第8話 勇者ちゃん、戦場にて高らかに嗤う②
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「ん? 言語はやっぱり違うのか?」
「はい。私達の世界でも国や地方、亜人なんかの細かい種族でも多様な言語に別れてまして、戦争が起こる原因とかにもなってたんですよ。それで二十年ぐらい前に、平和主義を唱えるのホビットの国が新しい魔法を生み出したんです。それが『
「ほえー、じゃあ今俺が喋っている日本語が、アムには母国の言葉に聞こえるわけだ」
「はい。月が一回沈む毎に効果が無くなるんですけど、かけ直せば一日保ちます。すっごい魔力を消費するんですがほら、私って勇者ですから」
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「竜の召喚ねぇ。一回見てみたいな。俺が見た事ある竜って言ったら、グロテスクなミミズみたいな奴だったし」
「専門じゃないんで召喚スキルは持ってないし、スキルでの強化補助もできないんですけど。その代わりこの触媒の緑光石がある限りは何度でも契約した竜を呼び出せます。しかも私が契約したのは最強種の一つであるハイブラストドラグーンって言って、口からビームが出ます」
「ビーム」
「ええ、ビームです。なんて言ったってほら、勇者である私の契約竜ですから」
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「えっ、この鎧が?」
「古代に滅んだ文明の技術をふんだんに盛り込んでまして、自動サイズ補正から8段階の硬化と軽量化、それに受けたダメージを蓄積して私の魔力を倍増させる魔法陣も組み込んであるんです。着用するにはかつての所有者である剣聖の幻体と三日三晩戦って生き残らねば認めてもらえないんですが、ほら私ってばなんて言っても勇者ですから。初日にボッコボコにして泣かせてやりましたよ。ふふん」
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「これが神剣なぁ。豪華なブロードソードって感じだな。大理石みたいな真っ白い刀身に、真っ赤な装飾がめっちゃカッコいいな」
「はい! 太陽神バデュラ様がその伊吹を吹き込んだと言われているので、ディアンドラは純粋の白と燃える情熱の赤で施されたと言い伝えられてます!」
「ちょっと触っても?」
「あっ、気をつけてくださいね? ディアンドラは私が斬ると思った物しか斬れませんが、私以外が触れると────」
「あっつ! なんだこれめっちゃ熱い!」
「────皮膚が溶けるほどの熱を発するって言おうとしたんですけど、平気なんですか? 前に泊まった村で盗賊に盗まれかけた時なんか、その盗賊は跡形も無く蒸発しましたけど」
「先に言えよそんなおっかない注意事項!」
「いえ、猟介ならなんと無く平気なんだろうなぁって」
「うわー、めっちゃ溶けてる。俺じゃなきゃ大変だったぞ」
「やっぱり平気じゃないですか……一体どうなってるんです? その身体」
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「えっ、じゃあ神剣って消せるの?」
「はい。本来は私の右手の平に刻まれた聖印に収納してあるんです。これですね」
「手裏剣みたいな印だな」
「シュリケンって何です? 常に隠し持って剣の威光を抑えるのが理想なんですけど、私ってば、ディアンドラを常に持ってないと不安で不安で。夜も抱えて眠るほどです」
「ああ、だからさっき──────」
「すぐに忘れてください! 男の人に見られた事、一度も無かったのに!!」
「わ、わかったから振りかぶるな! 危ないだろ!」
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「へー、この綺麗な板で何でもできちゃうわけですね」
「本来各国が隠し通して来た色んなオカルト技術が、十二年前に一部流出しちゃってな。技術の大革新だの、陰謀が暴露されたので大騒ぎの末につい最近一般化されたんだ。まぁ、まだ思念通信とかESPドラッグとかは流石に隠されてるけど」
「こちらの世界の魔法とかもです?」
「ああ、こっちの魔法とか魔術ってのは色んな触媒や大規模な儀式、色んな材料の調剤の知識とか技術が必要で、まぁめんどくさいんだよ。そっちの世界の魔法とは全く違う見たいだな」
「へー、そう言うのも一応あるんですけど、私たちの世界の魔法って技法なんですよ。学べばある程度はみんな使えるって感じの」
「アムも?」
「基本の5属性は網羅してます。土と風はちょっと苦手ですけど、他は1等級や特等級まで扱えますよふふん! 属性合成だってできますし、すっごい難しくて扱える人がほとんどいない光魔法だって使えます! なぜなら私ってば────」
「──はいはい。勇者ですからね」
「あぁ! バカにしてますよねその言い方!?」
「してないしてない」
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地下の爆発じみた破壊に慌てた保安局員に事情を説明し、俺らは別の部屋をあてがわれてから4時間ほど、こうして語り合っている。
情報交換のついでの、お互いの性格のすり合わせみたいなもんだ。
お互いの文化の違いから、育った国の情勢。
美味しい郷土の食べ物だったり、どう言う遊びをしたかまで、たわいないと言えばたわいない話だがそこはやはり異世界。
何とも興味深い話がたくさんあって、いつしか俺たちはまるで同じ学校の同級生のような会話でも盛り上がっていた。
「ん? 着信?」
俺のMrAQが軽快な電子音を奏でて、俺を呼んでいる。
「つーかここ圏外────南条さん?」
何でまた一般回線の電話なんかかけて来たんだ?
