第6話 ゲームスタート
「どうして、勇者様がここに!!」
あれから三年の月日が流れた。
勇者様のはからいもあって、私はアルバート伯爵家の養女になった。それが、どうしてこうなったのだろう。ベッドの上で勇者さまと激しい攻防を繰り広げている。
「どうして、どうして、ここにいるの? なぜ、こんなことをするんですか!!」
迫ってくる唇に抵抗しながらも私は叫んだ。
「なぜとは? 見て分からないのですか、夜這いなのだが」
魅了されてしまいそうな低い声で彼は私に囁いてくる。
私の上に乗りかかっている男性、彼の名前は、エルネスト・アーベル。エルフな私に夜這いをかけようとしている勇者さまだった。
若くして伯爵家を受け継ぎ、容姿端麗、文武両道というか、世界最強の勇者さま。
貴族の娘たち、他国の姫たちの間では最良物件、国宝級の一人に挙げられる、非常にモテモテのお人だ。王族ですらおいそれとは近づけない、それほどの高貴な存在、そんな勇者様は独身だった。
勇者様はパーティがお嫌いなのか、顔だけ出してすぐに帰ってしまう。
勇者は多忙のため、誰もそれをとがめることができない。そのせいもあって、誰も、お近づきになれなかった。女性との噂もほとんどないようなものだし。
なのに、どうしてよ!!
こんな夜更けにわたしの部屋に、というか、なぜ、夜這いにきた?
ぜったいに、ありえない!!
「だから、だめですって!!」
ナイトドレスに手をかけてくる勇者様の手を払いのけ、私は叫んだ。
「わたしは、ハイエルフなんですよ。人間じゃないんです、あなたは私を残して先にいくのでしょ、わたしにはきっと、たえられません。だから、お互いのためにも私をあきらめてください」
そうエルフと人間は、結婚できない理由がある。人間の寿命は100歳、この世界のエルフは不老不死に近い存在だ。またエルフは子供ができにくい体質だと聞いている。後継ぎを残すことなんてできない。
なら当然ダメだよね?
だから、やめようね。
と言い訳して逃げようとしているのですが、だめですか?
「ははぁ、そんなことで君は悩んでいたのか、私なら大丈夫だ。永遠に君を愛してあげるよ」
勇者様はチュッと音をたてながら、頬にキスをしはじめた。首を反らせて逃げようとしても、追ってくる唇は止まらない。
ど、どうやら彼は本気のようです。
私は三年間、あることを忘れていた。
そう、私がエロゲーの主人公であることに……
ある猫が三年もの月日をかけ、世界に修正をかけていたことに私は気づかなかった。
『ちぇっ、あいつ、やりやがったのです。あそこから全年齢対象基準の世界に修正しやがるなんて、せっかく、いろいろと嫌がらせしてやったのに、苦労が水の泡なのです、だけど、まだまだ甘いのです。じゃーん、R18アップデートパッチ、適用なのです。これでアイツが大嫌いなR18の世界がはじまるのです。くっくっくっ』
頭部に大きなネコミミを生やした少女がニヤリと笑った。
にゃん、にゃん、にゃん~♪
まさに、今、ゲームが本格的にスタートしたのだった。
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