほ、ほんとか!?」



 背の高い喋り方が独特な人は了承してくれた。

 嬉しくて思わず声が少し大きめになったのはしょうがない。場の空気が妄想と違って凍らずに、いいって言われたら思わずこうなるよな!?



「本当かと言われても本当ですぞとしか言えないですぞ?」


「あ、うん僕もご飯を一緒には、いいんだけど名前が分からなくて……ごめん」


「気にしなくていいぞ。俺も分からないしゴメンな? 俺は増田健人って言うんだ」



 焦った……名前が分からないからダメって言われてるのかと思った。

 まあそうだよな話してもないんだから、顔と名前が一致するわけが無かったな。



「うん、ごめんね増田くん。僕は山崎智也やまさきともやよろしくね」


「私は黒木義孝くろきよしたかよろしくですぞ」


「ああ、山崎に黒木よろしく!」



 俺達3人は、自己紹介を軽くしてから弁当箱を開いて、弁当を食べ始める事になった。

 俺は内心喜んでいた、妄想と違ってこうも上手くいくとは思わなかったし友達になる第1歩行けたんだから。



「増田君は普段何してるの?」


「え、あ、普段はラノベ漁りとか前まではアニメとか漫画読んでたかな」



 受け答え大丈夫だよな。普段何してるか気になるとかストーカーかとか考えすぎだよな!?



「ラノベかあ、なら増田君もやっぱりチー…」


「健人! 私達も一緒にご飯食べてもいいかな? 色んな人と仲良くなりたいし!」



 山崎が喋ってる途中で声をかけて来たのは理衣亜だった。

 今まで俺が1人で食べてる時には来なかったのに何で今更来るんだ。決して寂しいとかじゃないからな、1人は慣れたもんなんだから。



「無理だ、いつもの友達と食べてたらいいだろ?」


「え? 勿論一緒にだよ? 6人で! 色んな人と仲良くなりたいし皆で食べた方が美味しいよ?」



 いやいや理衣亜の後ろでその友達の顔が引き攣ってるんだが……それが分かってるからこそ言ってるんだが

理衣亜が良くても後ろが嫌そうにしてるんだから察しろよ。



「山崎君と黒木君だよね? いいかな?」


「あ、え、えっと、そ、そそうだ僕お茶を買いに行こうと思ってたんだった! ま、増田君達先に食べてていいよ!」


「わ、私も行くですぞ! わわ、私も、おおお、お茶が無いの忘れてたですぞ! では増田殿先にどうぞですぞ」


「あ、ああ」



 2人は慌てた様子で、それだけを言い残して教室から出て行った。俺と理衣亜は呆然と見送り、理衣亜の友達は相変わらず引き攣った顔をしている。



「あれ? 机の上に置いてある飲み物は全部健人のなの? こんなに飲んでお腹大丈夫なの?」


「はあ……」



 ご飯の時にほぼ1.5リットルも飲めるわけねーだろ!と、突っ込みそうになったが思わず溜息が先に出た。可愛い女子が3人いきなり現れて、ご飯一緒に食べようとか言われたら隅っこ同盟は混乱してこうなるだろ! 俺も理衣亜と幼なじみじゃなかったらああなる自信がある。



 後ろ2人は俺たち隅っこ同盟と食べたくなさそうな空気があるし、相変わらず黙ったまま顔は引き攣ってるし食べてたとしても気まずすぎだろ!



 結局昼食は4人で食べようとする理衣亜を何とか説得し俺1人で食べ、渋々納得した理衣亜は別の場所で3人仲良く食べることになった。



 山崎と黒木の2人が戻ってきたのは、昼休みが終わる10分前で掻き込むように、ご飯を食べていた。

結局連絡先も聞けなかったし、俺の友達作りの第1歩が失敗に終わり、こんな前途多難なスタートにも関わらず俺は決意する。次は聞いて見せる連絡先をと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る