第4話 中原行雄の場合
小雨がぱらつき始め、行き交う人の波が大きくうねる中を、ベージュのスーツに身を包んだ女がさっと追い越していったかと思うと、急に立ち止まりこちらを向いた。
「突然お声がけして申し訳ございません」
女につられて人波を外れて端に寄った。
「中原行雄さまでいらっしゃいますか?」
女は顔を見据えて尋ねた。
(別嬪さんじゃないか!)
見たところ、絵に描いたようなキャリアウーマンの風情である。
とっさにうまい形容は浮かばないが、美人、インテリ風、シックな装い・・・
必要条件は満たしている。
「はい、そうですが、何か?」
このような美形からお声がかかるとは、まさに想定外の喜びであったが、男は心の興奮を悟られまいと努めて冷静に応じた。
「中原由恵さまがお会いしたいとのご希望です」
男は一瞬耳にしたことの意味が分からず、口を開けたまま相手の顔を見つめた。
女のほうは表情ひとつ変えることもなく話し続けた。
「朝晩きちんとお薬は飲んでおられますか? 朝晩ちゃんと血圧を測って手帳につけて、お医者さんに見せてください。缶ビールは一日一缶、ご飯は一杯だけ。腹八分で我慢してください。ご飯の後、すぐに甘いものはやめてください」
女の口から聞き慣れた由恵の口上が淀みなく流れた。
「何を言ってるんです。由恵は亡くなってからもうすぐ半年です」
頭の中が整理できないまま、男は怒りの感情を隠せずに言い返したが、相手は一向に怯まない。
「京都の紅葉はきれいでしたね。来年もまた十月に来ようと約束しましたね。美濃吉に傘を忘れて、仲居さんが追いかけてきて届けてくれたのに、横柄な態度をとったと、由恵さまから怒られてしまいましたね」
混乱する男の頭の中で何かが音を立てて回りだしている。
何で、そんな内輪のことを沢山知っているんだ。
この女は誰だ? 何だ?
「困惑させてしまい申し訳ございません。わたしとお会いいただくのも、これが最初で最後ですし、中原さまにはわたしの記憶も残りませんのでご安心ください。
由恵さまとお会いいただけるのかどうかだけご返事ください。
明確にお会いになると仰らない限りは、ご辞退されたものと考えさせていただきます」
いったい何だ、これは? 詐欺か? 何を狙ってるんだ?
でも何故あれだけ多くのことを知っているんだ。自分と由恵以外には知らないことばかりだぞ。
四十年近く連れ添った由恵は、文字通り何の前触れもなく、あっけなく逝ってしまった。
二人の間には子供がいなかった分、世間一般の夫婦よりは近い距離で人生を歩んできたはずだ。かすがいがなく、間仕切りも希薄であっただけに喧嘩もよくしたが、角を突き合わせる時間も短く、気がつくと共通の趣味であったミュージカルやスポーツ観戦を話題に話の花が咲いていた。
今思えば、喧嘩も息抜きで、生活のリズムに組み込まれていたのかもしれない。
中年を過ぎる頃には、掛け合い漫才よろしく、自分が突っ込めば、由恵がぼけてみせ、由恵が突っ込んでみせれば、自分がぼけに回って、会話を楽しむ余裕も間も出来たが、自分としては遠からずやって来る冬への備えのつもりで由恵との一体感をもう少し強めようという気持ちもあった。
それがどうだ、想定外の速さで起こってしまった。しかも逆の順番で!
