今夜は、あなたと

今、目が合った。



あなたは運の悪いひと。

だって、あなたの心はもう私に夢中。

そうでしょう?



ほら。

気になって仕方ない。

私は、もうあなたと目が合ったことすら忘れたのに。

あなたの眼差しは、私から離れられない。


さあ、どうする?

今なんとかしないと、私はもうすぐ席を立つわ。



思ったより子供ね。

一度だけ、チャンスをあげる。

瞳の隅に、あなたをいれてあげる。

微かに口元を引き上げるなんて、いつもは有り得ないサービス。



ほら。

立ち上がった。

その長い足で、大股に私の方へ歩み寄る。




今夜は、あなたと。




あなたは運の悪い人。


なぜって?


だって、明日の夜は、私はあなたを忘れてる。

たとえ今夜が、世界が溶けるほどの夜でも。


朝日の一筋が地上を照らしたら、全部終わり。



なんだってそう。


朝が来たら、終わりなの。





明日のことなんて、話すのはやめましょう。


今夜は、あなたと。

全て忘れて。



いいでしょう?

今あなたと交わすこの想いだけは、間違いないんだから。





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