第2話「同棲と寮制……暁美×芽衣」

 大学での昼休み、愛優に作ってもらった弁当を持って校地内の庭を歩くと、何処のベンチも使われていることに気付かされる。いや、座れる所もあったが、ベンチで他人と相席は無理だ。しかし、そんなに人気だったのか、大学のベンチ。

「あ、芽衣! ここ空いてるよ」

 快活な声の出処を探すと、同じゼミの暁美がベンチで隣を叩いている。空いていると示しているようで、ありがたく座らせてもらう。

「ありがとう、いつも学食だったからさ」

 弁当を広げながら暁美の方を見ると、愛が伝わってくるようなデコレーション付きの弁当だった。ハートの人参とか、よく見るあれだ。

「あ、これ、これは、そう、愛妻弁当!」

 ごまかしを考えるような仕草の割には、結局出てきた言葉が全てを物語っているので、見ていて面白かった。ついつい笑いながら答える。

「随分愛されてるね。幸せそう」

 そういうと暁美は照れくさそうに笑みを浮かべながら、まあねと惚気け始める。

「お姉さんって感じで頼れるし、フォローが上手くて、うん、幸せなんだよね、私」

 お姉さん、お姉さんか。他の言葉が見つからないが故の「愛妻」弁当だと思えば、本当に愛妻だったわけだ。

「私は、なんだろうな、これ。同居人弁当?」

 少なくとも愛はないだろうなと、弁当を眺めながら考える。頼んだのは私だし、仕方なく作っていると思うと、やっぱり愛より面倒臭さが含まれていそうだ。

「でも、手作り弁当を渡すくらいなんだから、きっと愛されてるよ。その弁当分位にはね」

 なるほど、愛を掴んだ友人の言葉は説得力があるなと感心する。

 一食分の愛を、たまには大事に噛み締めてみようか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る