老後を考える時には、自分が先に逝き、残された由恵に可能な限り不自由のない余生を送らせるにはどうすべきかの視点で考えた。ほかのオプションはなかった。
それが・・・すべてが根底から崩れてしまった。
人生とは実に皮肉で、予断を許さぬということを、こういう形で知らされるに至り、控えめに言っても人並みの、そして年齢相応の分別は身につけていると自負していた行雄は大恐慌を来たし、半年を経過した今も、その後遺症に苦しんでいる。
まさか、由恵が先に、それも六十そこそこで逝ってしまうなど、まさにこれこそが青天の霹靂であり、嘘だろう、の世界である。
「どうなさいますか? 由恵さまのご希望を容れてお会いいただけるのか、あるいは、お会いにならないのか、二つに一つでお答えください。わたしはもう失礼せねばなりません」
女が『由恵さまのご希望』と口にした瞬間に、行雄の口も動いていた。
嘘でも何でもいい、由恵の希望、と言われれば、それが何であれ無条件で受け容れるほかはあるまい。
「わかりました」
そう答えてすぐに、行雄は自分の曖昧な言い方を、女が誤解なく肯定の意味にとってくれたものかどうかと不安になった。
会います、と明確に言うべきところを、嘘か誠かわからぬ茶番に真面目くさって反応する自分を恥ずかしく思う気持ちがそうさせたのであろうか。
そうした不安が行雄の心によぎった隙を突いたかのように、女はさっと踵を返すと足早に遠ざかって行く。
「ちょ、ちょっと、君!」と声をかけたものの、女は振り返ることもなく人ごみの中に消えてしまった。
随分と時間が経過したように感じていたが、目を転じれば携帯傘を取り出したり、雨宿りの場所を探して小走りする通行人の姿が目に入り、女との接触がほんのわずかの時間であったことを知らされると、摩訶不思議な気持ちになった。
何じゃ、こりゃ!
こう毒づいて、地下鉄の駅へ速足で向かいながら、今しがたの出来事は、行雄の記憶からきれいさっぱりと消えていった。
夕飯を手料理の定番であるスパゲティナポリタンと決して愛想が良いとは思えぬ冷奴で手軽に済ませると、テレビのチャンネルを巨人戦のナイターに合わせてから、缶ビールを開けた。
明日はかつての同僚たちと久しぶりのゴルフで、七時には家を出なければならないが、由恵が亡くなってからは、十一時就寝、六時起床のリズムが定着しているので一向に苦にならない。
念のためにと思い目覚ましをかけるが、鳴る前にきちんと目が覚める。
独りの生活が日常になりつつあるが、ふと気を緩めると、横から由恵が顔を出して、なぁに?と、蓮っ葉に声をかけてくるような錯覚が襲う。
何かにつけて由恵のことを思い出すうちは、まだまだ独居老人としては素人の証だと自嘲する。それにしても思い出すよなあ。
「小林です、よろしくお願いします」
そう言うと、小柄な女性はぴょこんとお辞儀をして、行雄の顔を見上げた。
「中原です、よろしくね」
気さくに挨拶したつもりであったが、若い女性の前で多少の緊張を覚えた。
「中原君はでかいんだよ。小林さんは身長どのくらい?」
課長が尋ねると、女性のほうはかわいらしく笑いながら、152㎝しかないんです、と答えた。
「中原君は180ぐらいか?」
「正確には182㎝です」
「ということは、30㎝の違いか! 小林さんと話すときには、君が腰をかがめて話すんだぞ。さもないと、小林さんが首を痛めてしまうからな」
課長は笑いながらそう言うと、気の利いたことを言ったつもりで満足そうに頷いた。(今なら、差別発言だな。いい時代だったよ。)
由恵は、いつもふと気を抜いた時に、断片的な小景の連続となってよみがえってくる。
「こうしたほうが良いと思うんですが」
「そうかなあ、うん、たしかにそうだなあ。じゃ、そうしてくれる?」
「はい、わかりました」
新人なのに、なかなか分かってるじゃん。手際もいいしさ、それに顔もかわいいしさ。性格は・・・・ちょっときついけど、ま、しっかりしてるほうがいいんじゃないの。
