第3話転生先はここですか
俺はパニクっていた、何で混乱していたかはわからなかったが、混乱が収まると何処からか赤ん坊の泣き声がする、それもとっても近くから、俺自身とっても息苦しいし、急に息をするのに慣れていない感じがって、手を見ようとして見えない、いやこの泣き声は俺じゃないか!。
しばらくして呼吸のリズムが整ってくると周りの音が聞こえてくるようになった、色々な物音の中に人の話し声が聞こえてくる、俺もこの子も言葉を覚えていないのだから何を言っているのかわわからなった。
しかもどうやっても目が開かない。
「うむ困っているようじゃな、一部翻訳してあげよう、アフターサービスだ。」
声しか分からないが神様か、どうなってんだよ説明しろよ。
若そうな女の声が聞こえてきた「この子は家名を継ぐ跡取りですもの、名前は、シクロ、ド、ナルドノ、ニートにしましょうよ」
これってこの世界の俺の母親?え?何で名前にニートが入るんだ、頼むからやめてくれ、いやお願いだから、だが生まれたばかりの俺は声はいくら訴えても「バブ」。
「・・・。」
「ああ、あなたの、勇者カイトの待ち望んだ跡取り息子ですもの早速来週にでも街の皆さんにお披露目をしなければ、あら、そう言えば先月生まれたメリナちゃんもお披露目まだだって言うから我が家と合同でやってみようかしら。」
「本当に君とナリイサは仲がいいね、妊娠も出産もほぼ同時なんだから、ではオルトラ家と合同でお披露目をしようじゃないか、これは盛大にやらなければな。」
「あなた見栄を張らないでください、気持ちが大事なんですから、あなたとモルガンだって親友でしょう。」
「いやいやケジメが大事なんだよ貴族の力を見せつけないと庶民に舐められるからな。」
「男の人って本当にもう。」
「我が家は代々勇者の家系なのだから、その為に王にも一目置かれている無様な真似はできないのだからな。」
そのあとの両親の会話は覚えていないかった、空腹で母乳を飲んで、排泄して、眠ってを繰り返して数ヶ月が過ぎたらしい、幼児に時間の観念など無意味だった、その間に脳の支配が本来のこの子供と俺とで溶け合って共有していることは分かった。
お披露目とかも記憶のない間に済んだようだ、俺にとっては目が見えていないのでどっちでもいいんだが。
生まれて3ヶ月後の両親たちの会話は覚えている、この時点がこの世界の俺の一番幸福な日々だった。
「教主様、この子の力はどれ程強大なのでしょう、ああ早く見たいわ。」
「奥方様、慌てないで、まずは教会より持参したこの4体の水晶の人形を御子息に順番に握らせてください、この人形には握った者に攻撃、防御、補助、治癒の特性があれば対応する人形が青く光ります、御子息はまだ生まれたたばかりですので大まかな分類ではありますが、今後伸ばすべき特質が判るのです、では始めましょう。」
「むう、どの人形も青く光らんじゃないか、まさか我が子にはどの魔法の才も無いのか!。」
「いやいや慌てる必要は有りません、青くは光りませんが赤くは強く光っておりますゆえ魔力の量自体は十分に有りますぞ、今後何の特性かを探ることになりますな。」
「しかし、勇者で4属性が使えないとすると魔王といや下級魔族とでさえ戦うのが難しい事になる。」
「なんて事でしょう、メリナちゃんは4属性全て青かったのに、どうしてこの子は、この子だけ。」
「奥方様どうか悲観しないでください、魔法が全てダメでも普通の子度と同じという事ですから。」
「それでは、それではこの子が庶民と同じなんて我が家の恥です、いいえ産んだ私の責任です、いっそ死んでしまいたい。」
「いや早まらないでください、まだ希望はあります、武芸が達者かもしれませんし、勇者の家系ならばいつの日か未知の力が発現するかもしれません。」
「そ、そうでしょうか?。」
「ミサラよ、私がついている、この子は我とお前の子だ、一人で背追い込むことはない。」
「あなた。」
覚えているのはここまでだったが
次の年には早々に次男が生まれ俺には妹ではなく弟が出来た。
3年目の夏が来て俺は3歳になった。
「教主様、この子は3年後には能力が目覚めると言ったではないか。」
「私は3年後とは言っていません、いつかはと言ったのですぞ能力が目覚める可能性は言いましたが確約などしていませんよ。」
そうなのだ、3年過ぎても俺の魔力は覚醒しなかったし並外れた体力が育つ訳でもなかった、ただ転生する母体となったこの子が引きこもり体質でない為にごく普通に近所の子供達と遊んでいた、これは俺の初めての体験だった。
「メリナは凄いな、もう火の魔法が使えるんだね。」
「メリナ凄いでしょ、ニートは魔法が使えないからわたしが養ってあげるわ。」
「ニートはやめてよ僕はシクロだって言ってるでしょ。」
「だってニートだもん。」
「うう。」
しょうがないな、ニートはミドルネームだからな、いやいや、しかし幾ら何でもこの後の人生を幼児に食わせてもらうなん無いでしょ。俺にもちっぽけなプライドがある、この転生した子の特性が前向きでほんと良かった、あれ待てよ俺の特殊スキルはどうなってる?。今ごろになって何故か急に不安になった。
念のため今までの生活を思い出してみよう、ええと神にはダメージ無効と痛み無しを頼んだはずなんだけどな。
前にかくれんぼの時藪に飛び込んだ時は怪我して血が出て痛かった、木の棒でチャンバラし時は怪我しなかった痛かった、魔法攻撃喰らった時は怪我せず痛かった・・・。
取っ組み合いで投げ飛ばされた時は怪我をした、つまりはこれって、ダメージないわけじゃ無いし痛みが有るし。
転生した時から神のやつは何度呼びかけても返事がない、今更当てにできないな、となると自分でキッチリ条件整理をしないと死ぬかもしれない。
長男が近所の子供らと遊んでいるのを見詰める母ミサラの目は悲しみに沈んでいた、特別な勇者の子供が、勇者の跡継ぎが能力のない庶民と遊んでいる、それは屈辱だった、しかし教育のしがいのない子供にこれ以上集中するわけにもいかない。
その点はまだ2歳だというのに次男のロドスは優秀で既に上級魔法を習得し始め剣術もそろそろ習い始めても良い様に見えた、ニートの能力の無さに対する悲しみもその存在とともに最近は忘れがちになっていた。
「母上、夕食はまだですか。」
俺は空腹で目が覚め食堂に降りて行った、どうやら遊び疲れて自分の部屋で眠っていた様で、外は暗くなっていた、けっこう子供の体力は無いんだな、それでも転生前よりもある気がする。
食堂では父母弟の3人が楽しそうに話をしながら食事をしていた。
「あら、起きたのね、ごめんなさいね食事用意していないのよ、その辺の物適当に食べてね。」申し訳無さそうに母が俺の方を見る、が椅子から動こうとはしなかった。
いいさ、俺は親の期待を裏切るのは人生これで2度目になると思うとうんざりした気分になる。
筈だったがこの子は前向きなんだな、思ったほど落ち込ままない自分に驚いた、自分の性格が転生前より変わったんだな。
最近はこんなことが多くなっている、台所を漁るも野菜クズが少し残っているだけ、俺は根菜のクズを口に咥えて自分の部屋に引っ込んだ「明日は森で果物でも探そうかな。」
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