第3話 絶望

 気絶してから数時間が過ぎたとおもう。


「う~ん」 


 閉じていたわたしの目蓋がゆっくりと開いていく。


「ふぇ?」


 異世界での最初の一声がコレである。


 な、なによ、一体、どうしてこうなった、ここはどこなの。


 わたしは、呆然としながらも辺りを見渡した。


 ごくりと唾を飲み込む。


 ご、ごほん、れ、れいせい、になるんだ、わ、わたし。


「…………」


 みなさん、ここはですね。大地の臭いがします。草原ですね。


「にゃろーん!!」


 おかしな小動物がいるようです。落書きで書いたようなネコさんが二足歩行して歩いています。そ、そんなことより、まず、確かめないと。


 わたしは自分の耳にふれた。


 あははは、やっぱり尖ってる。


「…………」


 あ、あれですよね。


 エルフと呼ばれる私がここにいるのです。きっと、ここは、異世界なんですよね。


「あは」


 さきほどまで残念な女の子、怖いお姉さん、それとエロじじぃがいました。でもここには誰もいません。


「あはははははは!」


 意味が分からない。もう笑うしかないんだけど、頬を捻ってみました。痛いです。現実でした。


「エルフになってしまった。これって悪魔の悪戯なの、わたし、知らない世界に放り出されて、ひとりぼっちだ。この先どうすればいいの」


 大きな岩にもたれながら、いじけたように体育座りをするわたし。目からだんだん生気が失われていく。不安で何も考えられない。腰に何か硬いものが……


 手探りで探してみると、なにやら、武器を腰につけているようです。これは弟がよく遊んでいたRPGの武器、ダガーですね。おまけに袋もついてます。中に金貨など通貨らしきものに手紙、薬草と乾パンみたいな物があります。何か食べれば、頭が働くかもしれません。乾パンを食べてみました。


 おいしくない、ううっ、ケーキが食べたいよ。


 最後に手紙を読んでみました。


『なかなか起きないので異世界転移してやりました。まぁ頑張りやがれ、なのです♪ エミリアより』


 はぁ~、二行だけ?


 特別な力とか最強装備とかくれないの? 


 身寄りもない、知り合いもいない、そんな異世界で……


 しかも人間じゃなくて私、エルフだよ? 


 人生詰みました。


 いえ、エルフ人生詰みました。


 この先、生きていても……


 私には殿方の慰みものになるようなエルフ人生しかないのです。


 だって私、エロゲーの主人公だし。


 パッケージイラストを思い出してみなよ。


 四つん這いにされて、男に穴と言う穴に白いクリームでめちゃくちゃにされちゃうんだよ?


 本物のクリームならまだしも。


 うーん、いやいや、ダメでしょう。


 はい、注目!


 ここに、ダガーがあります。


 もう、潔く死んでしまいましょう。


「親不孝な私を、お許しください。さようなら」 


 首筋に向けてゆっくりと私は刃を進めた。

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