周囲から聞こえてくる由恵の評価は、行雄の感想と驚くほどに似通っていた。
「あの娘はいいぞ、どうだ、中原。いいと思ったら果敢にアタックせにゃあ。誰かに取られちまうぞ!」
課長のけしかけも頻度を増した頃に、たまたま課内旅行の幹事を共同で引き受けることになり、二人の距離は一挙に縮まって、そのまま結婚へと発展した。
「地球上には数十億の人間が住んでいる。その中で知り合い、結婚するなんて、何たる偶然だろう、これは奇跡だよね」
我ながら味のあることを言ったものだと、柄にもなくセンチになりながら夜空を見上げていた行雄は、口をとがらせて反論する由恵のほうへ向き直った。
「いいえ、それを言うなら、まづは同じ人間に生まれて、というところから始めてくださいよ。どっちか片方でも犬か猿に生まれてたら、結婚は出来ない訳だから」「えーっ、そっからやんなきゃダメなの?」
「ダメです!」
「面倒だね、ったく」
時折、由恵は冗談とも本気ともつかぬ物言いで突っかかってくることがあり、これは結婚前から結婚当初までは、あばたもえくぼであったが、行雄の虫の居所が悪い時には、夫婦喧嘩の口火になった。喧嘩といっても、お互いに手を上げるわけではなく、由恵の言葉を借りれば、『口汚く罵り合う』だけのものであったが、子供のいない二人だけの家庭とあれば、誰かに遠慮する気遣いもなく、好きなだけの時間を割いて、怒鳴り疲れたところで、どちらからともなく覆水が盆に返ったものである。
「君も強情だね。ごめん、の一言もないの?
ごめんなさい、の一言ですべて終わるのに、君は開き直り専門だね。
アジの干物じゃないんだから」
「それ、使い古されたダジャレですけど。
それに、わたしが謝るんですか?」
「いいよ、今晩は夕飯の支度しないで。どっか食べに行こうか」
「え、あ、わかりました」
「これだよ、急に素直になって」
由恵が小首をかしげながらニヤッと笑い、行雄も小首をかしげて、しょうがねえなあ、と呟くのだ。
結局のところは、いつも行雄が折れて収まるのだ。
ドアを開けて中に入ると、奥のほうから由恵の声がした。
「おかえりなさい。ごめんなさいね。風邪ひいちゃったみたい」
「薬飲んだの? 熱はあんの? 食欲は? 何か食べたいものとか、飲みたいものはないの?」
心配顔で覗き込んで、矢継ぎ早に尋ねる行雄に、由恵はベットの中から、けだるそうに答えた。
「薬飲んだら、熱も下がったようだし、落ち着いたみたい。大丈夫だから、心配しないでね。カレーつくってあるから、悪いけど温めて食べて」
「料理なんかしないでいいのにさ。具合悪い時は、薬飲んで静かに寝てるのが一番いいんだよ」
「そうはいかないでしょ。あなたが一所懸命働いてるんだから。あんまりそばに近づかないで。インフルだったら移っちゃうから」
「明日は寝てていいよ。自分で起きていくからさ」
翌朝、行雄が目覚めると、由恵がキッチンに立っている。
「大丈夫か、おい」
「これだけやったら、また寝かせてもらうから」
そう言うと、テーブルにサラダとトースト、コーヒーをのせた盆が置かれた。
「そんなに頑張んないでいいんだよ。ゆっくり寝てなさいよ」
由恵は早くも寝息を立てていた。
一方、行雄の具合が悪い時は、由恵が甲斐甲斐しく看病してくれたものだ。
「ようやく、会社休む覚悟ができたのね。具合が悪い時は、きちんと治しておかないと、いつかまた倍になって跳ね返ってくるんだから。気をつけてね。さ、病院へ連れて行くから、これ上から羽織ってね。えー、行かない? 何言ってんの、もうアポ取っちゃったわよ、ほら早く、早く」
病院嫌いの行雄である。
由恵が運転する車に乗せられて病院へ連れて行かれる時には、借りてきた猫のようにおとなしく、従順になった。
定年退職となり、還暦も過ぎていった。
行雄は人生後半の節目を迎えるたびに、時間の経過がますます加速度を増していることを実感した。
「それはもう、わたしたちも歳をとったということよね」
