12話「物語を続ける方法」

「彼女が浮気してるかもしんない!」

 姉が私に勢いよく話しかける内容は、急すぎて理解出来なかった。

 しばらく後に内容が頭に入ってくると、彼女に浮気されているという話だった。うん、私は理解出来ても誰も理解できなそうだ。

「同性の愛は嘘なのかな……どう思う?」

 それを妹に聞かれてもと思うところだろうが、そういう訳でもない。私は姉のする惚気話が好きなのだ。恥ずかしながら私は百合豚であって、姉と彼女はもはや推しカプ、別れてもらっては困る。

「一度落ち着いて、自分は彼女を愛している事を信じて。私がさりげなく聞いておくよ」

 深呼吸を促し、スマホを出してラインを姉の彼女に送る。こんな所で私の推しカプの物語を途絶えさせてたまるか。たとえ浮気していても道を戻してやらなくては。

『最近姉さんとどうですか? 姉さんが変な事してないといいんですけど』

 多少強引というか、不自然な気もするが、大丈夫だろうか。

『姉さんは何も変な事してないよ? そういう風に聞くって事は、私に愛想つかされたと思ってる?』

 いや、それを察して飄々とした返事をするなら、やっぱり浮気しているのだろうか。

『何か心当たりがあるんですか』

『うん、実はね』

 私のメッセージに手早く返す。心当たりがあり、それを私に話すつもりのようだが、一体何なのだろうか。

『妹ちゃんの方が、好きになっちゃって』

 私は、そのメッセージに硬直してしまった。私はあくまで百合を供給して貰う側であって、当事者ではないはずだったのに。しかも、姉が関わる浮気百合になんて、なれるはずがない。

「私は、百合になんて……」

 その先を言いきれない自分に、少しだけうんざりしてしまった。

 この物語を、どう続ければいいのだろうか。

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