日曜日「月~金キャラミックス小話」

第1話「できる後輩……雪花×ハル」

 珍しく幼馴染の夏海が課題を出しており、放課後の楽しみが減った事実に残念に思いながら私は、仕方なく自らが所属する囲碁・将棋部の部室に足を運ぶ。

「あれ、雪花先輩、今日は早いですね」

 そう私に声をかけるのは、後輩のハルだった。普段の私を含め、サボったり遅刻したりする人が多い囲碁・将棋部の中では珍しく、部活の時間には一番に来て準備をする、できる後輩だ。

「まあね、とりあえず一戦交えようか。囲碁、将棋、どっちがいい?」

 背負う荷物を部室の隅に置きながら、聞いてみる。といっても私はあまり囲碁は得意ではないし、将棋一辺倒なのだが、まあ囲碁を選ばないよう祈ろう。

「雪花先輩は将棋ですよね、分かってますよ」

 ハルはそう言って、にこやかに微笑みながら準備を始める。ふむ、できる後輩は部内全体をよく見ているらしい。次の部長は我々二年生をすっ飛ばして彼女にやらせればいいんじゃないだろうか。私は夏海をからかいながら過ごすので精いっぱいだし。

「いやあ、ハルは本当にいい子だね。窮屈じゃないの?」

 自分が不良だとは思わないが、ハルほど周りは見れないし、それどころか夏海しか見られないと断言できる。故に思うのだ。それで疲れないのだろうか。

「そうですね、癒しはいりますよね。やっぱり、無いと私も疲れますよ」

 そう言って駒を打つハルは、どこか物思いにふけるように、窓の外を見ていた。癒し、というと、私で言うところの夏海か。ふむ、やはり人間だれしも癒しは要るらしい。少し同じ仲間だという意識が芽生える。

「うんうん、良いよね、そういうの。ハルはどういう癒しを求めるの?」

 答えによっては、もう少し談義を続けようと思いながら、私もまた次の手を打つ。

「私は、いつもはちょっと沈んでるけど、構うと真っ赤になってしまうところ、ですかね」

 そう言って微笑むハルの一手で、私は詰んでしまった。手早く、ぬかりなく相手を詰ませる彼女の打ち方に、何か生き様めいたものを感じたが、たぶん気のせいだろう。

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