第8話 団員募集

「ふむう……。ニホバルよ、これらがお前の言う楽器とやらか?」


「左様に御座います父上」



ザウィハーに戻って来たニホバルは、ドワーフの街の成果を父王ロンオロスに披露していた。


「して、これらを使った成果は何時頃上がりそうかの?」


「道具が揃ったので、

 これから奏者を募集し育成しますので、まだ暫し掛かりましょう」


そうなのだ。

楽器があれば、楽器が演奏する事は無いし、

道具さえあれば、誰でも即時に扱える訳じゃない。


まだ奏者すらいない状況なのだから。

これからギルドに募集をかけなければならない。

募集するのは、何も魔族限定には拘らないつもりだ。


要はある程度の適正を見極めて、実際に道具を扱わせ、

応募人員の資質に合わせた配置を行った上で練習に入りたい所。


ザウィハーズ公演は幸いにも、王都内で結構な評判になっている。

最近では魔族領を越えた他族領にも噂は広まっているという。

そういう新しい音楽に関する募集を各ギルドで人員を無条件で開始をする。

無条件ならば、貴貧も性別も種族も関係無く集められるはずだ。


まず手始めに楽譜が無くても何とかやれそうなのが良いな。

ドラムとか、和太鼓とか、アカペラとか。





「ニホバル様、お客様が訪ねて参りました。ただ、そのお客様はちょっと……」


募集を出して、しばらくしてから俺に来客があった。


何だろう?何を途惑っているのかな。

恐らく音楽の件だと思うけど。

と、なるとギルド経由じゃないのが少々気になる所。

それでも会ってみるか。


「会おう」


俺は客人を客室に案内するように伝えた。

俺の目の前に侍女から案内され現れた客人は


リャナンシーの『ルノア』という女性だった。


姿形は人族と変わらないように見えるが、水色の長髪、青い瞳、色白の肌。

全体的に色が薄い印象を受ける、やや小柄な女性である。


彼女は募集を見て、直接俺の所に来たようだ。

理由は楽器演奏は出来ないが、持つ能力で貢献したいという理由があった。

楽器奏者希望じゃないから、ギルド経由にしなかったらしい。



城の書庫でツェベリにリャナンシーについて調べてもらった。


彼女の種族は『妖精リャナンシー』

(リャナンシーに取憑かれた者は、詩や歌声の才能と引き換えに早死にする)

返って来たのは、そういう報告書だった。


【詩や歌声の才能と引き換えに】

内心驚喜した。こういう所は非常に魅力的だ。

むしろ俺が切望して来た人材のストライクゾーンで該当する。

これから来る人材の育成に欠かせない人材だろう。


しかし【引き換えに早死にする】というのは大きなデメリットだな。

人員の才能を花開かせる代償に命じゃあ……。

惜しい。

非常に惜しい。

余りにも惜しい。

惜しいが捨て難い。


ルノアは言う。


「あ、あの、私、取憑きとか命を縮めるような事を女神様の命令によってしませんので」


「女神様? 誰だろう、そんな知り合いはいないし」


「その女神様とは、どなたですか?」


ツェベリは聞いてみた。

しかし残念ながら、女神様の詳細は教えては貰えなかった。

はて?どんな神様が俺の計画をバックアップしてくれてるんだろ?

そもそも音楽の女神様なんているのかな?


まさか弁天様じゃあるまいな?

何か解らんけど、その女神様が身元保証人って事かな?

とにかくデメリットが無ければ断る理由が無い。

取敢えず情報保存用として履歴書を書いてもらう事にした。


ルノアの担当業務は【養成所主任】に採用決定した。





しばらくしてギルドから応募の者が殺到したと連絡が来た。

殺到ね――ザウィハーズ効果が絶大だったという事だろうな。


さて、採用をどうするか。

手始めに始められそうなドラムとか、和太鼓とか、アカペラとか。

そういう仕分けで選んだ方が良さそうな気もするな。


例えば、

和太鼓とかなら、力が有りそうな奴。

ドラムとかなら、すばしっこそうな奴。

アカペラとかなら、声が綺麗な奴。


うん、そういう分類だな。

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