特務工作員同士なら思念通話の
首を傾げながら、アムを見る。
話の最中に電話なんか出たら失礼なんだが、相手が南条さんなら取らない訳にもいかない。
「それがさっき言ってた、でんわって物ですよね? あ、お構いなく」
察してくれたか。助かる。
やはりコイツ、どこか危ない面もうっすら感じ取れるけれど、基本は頭の良い気さくな奴だ。
「すまん──────もしもし?」
一言詫びてタブレットモニターをタップし耳の当てる。
『エージェント雷火。今、大丈夫?』
電話越しでもすぐに分かる、南条さんの抑揚の無い声。
聴き馴染んでいると言うのもあるけれど、あの人電話の時ぐらいもうちょっと声を張ってくれても良いと思うんだ。
「はい、大丈夫ですよ。何でまたこっちにかけて来たんですか?」
『理由は定かじゃない。だけど貴方への思念通話の
阻害?
誰に?
「えっと、今回の任務って第三組織の介入する可能性って、ないんじゃ」
この日本国がその存在を本気で隠そうとしたら、アムを保護した事なんて少なくとも一月は隠し通せるはずだ。
俺らは仲間の腕を誰よりも知って、そして一目置いているからな。
情報の秘匿。
しかも今回みたいなオカルト系だと、俺ら第6情報室はめっぽう強い。
DQN陰陽師から破戒僧、アル中の巫女からグレた祈祷師まで何でもござれ。
奴らがこんな短時間で情報を流出させるなんてありえない。
いや、ありえたとしてもその場合、俺らは真っ先に国民からバッシングされ、更迭され、最悪実験材料として死ぬまで生き続けさせられる。
じゃあ、なぜ阻害なんかされてるんだ?
『今現地視察と簡単な調査が終わった。彼女を連れてここまで来て欲しい。確認して欲しいものがあるから』
南条さんの、別件任務の事か。
「わかりました。目的地はどこです?」
この勇者ちゃんを慣れない内はあんまり外に出したくない。
なぜか余計なトラブルを起こすか引っ張って来そう。
『場所は長野。南アルプスの一つの頂上』
長野、かぁ。
局長の奴、ヘリの要請とか受諾してくれるのかな。
「了解しました。すぐ向かいます」
まぁ最悪、陸路でも何とかなるだろ。
新幹線とか乗ればいいし、そうするとその前にコイツに普通の服を買ってやらないといけん。
いまだにノーパン・ノーブラなままロングワンピースを着ている奴を歩かせたら、俺にあらぬ疑いがかかっちまう。
ましてや鎧を着込むなんざ論外だ。
『そう、できる限り急いで来て。それと──────』
付き合いの長い俺じゃなかったら見逃しちゃうほど重くシリアスな声色で、南条さんは言葉を発する。
『──────彼女には完全武装で来て欲しいと伝えて。貴方はクラスA装備。局長には許可を取ってある』
何でまた、そんな重装備を
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