三歳違いの由恵も昨年還暦を迎えたが、口にはあまり出さぬものの、体調は必ずしもよくない様子だ。
「年取ると、あちこちが傷んでくるのがよくわかるわ。機械の部品みたいなものだわね」
二人連れだって年に一度の定期検診は受けていたものの、行雄が人間ドッグを受けるよう勧めてみても、大丈夫、そのうちね、と言ってはぐらかすのが常で、わたしのことより自分のことを心配してね、わたしより年取ってるんだから、で会話は終わった。夫婦そろっての病院嫌いであった。
ああ、それにつけても後悔は尽きない。
あの時に引っ張ってでも病院に連れて行くべきであったが、大丈夫、自分のからだは自分が一番よく分かってるんだから、なんせ付き合いはあなた以上に長いんですから、と笑って取り合わなかった。
それでもさあ、と追い詰めると、最後は寿命なんだから、と言ってすり抜けた。
由恵は肉親との縁が薄い境遇であった。
多感な中学生の時期に父親が病死し、懸命に働いて短大まで出してくれた母親も、二人の結婚後まもなく病死した。
一人っ子で両親も早くに亡くして親類はいなかった。
早世の家系であることをもう少し考えてやるべきだったな、と未だに後悔を募らせる。
明日のゴルフを考えれば、今日は投了だとばかりに、テレビのスイッチも心のスイッチも消して床に入ると、すんなりと眠りに落ちた。
「ごめんね、夫婦の間で隠し事はなしと約束したのに、実はわたし、ひとつ秘密があるのよ。まあ、男のひとには一つ、二つ、いや三つかな、奥さんに言えないことがあるっていうから、いいでしょ、わたしだってさ。
さーて、わたしはあなたに一体何を隠していたのでしょうか? 三分以内でお答えください!
よーく考えてね。
はい一分経過。
二分経過。頑張って!
残り一分を切りました・・・30秒・・・20秒・・・10,9,8,7,6,5,4,3,2,1。
残念ながら時間切れです。
答は・・・へそくりです!
驚いた?
わたしのこと、たまには結婚式の写真を眺めて思い出してね」
奇妙な夢を見たもんだな、と思いながら目覚めた。
久しぶりに由恵節を聞いたようで懐かしくもあり、恋しくもありで、複雑な心具合になった。
洗面を済ませると、キッチンに入り、やかんに火をつけ、トースターへ食パンをセットする。独りになってから、すっかり定着したルーティーンである。
かつての同僚との交流は、『年金受給者の集い』と、皆が苦笑交じりに呼ぶように、めっきり飛距離の落ちたゴルフを終えると、ハイコスパの居酒屋で日が落ちる前から飲み会となり、二次会はなしで八時前にお開きとなる。
参加者全員が、これから櫛の歯が欠けていくように仲間が減っていき、さて最後の一人は誰になるのやらと寂しい展望を胸に秘めながら、笑いを誘う四方山話に花を咲かせる。
由恵が生きていた頃は、帰宅後に分かち合う話題を仕入れる場ともなっていたが、独り暮らしでは披露する相手もいない。
灯りのない我が家に帰宅し、手を洗ってパジャマに着替えると、カレンダーに次回の日取りを書き入れてから、ソファに座り込んで、ふっとため息をついた。
ちょっと疲れたな、ゴルフ場でシャワーも浴びたし、風呂はいいか、と思いながら、ふと昨夜の夢を思い出した。
よいしょ、と掛け声を上げながら、寝室の写真立てを手に取ってリビングへと引き返した。
若い二人が結婚衣装で屈託なく微笑んでいる。
四十年後に独りでこの写真を眺めて当時を偲ぶことになろうとは、微塵も思っていない自分の笑顔に、行雄は深いため息をついた。
時間は残酷だな、そう思いつつ指先に微妙な違和感を感じて裏側を覗くと、ほんの僅かばかりであるが不自然に盛り上がっている。
何か挟まっているのか、とフックを外すと、型紙と写真の間に薄い四つ折りの紙が入っている。破らぬように慎重に開いてみると、細かな文字が左から右へと頼りなげに這っている。
筆圧が足りぬためであろうか、ところどころかすれている。
元気だったころの由恵の筆跡を思い出して、行雄は胸を締めつけられた。
死ぬ間際に書いたものだろうか?
