"Tristeza"(『悲しみ』)

 僕の大好きな曲がある。

 底抜けに明るい気持ちが湧き出して、

 まるでお祭りの中にいるような気分になれるんだ。



 このメロディを聴いているうちに——

 生きている時間って、こんなお祭りみたいなものなんじゃないかな……そんな、不思議な気持ちになる。



 この曲の原曲は、過ぎ去った幸せを思い、『悲しみよ、消え去っておくれ』と歌う、とても悲しい曲。

 そんな原曲を裏側に隠しているから一層、この旋律はこんなにも爽やかに、明るく心に響くんだろうか。



 せっかくなら、楽しくやろう。笑っていよう。

 最後のその一瞬まで。


 そんなふうに聴こえるんだ。



 ベッドの上で、イヤホンをつけてこの曲を何度も聴いている。





 僕は、もうあまり長く生きられない。





 神さま。

 僕に、もうこんな短い時間しかくれないのなら——


 最後まで笑顔でいられる力を、僕にください。

 それくらい、願ってもいいでしょう?




 どうか、最後の瞬間まで、

 心に笑顔を浮かべていられますように。



 そして、叶うなら——みんなに笑顔を見せていけますように。



 まるでお祭りを思い切り楽しんだ後のような、そんな笑顔を。





 そのくらいの願い事なら——叶えてくれるでしょう?



 ねえ、神さま。






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