モグラの恋

「ああ……すごくいい匂いだ……これ、誰だろう?」

「お前もそう思う?すんげえいい匂いだよなー。最近この辺に引っ越してきた子らしいんだけど、俺もまだ実際会ったことなくてさ」

「あー俺、とっておき情報知ってるぜ。その子、フェロモンばっかすげえけど、実は相当いい年のおばちゃんらしいってさ」

「はあ?こんなかぐわしいフェロモンを持ってる子がおばちゃんなわけねーだろ!?それどこ情報だよ!?」

「俺のテリトリーの上の家に住んでるネズミ情報」

「ちっ、ネズミの話なんか信じられっかよ。そもそもそいつ、どこで彼女を見かけたんだよ?第一メスのカオとか歳とか、目の見えない俺たちに関係あるか?」

「……だよなー。

 実は俺もこのフェロモンにメロメロ……って、おい!なんか匂い近づいてきてねえか?もしかして……このすぐ横の通り道だぞこれ!!なあ、行ってみようぜ!!」

「うひゃ〜〜俺もいくっ!!!」


「……僕は、そういうノリは好きじゃないなあ……

 ……ん、僕の後ろに、誰かいる?微かに泣き声が……」

「……ええ、ここにいます……くすん」

「全然フェロモン匂わなくって気づかなかったよ……君、どうしたの?」

「私……さっき彼女を追っかけてったあの彼に、ずっと片想いしてて……

 でも彼、私の存在なんかには気づいてもくれないの。私、全く匂わないから。

 あんなクサイ女に彼を取られちゃうのかと思うと……悔しくて悲しくて……グスグスッ」

「ああ、君の気持ち、よくわかるよ……実は僕もオスのフェロモンすごく弱いタイプでね。今まで何度好きな子をクサイ男に横取りされたか……

 ……ねえ、君、僕と付き合う?よくよく嗅いでみると、君はとても甘くて優しい匂いがするよ」

「え……本当ですか?(ぽっと頬を染める)

 はい……喜んで……

 あなたは、とても優しい方ですね」


「……(恥ずかしげに)これからよろしく。大事にするからね」

「こちらこそ。これでも私、子育ては自信あるんです。子供大好きだからっ♡」

「ほんと!?僕も、子供はいっぱい欲しいんだよ♡♡

『ああ、この子と僕は相性ピッタリだ……僕はなんて幸せ者だろう!

 やっぱり、ニオイに騙されずに苦労して手探りしないと本当の恋は見つからないってことだよなーっ♪』」



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