第34話 勇者ちゃん、もう一人の勇者ちゃんと会う。⑦
「え、えっと。頼花くん、それ本気で言ってるの?」
「ああ、本気も本気。超本気だ」
差し障りない程度の俺の出自と、アムの存在をぼかしたままディアが俺のそばに居る理由を説明した。
淡島のリアクションは、まぁ想像して通りだ。
その眼鏡越しに見える目を開き、何がなんだかわからないと言った表情で唖然としている。
信じられないのは分かるが、自分のエピソードも大概だろうに。
「国家機関とか
「そりゃそうだ。こっちだって分かんないことだらけで、誰がどう動いてるのかさっぱり把握してないからな」
今んとこ、アムとあの三馬鹿次元獣の情報が報告されるのを待ってる段階だ。
そういや、あいつらどこに保護されてんのか南条さん教えてくれなかったな。
「……ヤエより強いディアがここにいることが、勇者の存在を、証明してる」
「お、おい」
突然話に割り込んできたのは、両手に持ったメロンソーダをストローで啜るディア。
ケーキ食べ終わって暇だからって、いきなりそういう言い方で話に入ってくんなよ。
「なっ、聞き捨てならないです! ヤエは決してアナタより弱くないです!」
ほら。
勢いよくフォークをテーブルに叩きつけて、ヤエは前のめりにディアへと抗議する。
「……だって、現に弱い。お昼にディアが撃った魔法、ヤエは結構強めの結界で打ち消した。ディアだったら、結界を貼るまでも無い」
「あれはアナタが突然ぶっ放してきやがったからです! ちょっとびっくりしただけで、あんなの全然本気じゃなかったのです!」
「ちょ、ちょっとヤエ。落ち着きなよ」
「いいえ落ち着いていられますかこれがです! 勇者と共に力を増していく
ディアはディアでまだ下着類を着用して無いからみっともないってのは全くもって同意なんだが、裸体を晒すってとこには異議を申し立てたい。
「……これ、あったかい、よ? それと、リョウスケのいい匂いに、包まれてる。まるで抱きしめられてる、みたいで。良い」
ディア!?
なんでお前はそうも誤解を招く言い方をするんですか!?
「は、破廉恥な! 久、聞きましたか!? このトーヘンボクは幼女に手を出す鬼畜やろーなのです! ヤエはこんな変態が久の配偶者になるだなんて断固反対で──────!」
「わぁああああああああああっ!」
「──────へぶぅ!」
お、おい淡島!
「ちょ、今の結構良い当たり方したけど、大丈夫か?」
凄い良い角度とスピードでボディにブローが入ったぞ?
しかもその前にくの字に折れ曲がる倒れ方、結構ヤバいダメージを受けたと思われるんだが。
「だっ! 大丈夫! 大丈夫だから! ちょちょちょ、ちょっと私たち用事を思い出したから、もう帰るね! また明日ね!?」
「あ、おう……」
幼女がしちゃいけない白目の剥き方をしたヤエを小脇に抱え、淡島は慌てた様子で席を立って出口に向かって走り出した。
その速さを見て、ああアイツ本当に『勇者』なんだなぁって納得しちまった。
だってもう、ギュンっ感じで風を置いてけぼりにしちゃってんだもん。
「な、なんだったんだろうなアレ」
「……さぁ?」
ディアと顔を見合わせて、小首を傾げる。
まだ聞きたいこと、有ったんだがなぁ。
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