第4話 エルネスト・アーベル

 side-エルネスト

 

 私の名はエルネスト・アーベル。


 私は数々の戦功をあげたことで勲章を受けとり貴族の仲間入りとなった。私は黒髪をオールバックにし蒼天の鎧と呼ばれる鎧を装備している。そのせいか、蒼の勇者と大層な称号をいただいている。親しい者からは、アベさんとも呼ばれている。


 勇者とは精霊神様より祝福を受けた人間、もしくは不老不死を与えられたモノのことだ。


 私は、もはや人間ではないのだろう。精霊神様の下僕となったのだ。


 それ以外にも力を授かっている。


 私が腰に携えている剣、この聖剣エスペランザ―を一振りするだけで1000の敵を一瞬にして葬り去ることが可能だ。


 剣だけではない。魔法を使うことで、一国をも消し去ることが可能だ。


「ヒィ~~ン!!」


 そうだ。彼のことを忘れてはいけない。愛馬であるペガサスで駆ければ、たったの30分、この世界を1周することさえできてしまう。


「ふぅー」


 権力にまみれた人間たちの醜い争い。


 女狐達との婚姻を前提としたお茶会。


 私を自分の派閥に取りこもうと貴族達は必死になっている。


 ああ、本当に虫唾が走る。


「人間とは愚かな生き物だ。いっそ、私の手で―― いたたた、やめてくれ、噛まないでくれ」


 ペガサスに、たしなめられてしまったようだ。


 大聖霊が住まうと言われる南国の孤島。ここは私の憩いの場であり、安らぎの場所とも言えるだろう。


 命を懸けて守りたい者、運命の人が私の目の前にいつか現れる、精霊神様はそうおっしゃっていたが本当に現れるのだろうか。


「うん?」


 これは――


 珍しいな、この大地に人が訪れるとは……


 私は気配を消し様子を窺うことにした。


「いないぞ、ここに逃げたはずだ」


「さがせ、やっと見つけたハイエルフなんだぞ」


「このままだと、ミツル王子に俺達が……」


「あんなに、女をはべらせてやがるのに、まだ足りないのかよ」


 彼らが話す内容から推測すると、奴隷商の一団のようだ。この島にはラクガキネコしかいないはずだが。


 ああ、本当に不愉快だ。


 奴隷を認めている国もそうだ。


 彼らの中に混ざってる人間、あの勲章は、たしか隣国の……


 隣国のミツル王子ついては、あまりいい噂を聞かない。


 これは、あまり関わらないほうがよさそうだ。こういったことに巻き込まれるのはもうたくさんだ。


「ペガサス、ここを離れよう」


 私とペガサスはその場を後にした。


 ペガサスの綱をもち草原を歩いていく。


「……私をお許しください」


 少女の嘆き悲しむ声が聞こえた。


「だれかいるのか?」 


 私は声のする方へと向かう。


「君は?」


 そこにいたのは岩にもたれ、座りこむエルフの少女だった。


 これが彼女との運命の出会いであった。

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