第14話 勇者ちゃん、戦場にて高らかに嗤う⑧
「待ちなさい下郎どもっ!」
「ちょっアム!」
せっかく向こうが気づいてなかったから奇襲仕掛けてりゃ楽なのに、何もご丁寧にお声がけしなくても良いだろうが!
「ああん!? なんだぁ!?」
ほーら!
もう臨戦態勢取っちゃてるじゃん!
頂上の岩の一つに着地したアムが
「か弱き小動物────ちっ、ちっこくないけど! か弱き動物をいじめる様な非道な真似は、太陽神と天とこの勇者アム・バッシュ・グランハインドが許しません! 覚悟しなさい!」
あーあ、どこの時代劇だよ。
ったく!
俺はその岩の下に着地し、腰を落としてナイフを構える。
「……デデル、あれがハーケインの坊やを仕留めた勇者です」
「────へぇ。あの女が? そりゃあ良い! あの坊や! あんな弱そうな奴に負けておっ死んだのかよ! ぶひゃひゃひゃっ!」
ガジューの指摘の何がツボったのか知らんが、笑い声まで醜いとはお手上げだ。
アイツ、見ているだけで鼻が曲がりそうなほど臭そうだな。
「ええいっ! 何がおかしいのですか! 大体ハーケインは坊やって歳じゃなかったでしょう!? 見た目すっごい汚らしい、気持ち悪いオジさんでしたよオジさん! 人の胸と太ももばかり狙って攻撃してくる変態でした! しかも武器持ってるのに素手で!」
おい聞いてねぇぞ。
そいつ本当に魔王なのか?
お前らの世界、そんな奴に支配されかけてたの?
大丈夫?
「へぇ、アンタまぁまぁ可愛いじゃない? まぁ、アタシの美貌とおっぱいの大きさには遠く及ばないけどねえ!」
ベラネッダが自分の片乳を揉みしだきながら、くねくねと腰をくねらせる。
なんだそれ、それで色気振りまいてるつもり?
ぶっちゃけそのだるんだるんな体型のせいで、固まりかけのセメントが波打ってる様に見えて気持ち悪くて酔いそうなんだけど。
「お、おおおっ、おっぱいは関係ないでしょうおっぱいは! 第一なんですか貴女その格好は! そんなに肌を露出させて、その鎧になんの意味があるんですか! 仮にも乙女なのだから恥じらいと清楚さを──────すいません。貴女、女性で合ってますよね? 自信無くなってきました」
ベラネッダの体をまじまじと見つめ、アムは俺に首を向けて同意を求めた。
分かる。
俺もちょっと自信ないもん。
「あぁ!? どっからどう見ても絶世の美女だろうが! なぁガジュー! デデル!」
「ん? お、おう」
「そ、そうですね。ベラネッダは、まぁ、お美しい……ですよ?」
あれ、意外と慈悲深い奴らなんだなあの男ども。
めっちゃ目線合わせない様にしてるけど。
ベラネッダに気遣う精神があるとはお見それするぜ。
悪いが俺は頷けません。アイツが美人だなんて口が裂けても言えない。
「と、ともかくだ!」
「おいデデル。そしてガジュー。ともかくじゃないんだよ。なんでアタシから目を逸らすんだい? ちょっとこっち見なよ。ほら」
「と・も・か・く・だ! 俺ら三天将に歯向かうたぁ馬鹿な連中だぜ! なっ、ガジュー!?」
「そっそうですねっ! 暗黒次元神様の信頼も篤いこの三天将に歯向かうとは、なんて馬鹿な連中でしょうか!!」
おい、テンパりすぎて話す内容被ってんぞ。
「オレは剛力のデデル! 三天将一の怪力だ!」
「ワタシは知力のガジュー! 三天将一の策謀家です!」
「……アタシは美貌のベラネッダ! 三天将の紅一点にしてリーダーさ!」
なんだか背景で爆発でも起きそうな自己紹介とポーズを決めて、三天将は不敵に笑った。
「でも三天将って自称だモフ?」
「えっ、てっきりそういう役職があると思ってたサバ」
「あの三人、いろんなところでやらかして、どこにも入れてもらえなかったぞな。今回だって別の魔将の仕事勝手に横取りしちゃって、揉めに揉めて中々ここに来れなかったって聞いたなぞな」
「ウルセェぞ次元獣ども!」
なぁ、真面目に戦闘する気あんのかお前ら。
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