あなたがこれを見ているということは、わたしはもうそこにはいません。
写真立てのフックを外して中をあらためるなんて、あなたはおよそしないひとだけど、でもわたしがいなくなれば、置いておくにせよ、処分するにせよ、これを手に取ったり触ったりすることがあるだろう、と思ってここに入れました。
ちょっと心配ですが、この手紙を見つけてくれることを信じて書きます。
あなたには本当に感謝しています。
口は悪くてもやさしい心遣いで、いつも大事にしてくれて幸せでした。
子供のいない生活でしたから、時にはわたしが子供になってあなたに突っかかってみたり、邪険にしたりしましたが、いつもうまく取りなしてくれて、心の中では、さすがに我が旦那だと感心していました。
結婚した時の約束を破って、わたしにはひとつだけあなたに言わずにいたことがあります。(あなたについては、訊かないから安心してね。)
わたしは、へそくりをしました。
それは金婚式のお祝いを目的にしたものです。
その頃わたしたちは、貯金の取り崩しもとうに底をついて、年金だけで細々と毎日を送っているかもしれません。(そうに違いありません)
でもせめて金婚式は、ぱっとお祝いしたいと思いました。
わたしたち最後のぜいたくになると思いました。
だから怒らないでね。
でも金婚式のお祝いはもう必要ないので、あなたが好きなことにつかってください。
新しいゴルフクラブ我慢してたでしょ。買ってください。
メイプルリーフ金貨が、アコちゃんのおなかに入ってます。
あなたと結婚して幸せでした。
次もあなたでいいです。
からだに気をつけてわたしの分まで長生きしてください。
由恵
行雄は立ち上がると、窓際に鎮座する犬のぬいぐるみを抱えて腹をさぐった。
指先にごつごつしたものがあたり、上下に揺すると重みを感じた。
アコは十年ほど前に死んだ愛犬の名前だ。
子供代わりに、夫婦で溺愛したが、名前を何にするかで揉めた折に、由恵が主張する『真珠』では何とも犬には不似合いだろうと、結局は真珠の連想から、あこや貝のアコに落ち着いた。
健康な犬で十年あまり、二人の生活に潤いを与えてくれたが、死んだときの悲しみに二人ともども打ちひしがれた。とりわけ由恵にあっては、ペットロスによりすっかり落ち込み、これは何とかしてやらねばと、行雄が辿り着いた先は当時流行していたリアルなぬいぐるみであった。
ぬいぐるみと聞いて、即座に下を向いた由恵であったが、写真を元にして忠実に復元との触れ込みは伊達ではなく、その完成度の高さに由恵も感嘆し、リビングの窓際を定席とするようになった。
由恵がいなくなってしまうと、窓際に目をやるたびに、アコちゃんと呼びかける由恵の声が聞こえるような気がして、行雄には辛かった。
といって、アコちゃんが目に入らないと、行雄もますます孤独を痛感させられるようで片づける気にもならず、そのままにしてあった。
由恵、有難う。
あとどれくらいになるのかは、わからないけど、残された時間を頑張って生きて行くよ。また会える日を楽しみにしているよ。
行雄は今回のゴルフコンペに入れ込んでいた。
「ナイスショット!」
キャディーの歓声を掛け声にして、背後からえーっ、おーっ、といった驚きの声が上がった。
「どうしたん、すごい飛びじゃないか」
「あれ、ドライバー変えたの? あ、これ、あの高いやつ、買ったのぉ!」
「奮発したねぇ」
行雄は得意満面で応じた。
「女房の形見のぬいぐるみに、へそくりを見つけちゃったんですよ。ラッキー、ってなもんですよ」
「お世話かけました、有難うございました。
ああ、これで安心しましたわ」
女性はそう言って、ぴょこんと頭を下げると、足取りも軽く歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます