第4話乗れねーよ!




 別れの卒業式が終わってとうとう出会いの入学式の日が来た。

 結局スマホデビューしても俺は、スマホの連絡先に両親と妹のしか登録出来なかったのものの、これから友達作って連絡先が増えると考えたら嬉しすぎて震えるぐらいだ。

 決して決して、悲しくて震えていた訳じゃない!



「健人、ご飯よ。早く降りてきなさい」


「はーい、準備も終わったら、すぐ降りるよ」



 今日は入学式のみ、なので特に持ち物はカバンしか無い。それよりもこの時のために、鼻の頭まで伸ばした前髪を整える。



 正直邪魔だ、この前髪は! ラノベ主人公達はよく我慢出来るな。

 鼻の頭が痒くてしょうがない、そうならないように前髪を整えてるんだが……なかなか難しい。なかなか決まらずどうでも良くなってきたので俺は下に降りることにする。



「健人、随分遅かったわね? 悠里はもう行ったわよ?」


「色々あるんだよ、俺にも」


「ふーん、それより本当にその前髪で学校に行くのね…本当に切らなくていいの?」


「もう前髪のことはいいだろ! 早くご飯食べよ」



 俺は、それだけ言って黙々とご飯を食べることにする。

 お母さんも悠里も、ここ最近ずっと前髪の事を言ってくるから正直俺はうんざりしていた。

 悠里なんて口を開けば「外で私を見かけても話しかけないで」と言ってきたり「おにいは不審者になったの? 変質者になったの? 違うね、幼なじみのストーカーだったね! 一緒に交番までデートに行こうか?」とそればっかり。



 何なんだよ幼なじみのストーカーって! 意味が分からなすぎる。確かに理衣亜の事は好きだった、確かに好きだったけど! 両親は両親でそれを聞いても笑ってるだけだし、どういうことだ全く。

 そんな訳で前髪の話は正直もうしたくないわけだ。



ピーンポーーン



「こんな時間に誰かしら? 理衣亜ちゃん今日来るとか言ってたかしら?」



「さあ? 出てみれば?」



 はいはい、とだけ言ってお母さんはそのまま玄関の方に向かった。理衣亜はもう来ないよと言いたかったが理由を聞かれ振られたからとは言いたくない俺はその間もご飯を食べ続けることにする。



 全く朝早くから迷惑だ、せっかくの朝ごはんもゆっくり食べられないじゃないか。まあ俺は食べているんだけどな。



 ご飯を食べているとちょっとしてからお母さんが朝早くに来た人と一緒にリビングに入って来る。



「な、り、理衣亜!? お、お前頭どうしたんだよ!?」


「おはよう健人。 頭は、どうもしてないよ!? 健康そのものだよ!?」


「いや、頭大丈夫かとかそんな意味で言ったわけじゃ…それにその格好も…」


「健人、照れてるのかしら? 理衣亜ちゃんちょっと変身し過ぎたけど相変わらず可愛いわね」



 いや照れてるとかじゃねーだろ!? 理衣亜は本当にいったいどうしたんだ。ある意味頭大丈夫かとは言いたいけど。



 中学校の時はずっと黒髪だったのにいきなり金髪に近い茶髪だし、スカートの丈も中学校の時はしっかり膝下だったのが膝上何センチだよ!

 何があったらこんな格好をする様になるのか本当に不思議だ。



「健人そんな事より朝ごはん食べて早く一緒に学校に行こ?」


「ああ…」


「健人? 女の子は待たせちゃダメよ?」



 それから数分後には朝ごはんを食べ終えて理衣亜と学校に行くために駅の方に向かっている。

 告白して気まずいなと思いつつ、あの会わなかった休みの間だったのに会ったら会ったでやはり何ともない、会話は普通に出来た。



「な、なあ理衣亜? 何で今日迎えに来たんだ? それにその格好…」


「え? 何でって一緒に学校行くためだけど? 格好やっぱり変かな? 私の格好を言うなら健人の前髪もだからね!?どうしたの?」


「一緒に学校ってお前俺を振ったろ? 1人でいけよ。それと前髪の事は触れないでくれ色々あるんだよ俺にも」


「前髪の事はじゃあ聞かないとくね。振ったけどそれはそれこれはこれだよ? 家はどうせ隣なんだし別にいいでしょ?」



 ぐはっ……それはそれってどういうことだよ! え? 何? 俺の告白ってそんな簡単に片付けられる問題だったってことか!? あれからだいぶ経ったのに追加ダメージだぞ!



「良くねーよ、理衣亜と一緒に学校に行って勘違いされたらどうするんだ? 俺に彼女出来ないだろ? 勿論理衣亜も彼氏がな」


「うーん、私はどうでもいいかなあ」


「はいはい、花より団子ってことだな理衣亜」



 そんな会話をしつつ駅に着きホームに向かった。

ホームについても何故か理衣亜が着いて来る。なんでだ?

 俺は勘違いされたくないっていったばっかなのに……



「どうした理衣亜?」


「どうもしないよ? 健人こそどうしたの?」


「だからな俺は勘違いをされたくないんだよ。そ、それに痴漢とか理衣亜がされたら嫌だから女性用車両乗れよ」


「え……?」



 何なんだよ、えって! 知り合いが痴漢にあうとか嫌だろ!? そんな不思議そうな顔をしないでくれよ全く。


「え? じゃなくてだな? 理衣亜は可愛いんだから、とにかく女性用車両に乗ってくれ、お願いだから」


「……う、うん健人がそこまで言うなら…一緒に女性用車両乗る?」



 乗れるわけねーだろ! 何言ってんだ理衣亜は! 乗ってみたい気持ちはあるけどさ! 考えてくれよ全く。


 高校の最寄り駅に着いてすぐ理衣亜がやって来て結局一緒に高校まで並んで行くことになった。

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